第3話
お名前は?
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轟も急に俺に呼び止められ、少し驚いた様子でこっちへ顔を向ける。
ーー俺は、何をしてるんだ…?
自分でも自分の行動に理解出来ず内心焦っていたが、声を掛けてしまった物は仕方がない。俺は悟られないよう冷静を装って言葉を続ける。
「アンタら、幼馴染みなんだってな」
「…だったら何だ」
轟は少し目を細めると、冷たくそう言い返してきた。
怖ぇー顔…。
いきなり敵意剥き出して来たな。
「いや、別にアンタらの仲をどうこうしたい訳じゃないさ…ただ、そういう目立った行動は、周囲に誤解を招きやすいって事を忠告したかっただけ」
「…うるせぇな…お前には関係ねぇだろ」
確かに関係ねぇよ…だけど俺は苗字がどういう状況なのか知ってる。
もちろん、お前が苗字を好きな事も…。
「…そんな風に一方的な言動が、アイツを困らせてる原因なんじゃねーの?」
そう言うと、轟はさっきよりもキツく俺を睨みつけながら低い声で唸る。
「……何なんだお前…さっきから分かった風な口聞きやがって……イラつくな」
「……知らないんだろ?アイツ、昼に弁当作って来てること」
「…!」
反応を見るに、知らなかったのは明確だ。
でなきゃ2日連続誘って来ない。
苗字のことだ…きっと好意で誘って来る轟に断り辛かったはずだ。
そーいうとこ変な優しさがあるよな…アイツ。
「言えないんだよ。アンタに気を使ってる。そういうの、ちゃんと汲み取って行動した方がいいぜ」
轟はショックを受けてるのか、顔を俯けたままで表情が見えない。これ以上ののしり合うのは不毛だなと思い、俺はその場を離れようとした。
「……随分、名前のことについて詳しいな」
「…!」
「お前の方こそ、その言動は名前に気があるみたいに聞こえるぞ?」
「!!」
予期せぬ言葉に心臓が跳ね上がった。
俺が… 苗字に気がある…?
違う!俺はただ、初めて自分の個性を認めてくれた相手がアイツだったから、恩を感じてるだけだ!
だから、特別な感情なんかないッ…!
なのに……俺は何を動揺してるんだ…?
「…答えないってことは、そうなんだな?」
「ーー違う!…俺はっ…」
ウゥーーーー!!
突如、けたたましい警報音が校内中に鳴り響いた。
「何だッ…⁉︎」
「警報…⁉︎」
突然の事態に俺たちも会話どころじゃなくなり、必死に状況を把握しようとする。
するとすぐに校内放送が流れた。
《セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難して下さい》
セキュリティ3って何だ?
誰かが雄英に侵入して来たのか…⁉︎
ふと廊下の窓に視線を向けると、正門の中へと入って来る人だかりが目に入った。
あれは…今朝いた報道陣か?
なるほどな…原因はアイツらかよ。とことん迷惑な奴らだな…。
ザッと視線を巡らせていると、見知った顔に目が止まった。
「ーー苗字ッ…⁉︎」
報道陣が流れ込んで来る中、その中心で必死に前へと進もうとする姿がそこにあった。
アイツ…休みじゃなかったのか?
何であんな所に…。
「名前ッ…⁉︎」
疑問に思いながら、その場で眺めていると、轟も苗字の存在に気が付いたのか、焦った様に名前を呟くと、すぐに正面玄関の方へと走って行った。
「…過保護かよ…」
俺は半ば呆れ気味で、けれど何処か複雑な心境のまま、走り去って行くその背中をただ見つめていた…。