第22話
お名前は?
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『………ごめんね、もう大丈夫だよ』
「落ち着いたか…?」
『うん、…ありがとう』
しばらく泣いて、泣きつくして、ようやく心を落ち着かせた私は、この状況が急に恥ずかしくなり、慌てて心操くんから体を離した。
『………』
「………」
なんだか色々ありすぎて、若干気まずい。
多分お互い何を話せばいいか分からなくて沈黙していると、「ニャン」とまた母猫の鳴き声が聞こえた。
声のした方へ振り向けば、母猫はまた屋根の上から私たちを見下ろしていた。
『あっ、さっきはごめんね…!びっくりしたよね?』
「……悪かったな」
2人で一緒に謝ると、母猫は "仲良くしなさいよ" とでも言うように、私たちを
『あはは…、怒られちゃったね?』
「………。後でお詫びに缶詰持って行く」
『ぜひ、お願いシマス』
何だか母猫のおかげで、さっきより和やかな空気に包まれた。内心ほっと安堵して心操くんを見ると、去って行った母猫の姿を、名残惜しそうにずっと見ていた。
『心操くん?』
「ーー!、なに…?」
『いや……ずっと見てたから、どうしたのかなって』
「………」
私の言葉に心操くんは一瞬、複雑そうな顔をすると、またすぐに母猫が消えた方向へ顔を向けた。
「考えてたんだ。アイツが今いるのは、苗字が助けたからなんだなって……」
『…!』
「……お前が傷つくのは嫌だからやめて欲しいと思ったけど、アイツがこうして生きていてくれるのも、正直良かったって思う……どっちの気持ちでいればいいのか、よく分からない」
『……私は、心操くんが喜んでくれる方が嬉しいけどな』
そう言うと、また私を見て複雑そうな表情をした。
私はニコリと笑う。
心操くんは複雑かもしれないけど、私は幸せだった。
今日こうして元気に過ごしてくれてる姿が見れただけで、ただそれだけで……私の気持ちは救われるから。
「……なぁ、」
『ん?なに?』
「前に、苗字に "貸し" 作ったの、覚えてるか?」
『えっ…?』
貸し……?
ーーー……あっ!!
そう言えば、私が倒れた時に心操くんが看病してくれたんだっけ……?
その時に貸しを作ったような気が……。
『あー…、うん。なんかそんな事あったような……なかったような』
「あった。なに無くそうとしてんだ」
『ごめんってばっ!ありましたね!その
不機嫌な顔になる心操くんに慌てて頭を下げる。
けれど、なんで今さらその話題に……?
不思議に思って顔を上げると、心操くんは何かを言いたげに私を見ていた。
『………あの、なにか?』
「今使うよ。その時の貸し」
『えっ…?い、今ですかっ⁉』
唐突な言い渡しに思わず戸惑う。
なに?
一体なにを貸せと…⁉
内心ドキドキしながら待ち構えていると、心操くんは意外な事を口にする。
「さっき言った事。忘れてないよな?」
『へっ?……さっきってーーー』
ーーーただ、生きてくれてるだけでいい
「あの時の "貸し" は、それで返してくれ」
『……えっ…?』
「そしたら俺は、心から苗字に、アイツを助けてくれてありがとうって言えるよ」
『ーー!』
「だから……裏切ったら、許さないからな」
そう言った心操くんは、いたずらっぽく笑っていたけど、目は笑ってなかった。
私はその言葉に驚きつつも、力強く頷く。
『ーーー大丈夫だよ。絶対、死なないから』
ハッキリと言い放つ私の言葉に、ようやく心操くんは安心したように優しく微笑んでくれた。
ーーーそう。
私は、死ぬわけにはいかないんだ。
だって、相澤先生に誓ったから。
ーーーお前は死ぬな。何がなんでも生き抜け。
自己犠牲と命を捨てて誰かを助ける事は同義じゃない。死んじまったら全部、終わりなんだ、って……。
この命は、エンデヴァーにもらった……大切な物だから。
だから、簡単に投げ出したりはしない。
けれど、やることは今後も変わらない!
目の前の救える命は、絶対に私が救うんだ!
例えもしそれが、救えない命だったとしても……せめて、その人の最期の瞬間だけは、後悔して終わりを迎えて欲しくない。
『心操くん!』
「?」
『休みが終わったら、また一緒に救助訓練頑張ろうねっ!』
「あぁ。言われなくてもやるさ」
交わった二人の視線の先にある瞳には、いつもの輝きが戻っていた。
もう、くよくよしない。
私達はこれからも、同じ道を歩みながら
『心操くん』
「?」
『ーー…ありがとう』
「……あぁ」
この先も、ずっとーーー。
ーーー✴︎✴︎✴︎
あれから、心操くんとのわだかまりは解け、お互い普段通りに接する事が出来るようになった。なんなら、以前よりも絆みたいな物が深まった気がする。
そして、私達は毎日ひたすら13号先生から教わる救助訓練の日々をこなして行った。その間に雄英は冬休みに入り、あっという間に大晦日、年明けと、目まぐるしく日々が流れーーー。
正月休みと言われる日もあと僅かという時。
まだ正月らしい事を何一つしていなかった私は、せめて初詣にでも出掛けようと思い、訓練が終わってから外出許可をもらって、街中に1人で出掛けていた。
さすがに三が
そして静かに目を閉じ、心の中で今年の抱負を願う。
昨年は無事にヒーロー科に編入する事が決まりました。今年はみんなと協力しながら、ヒーローとして責任ある行動を取って、1人でも多くの人を救けたいです!
『……よしっ!』
自分の中で硬い決意表明をしながら、その場を後にした。
……しかし、この決意表明が