第3話
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*心操視点*
朝、いつものように雄英に登校すると、校門前に多くの人だかりが出来ていた。
何だ、あれ…?
よく見ると、報道陣が登校する生徒たちに片っ端からインタビューをしている様子だった。
「オールマイトの授業はどんな感じですか⁉︎」
なるほどな…。
この騒ぎはオールマイトが原因か。
確かに連日テレビでオールマイトが雄英に就任したって騒ぎになってたな。
ウザいな……。
絶対捕まりたくねぇ。
なるべく気配を消して、
報道陣を避けて通ろうとした時ーー、
「あ、キミッ!」
目の前に勢いよく女の記者が現れ、俺の進行方向を遮られる。
ーー最悪だ。フラグ回収かよ……。
「オールマイトが教壇で授業する姿はどんな感じですか⁉︎」
俺に聞くな……知らねぇよ。
「……俺、普通科なんで」
「そうなんですね!じゃあ、噂でもいいからどんな様子か聞いたことない?」
しつこいな…。
そんな質問、ヒーロー科に聞けばいいだろ。
「…ないです。通れないんで、どいてくれますか?」
「あ、すみません…ご協力ありがとうございました!」
少し睨みつけながら答えると、ヤバイと思ったのかあっさり通してくれた。
強引に聞いといて、何がご協力だよ…。
久しぶりに他人に対して苛立ちを感じながら教室へと向かった。教室に入ると、クラスメイト達は先ほどの報道陣の話しで沸いていた。
「俺さっきインタビュー受けた!ヤベェ、テレビ映るかな⁉︎」
「やっぱ雄英ってスゲーな!ニュースとか常に雄英ばっか映ってるし!」
よくそんな事で盛り上がれるな…。
皮肉めいた言葉だが、
ある意味本気で羨ましくもあった。
俺には無理だ。
自分に劣等感しか感じられない。
何故なら望んだ場所に自分がいないから。
憧れだった雄英ヒーロー科は落選、入学出来たのは、普通科のみだった。
普通って何だ…?まるで俺にはヒーローの素質がないと言われているようだった。
「……っ」
握った拳に力が
落ち着こうと窓の方を見て、ようやく隣に苗字がいないことに気付いた。
アイツ…まだ来てないのか。
『すごくカッコイイ個性だね!!それって、対敵用にすごく向いてるヒーロー向きの個性だよ!』
ふと、出会った日に言われた言葉を思い出す。
その瞬間、俺の中に
ーーあの日、初めてお前だけが俺を…。
決してヒーローになる事を諦めたわけではなかったが、あの一言で俺はよりいっそう勇気づけられ、自信を持つ事が出来た。
まさか、1番言って欲しかった言葉を苗字の口から聞くことになるなんてな…。
最初はただの鈍間な奴としか思っていなかったのに…。
ーーいつの間にか、俺の心を動かす大きな存在になっていた。
「苗字ー。………あれ?苗字は今日休みか?誰か何か聞いてるか?」
あれから朝のHRになっても、苗字は姿を見せることはなく、点呼をとっていた担任も「体調不良か?」と不思議そうに首を傾げていた
「……」
苗字が休み?
昨日最後に会った時は体調悪そうなカンジには見えなかったが……ただの遅刻とか?
………ありえるな。アイツなら。
苗字が寝坊して慌ててる姿が、容易に想像できる。
まぁ、その内遅れてくるだろ…。
だが、結局午前の授業が全て終了しても、苗字が来る気配はなく…。とうとう昼休みの時間となってしまった。
……アイツ、本当に今日来ないのか?
寝坊にしちゃ、いくらなんでも遅すぎる…。
まさか、本当に体調不良なのか…?
疑問に思いながら教室を出るため扉に手をかけようとした時、自動的に扉が開かれた。
いや、違う。扉の向こう側にいた人物によって開かれたのだ。
そこから顔を覗かせたのはーー…
「…轟っ、…」
「……」
小さく漏れた俺の呟きに反応するように轟は俺を見るが、すぐに興味を失った様に視線は逸らされ、教室を見渡していた。
目的はすぐに分かった。
「…苗字なら、今日休みみたいだけど」
「……そうか」
少し驚いた様子で俺を見ると、それ以上は何も言わずに背を向けて去ろうとする。
よくまぁ毎日熱心に会いに来るな…。
そんなに苗字が大事なのか?
去っていく背中に、俺の中で妙な対抗心が沸き立つ。
「…なぁ」
気付いた時には、俺は無意識に轟を呼び止めていた。