第21話
お名前は?
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「ーーーところで、君は誰か "特別な人" と過ごすのかい?」
『………ハイ?』
突如、目の前に満面の笑みで現れた通形先輩のドアップにより、私は一気に現実へと引き戻された。
『……なっ、何のことでしょう?』
先輩の圧に気圧され後ろへと後退ると、先輩はヤレヤレといった感じで肩をすくめる。
「やだなぁ、クリスマスの過ごし方についてに決まってるだろ?君は誰か "特別な人" はいないのかい?」
『ーー!!、なっ、ななななんですか急に…っ⁉』
「アハハハッ!君は本当に分かりやすいねっ!そんな反応見せたら、誰かいますって言ってるようなもんじゃないか!」
『ちがっ…!いや、そのぉ……もうっ!恥ずかしいんでやめて下さい~~!!』
真っ赤になる顔を隠すようにして顔を覆っていると、不思議そうな声で呟くエリちゃんの声が聞こえてきた。
「特別な人…?」
「エリちゃん、特別な人って言うのはね?他の誰よりもその人が一番大切で、ずっと一緒にいたい位に大好きな人って意味だよ!」
具体的にエリちゃんに説明する先輩の言葉にさらに羞恥心を煽られ、顔の熱が上昇した。もういっそこの場から消えて無くなりたい衝動に駆られ、私は小さくうずくまる。
何だこの
もう誰か私を穴に放り込んでーー!!
心の中で悶えていると、そばにいたエリちゃんが私にそっと語りかける。
「名前さん、好きな人がいるの…?」
『…!!』
ストレートな言葉をぶつけられ、一瞬呼吸が止まった。
挙動不審なままチラリと向ける視線の先には、何かを期待したような眼差しで私を真っ直ぐに見つめるエリちゃんの顔。
その純真無垢な瞳でじっと見つめられたら、もう逃れる事は出来なくて………私は深いため息を吐くと、コクリと静かに頷いた。
『……いるよ。ーーーとても、大事な人』
「わぁ…っ!」
「おっ、言い切ったね!いいね、すごく素敵な事だと思うよ!」
素直に白状すると、何だか2人とも嬉しそうに祝福してくれる。案外口に出して認めてしまえば、抑えていた気持ちも自然と言いやすくなるものだ。
『今は色々あって少し距離が出来てしまったんですが……でも、だからこそちゃんと自分の気持ちを伝えなきゃって、思ってるんです』
「ーー!!、……って事は、君から愛の告白をするんだね⁉」
『……は、い…』
そうハッキリ言われると物凄く恥ずかしいのだけれど、ここまで言ってしまったのだからもう半ばヤケクソだ。
告白する事はもう決めていたのだから。
それに…、轟くんは最初から私にずっと想いを伝えてくれていた。いつだって、どんな時も変わらない気持ちでいてくれた。
だから、今度は私が轟くんに伝える番。
あの時骨抜くんから話を聞いて、その思いはより一層強まった。気持ちを全て伝えて、早くこのわだかまりも全部解消したかったのだ。
「それじゃあ、クリスマスはまさに最高のタイミングじゃないかっ!」
『…えっ?』
「おや…?まさかその反応…!君、ノープランで告白しようとしてたよね⁉」
眉毛を吊り上げながら先輩が人差し指を私の鼻先に向かってビシッと伸ばしてくる。私は図星を突かれ、肩を小さく萎縮させた。
『…す、すみません。そこまで考えてなかったです…』
「ダメダメっ!そういう特別な事は特別な日にした方が、ずっと素敵な思い出になるんだ!」
『……やっぱり、そう言うものですか?』
「そりゃそうさっ!きっと一生忘れられない日になると思うよ?」
『……忘れられない、特別な日に……』
言葉にして口に出すと、何だか自分がこれからしようとしている事は、人生を変えるくらい大きな出来事なんじゃないかと言う気がしてきた。
今まで恋愛とは皆無だった私には、相手に告白するのもされるのも経験した事がなかった。ましてや誰かを好きになった事すら……ない、そう思っていた。
けれど、記憶の中で見た幼い頃の私はーーー……轟くんに、小さな恋心を抱いていた。
きっと、あれが私にとっての初めての初恋。
本当にたくさん遠回りしてしまったけど、あの頃に抱いた気持ちは何ら変わっていない。
私は、今も昔も……轟くんの事が大好きだ。
今まで過ごせなかった空白の時間を、これからは君と一緒に1つずつ埋めて行きたい。そう思ってるのは私だけじゃない、よね……?
「……名前さん、お顔、キラキラしてる…!」
「ウンウン!まさに恋する乙女の表情なんだよねっ!」
『エッ⁉ は、恥ずかしいのであまり見ないで下さい…っ』
照れる私に向かって、通形先輩とエリちゃんはずっとエールを送ってくれていた。そんな2人に少し勇気をもらいながら、私は別れを言って教員寮を後にしたーー…。
「………やっぱり、文化祭の時に見た彼らのどっちかなのかな…」
「…?、なんのお話?」
「いや、何でもないよ!……そうだ、サンタさんの折り方教えてあげるね?」
「うんっ!サンタさん!」
「(特別な想いは、時に誰かを傷付けてしまう事もある……名前ちゃん、どうか、幸せになってね)」