第2話
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ーーキキィ
雄英からの帰り道、突然背後で自転車のブレーキ音が鳴った。何事かと振り返ると、そこにいた人物に更に驚かされる。
『心操くんッ…⁉︎』
「…よぉ」
ぶっきら棒にそう答える心操くんを見つめながら、私もビックリして固まっていると、心操くんはバツが悪そうに口を開く。
「…少し、話せるか?」
『え?…う、うん。大丈夫だよ』
意外な言葉に驚きつつも、近くにあるいつもの公園へと足を運んだ。
すぐに公園に着くと、空いてるベンチへと腰を下ろす。心操くんも押していた自転車をベンチの側に固定すると、私の隣に腰を下ろした。
な、何だろうこの緊張感…。
心操くんから話したいことって一体…?
チラリと心操くんの方を見ると、何だか思い詰めた表情をしているように感じた。
「…さっきのことだけど」
『…?』
チラリと私の方に視線を向け、首を傾げる私を見て少し呆れた顔をされた。
「目立つ行動は控えろって言っただろ?」
『…あぁ!そのことか!」
「忘れてんのかよ…ったく、人がせっかく謝ろうとしてんのに、調子狂うぜ…」
『えっ⁉︎ なっ何で心操くんが謝るの?』
私の言葉に、心操くんは拍子抜けしたような顔をする。
「何でって……お前ショック受けてたんじゃないのかよ?」
『ショック…?受けてないよ?』
「はぁッ…⁉︎」
私だってビックリだ。
ショックを受けてると思われていたことに。
『あれはだって、私が曖昧な態度だったから忠告してくれてたんだよね?…確かに言われてそうかもって思ったの。自分でもどう接すればいいのか、まだちょっと迷ってたから…』
「………」
『あ、ごめん!何言ってんだってカンジだよね?気にしないで!』
空笑いをしながら誤魔化すと、黙って聞いていた心操くんが重く口を開く。
「お前……アイツのこと、好きなのか?」
『えっ…?』
衝撃の一言に思わず言葉を失った。
そんな私を探ろうとしてるのか、じっと見つめてくる心操くん。
私が…轟くんを好きか…?
『…そんな、好きとかじゃないよッ!私たちは、幼馴染みで…!』
轟くんは確かに優しくて、かっこいい。
だけど、幼馴染みと言っても轟くんとの記憶はほとんど覚えてないわけで、好きになる程の思い出が私にはない。それは事実。
だけどーー
心の底にある、この胸の苦しさは……
一体なんなんだろう……。
「違うんだったら、普通に接すればいいだろ。どういう関係を築きたいかは、お前次第なんだから。……それを迷ってるなら答えが出るまでゆっくり考えればいいんじゃねぇの?」
『私…次第…』
そうだ…。
まだ答えが出ないなら、出るまでゆっくり考えたらいいんだよね?
焦る必要はない。轟くんも最初からそう言ってくれてたじゃないか。
『ありがとう心操くん。何だかすごくスッキリしたよ!今度何か奢るね!』
「別に奢りとかいいから……礼なら"ソレ"で手を打つ」
『ソレ…?』
心操くんが指差す方向に視線を向けると、そこにあるのは私の鞄。
まさか……。
『……あ、財布とかお金的な物は勘弁して下さい。生活費とかあるんでーー』
「バカッ、違う!そんなカツアゲみたいなセコい真似俺がするか!」
『あ、違うの?良かった…。じゃあ、何?お礼できる物って何にも…』
「あるだろ。弁当」
ーーえっ。
ーーお弁当……?
「ちょうど小腹空いてたし、いいだろ?…あっ、もしかして食った?」
『い、いや…食べてはないけど、何でお弁当なの?こんなの何の価値もないよ?』
「分かってるよ」
いや、そこ否定しないんかいッ⁉︎
…いやまぁ、そうなんだけどさ…。
そんなハッキリ言い切らなくても。
『こんな物でよければ、どうぞ…』
言いながら鞄からお弁当箱を取り出して、
心操くんに手渡す。
「あぁ。どんなもんか毒味してやる」
『味見でしょッ!もう!そういうこと言うならあげないよ⁉︎』
「フッ…冗談。貸せって」
『…!』
あっ…、心操くん笑ってる…。
珍しい…。
心操くんは膝の上にお弁当箱を置くと、丁寧に風呂敷を広げて蓋を開ける。
「へぇ…見た目は悪くないな」
『どうもっ…!』
相変わらずトゲのある言い方だな…。
さすが毒舌キャラだ。
「いただきます」
『どうぞ』
心操くんは卵焼きを箸で取ると、躊躇なく口の中に放り込んだ。
何か…人に自分のお弁当食べられるのって
緊張するなぁ〜…。
相手が心操くんだから尚のことマズいとか
平気で言いそうだし……。
「……うまっ」
『えっ!…ほ、本当ッ⁉︎』
「普通に美味い。コレ、本当に苗字が作ったのか?」
『そうだよ!美味しいでしょ⁉︎』
心操くんが素直に褒めてくれるなんて…!
嬉しい…!
「塩と砂糖間違えて入れそうなのにな」
『だから!何で褒めてから落とすのッ⁉︎…あれ?デジャブ?』
「騒がしいなお前は。ゆっくり食わせろよ」
『誰のせいですか!誰のー!』
そんな感じで、私たちは暫く賑やかな時間を過ごしていた。
その後心操くんはお弁当を綺麗に平らげてくれて、何やかんや最後は褒めてくれたのでよしとした。
心操くんとはその場で別れ、私も家へと帰宅する。
『ただいま〜…』
返事なんて返って来るハズないのに、もう私の中でこれは習慣みたいなものだ。
飾ってある家族写真を手に取り、写真の中にいる2人に向けてニコリと微笑む。
『今日、色々あって大変だったけど…雄英生活なんとかやっていけそうだよ。だから心配しないでね』
この時の私は、雄英生と言うだけで、ただの普通の高校生となんら変わらない生活をこの先送るのだと思い込んでいた。
雄英とはヒーローを数多く輩出する名門校であり、誇り高き存在。
それとまた逆に多くの敵たちに憎まれる存在であるのだと、翌日…身をもって体験することとなるーー。
第2話 おわり