第20話
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「第5セット目!本日最後だ!準備はいいか⁉最後まで気を抜かずに頑張れよーー!!スタートだ!」
こうして始まった最後の戦闘訓練。
私達はモニターでそれぞれのチームの様子を観察していた。
A組チームの主な主力は緑谷くん。彼のパワーはオールマイト並みに超強力な個性だ。きっと心操くん達も緑谷くんを1番警戒してるに違いない。
『…因縁の対決か…』
心操くんと緑谷くんの直接対決は体育祭の時以来だ。偶然にもまた敵対する形で…。
体育祭の時の心操くんは、緑谷くんにただ勝つ事だけに闘争心を燃やしていたけど、今回はそれだけじゃなくて……少し、嬉しそうだった。
それはきっと、あの頃の自分よりも大きく成長できた自信があるから。
本気でヒーローを目指していたのはヒーロー科だけじゃない。
スタート地点は違っても、目指す道は私達も同じだったんだ。
『……頑張れ、心操くん!』
心操くんの活躍に期待しながらそれぞれの動きに注目する。しばらく眺めていると、緑谷くんと物間くんが対峙する場面がやってきた。相変わらず物間くんはお得意の皮肉や嫌味を緑谷くんに
どうなる事かとしばらく行方を見守っていると、緑谷くんの腕から突如黒い
あれは…?
超パワーじゃない。初めて見る個性だ。
「緑谷また新技かぁ」
モニターを見ていた誰かがそう言った。私はその言葉にどこか違和感を感じ、顔をしかめる。
新技…?
確かにまだ私達に見せていない技があるのかもしれないけど、それにしても緑谷くんの表情がかなり焦ってるような……。
緑谷くんから出現した黒い紐状の物は周囲の建造物を破壊し、さらには物間くんや同じチームの麗日さん達にまで襲い掛かる。そこでようやくみんな事態の異変に気付いた。
『個性が…暴走してる…っ⁉』
「相澤くん、ブラド!止めた方がいい、おかしいぞ!」
『オールマイト…!』
後ろから珍しく取り乱した姿のオールマイトが相澤先生達に詰め寄っていた。その様子からただ事ではない雰囲気を感じ取る。
『相澤先生!私なら緑谷くんを止められます!』
「苗字…」
相澤先生は一瞬驚いた表情で私を見つめるけど、すぐに真顔に戻り首を横に振った。
「安心しろ。俺の個性は "抹消" だ。俺だけで事足りるよ」
『あ…、そっか……』
先生の個性のことすっかり忘れてた…。
そうだ。
"抹消" は見ただけでその人の個性を消す事が出来る。
私なんかよりよっぽど強力な個性だ。
相澤先生たちは急いで緑谷くんが暴走する現場へと向かう。私はそれを眺めながら、これですぐに事態は終息すると思っていた。
けど、それは予想していなかった方向に進んで行くーー。
《緑谷ァ!!ーー…俺と戦おうぜ!》
緑谷くんの暴走を止めたのは先生の "抹消" ではなく、心操くんの "洗脳" だった。
その言葉は止まれとかそんな単純な物じゃなくて、緑谷くんとずっと戦うのを待ち望んでいた、心操くんの本心から出た言葉。
《~~~~~~ん"ん"ぉ"お"、応!!》
緑谷くんはその気持ちに必死に答えると、暴走していた黒い紐状の物が突然ピタリと動きを止める。すると、今度は
『収まっ…た?』
呆然とその様子を眺めていると、意識が朦朧としていた緑谷くんを麗日さんが愛あるビンタで目覚めさせる。そのおかげで意識を取り戻した緑谷くんはかなり狼狽えた様子で麗日さんに謝っていた。
良かった…。
いつもの緑谷くんに戻ったみたい。
ほっと一安心していると、緑谷くんの背後から襲い掛かる物間くんの姿がモニターに映し出された。
《え⁉ まだ終わってないんだけど!!》
不意打ちを狙う物間くんの攻撃を、緑谷くんは寸前で躱す。すかさず麗日さんがカバーに入り物間くんを捕えようとするけど、B組チームのみんなが合流し、麗日さんの行動を妨害する。
《ナァァイス、ポルターガイスト!》
物間くんが嬉しそうに親指を立てながら叫ぶ。
A組にとっては人数不利でかなりマズイ状況だ。
するとその後を追って来たのか、芦戸さんや峰田くん達がその場に姿を現す。
《いたァアオラァア!!》
《緑谷、麗日ブジ⁉》
《みんな集まった!》
なんとその場に両方のチーム全員が集結した。
モニターの中ではみんな《乱戦だー!》と言ってお互いに個性をぶつけ合っている。なんとも白熱した状況だ。
……というか、緑谷くんを止めに行った相澤先生たちは一体どこに?
全然中断する気配がないんだけど…。
……いや、きっと相澤先生のことだから、この状況を見てこのまま継続することに決めたんだ。
だって、みんなこんなにも真剣に勝ちに行ってる…!!
繰り広げられるそれぞれの戦い。
譲れない想いがぶつかり合う。
そして、体育祭ぶりに再戦となる心操くんと緑谷くんの戦い。あの頃よりも更に強くなった2人は、動きも個性の使い方も比べられない程成長している。
私は瞬きするのも忘れて、2人の戦いに釘付けになっていた。
ーーー最後の決着がつく、その瞬間まで…。