第20話
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骨抜くんと一緒に運動場
そんなみんなの姿に、共に激戦をくぐり抜けた戦友みたいな絆を感じて、自然と笑みがこぼれ落ちる。
「苗字!体もう平気か⁉ 骨抜から聞いたぞ!俺が溶けねェように守ってくれてたんだってなァッ⁉ 恩に着るぜッ!!」
『ううん。鉄哲くんの援護が私の役目だったから……むしろ最後まで手伝えなくてごめんね?』
「んなモン気にすんなッ!苗字はよくやってくれたぜ!!」
「そうそう。俺なんか1番最初に投獄されたし。それに比べて仲間を守ろうと必死に戦ってくれた苗字の貢献はデカいよ」
「イエス!あのベリーホットな場所で逃げずに立ち向かうなんて、ナイスファイティングです!」
『そ、そうかなぁ…?』
みんなが各々に私を褒め称えてくれるので、なんだか少し照れ臭くなって指先でポリポリと頬を掻く。でも心の中は役に立てた事が嬉しくて、充実感に満たされていた。
やっぱり誰かから感謝されるって嬉しいなぁ…。
「素晴らしい健闘だったよ、苗字さん…!」
『物間くんっ⁉』
テンション高めな声に驚きながら振り返ると、物間くんが両手を広げて何だか恍惚な表情をしながら近付いて来る。
「僕はね、今とてつもなく感動してるんだ」
『か、感動…?』
「そうさっ!B組を勝利に導くために全身全霊で挑んで行く君の姿に、猛烈に感銘を受けているんだよ!」
『そんな、大袈裟な…』
「何を謙遜するんだい!君はもっと自信を持っていいよ。日本人は謙虚さが美徳とされるが、実力がある者が少しくらい傲慢な態度を取ったって、誰も文句は言わないさ!」
「お前はもう少し謙虚になれよ」
すかさず冷静なツッコミを入れる回原くん。
それでも怯むことなく堂々とした物間くんの姿に、みんなが呆れた様子で眺めていた。
そんな光景を目の当たりにしていると、自然と自分の口角が上がっている事に気が付いた。
良かった。
物間くんも喜んでくれてるみたい。
B組のみんなの事、すごく大切にしてる感じだったもんね。
ちゃんと私も貢献出来たみたいで良かった…。
ふと、誰かの視線を感じて顔を上げると、少し離れた場所からこちらに顔を向ける轟くんの姿が視界に映った。
『…轟くん…!』
私はすぐに手を振ってアイコンタクトを送るけれど、次の瞬間にはもう轟くんは背中を向けていた。
あれ…?
今、目が合った気がするんだけどな…。
私の気のせいだった?
「オイ、修復女ァ!!!」
『!!?』
「いつまで呑気に話し込んでんだ!!はよ来い!!作戦会議すんぞ!」
そうだった!
次の第4試合は爆豪くんと一緒のチームだった!
ヤバイ…、急がないと殺される…ッ!
『ごめんっ!すぐに行くね!』
私は慌ただしく次なる第4試合に向けて爆豪くんたちと作戦会議を立てるのだった…。
ーーー✴︎✴︎✴︎
《位置についたら始めるぞ!第4セットスタートだ!》
こうしてブラドキング先生の実況を皮切りに早速始まった第4試合。
私達は爆豪くんが先導する形でフォーメーションを組みながら、施設の中を進んでいた。
『…っ、にしても……速いな爆豪くん…!』
空中を爆破しながら進む爆豪くんは、障害物をヒョイヒョイ身軽に避けながら進んで行く。一方で私達は地上から必死に彼の姿を見失わないように追いかけているのだけれどーー…。
普段ランニングで鍛えてたから何とかなってるけど、爆豪くんのペースに付いて行くのは中々に鬼畜だと思う。いいな、爆破……。
「遅エーーーんだよのろまが!!」
「ウチ "音" 聞きながらなんだけど!」
「いいからついてこいや!!」
どう考えても機動力は爆豪くんの方が上なのに、なんて理不尽な……。
「相変わらず "ついてこい" だな」
「体育祭の時から変わんねぇや」
「なんだかんだ協力してくれるけど、でも…」
みんなやっぱり不安を感じているのか、浮かない表情を浮かべている。かく言う私もその1人で、先ほど話していた作戦会議を思い返していたーー…。
「ーーーいいかオラ三下!とりあえず俺についてこい!!俺が上で先頭を進む!てめぇら俺をサポートできるようにしとけ。耳は常に音で雑魚共の位置探っとけ」
B組の時は1人に対して必ず誰かがマークして一騎打ちをする作戦だったのに対し、爆豪くんは自分が主な戦力になって全員相手しようとしているなんて……。
さすがに少し心配になり、意を決して口を開く。
『…でっでも、全部1人で立ち回るのはさすがに負担が大きいんじゃーー』
「あぁ⁉ 俺がヘマするとでも思っとんのかてめぇは!!」
『そ、そういうわけじゃないけど…っ!』
案の定キレながら私に詰め寄る爆豪くんを瀬呂くんが後ろから「まぁまぁ」となだめてくれた。
「けど、苗字が言ってる事は間違ってねぇよ。向こうめっちゃ迎撃性能高いの揃ってんじゃん。せっかく耳郎いるんだし隙
「馬鹿が、
隙は動いて作る……。
なんか、ちょっと意外だ。
こういう時、もっと自分の感情のままに行動する人なんだと思ってたけど、意外とちゃんと考えながら動いてるんだなぁ。
まぁ、実力あるし私達の力なんか借りなくても本当は余裕なんだろうけど。ヒーロー科試験の時も思ってたけど、他人の力は絶対に借りたくないってタイプだったしーー…
「それとだ、てめェらが危ねェ時は俺が助けるーー…で、俺が危ねェ時はてめェらが俺を助けろ」
『ーーーえっ…?』
耳を疑う言葉に思わず爆豪くんを凝視した。
ーーー今…なんて言った?
ーーー噓でしょ…、そんなことって…。
「……ンだよ?何か文句ありげな
私の視線に気づいた爆豪くんが不服そうな顔でコチラを睨む。私は動揺を隠せないまま恐る恐る口を開いた。
『だって…、あんなに他人から力を借りるの、嫌がってたのに……』
ヒーロー科試験で傷を治そうとした私の手を弾かれたり、合宿の時だって個性を使おうとしたら冷たくあしらわれた事もあった。
そんな人が、今ーー…。
「……俺の目標は、オールマイトをも超えるNo.1ヒーローになる事だ。いつまでも意地張ってりゃ、ずっと弱ェーままだろが」
『ーー!』
言いながら私の横を通り過ぎて行く爆豪くんの背中を見つめる。未だに信じられずに、目を見張る事しかできない。私の知ってる爆豪くんは一体どこに…?
でも、その後ろ姿はなんだか前よりも強く頼もしい姿になったように見えた。
爆豪くんも、過去の自分と向き合って変わろうとしてるんだ。
いつまでもこのままじゃダメだって。
なにか変わろうとしたきっかけが、彼の中であったんだ。
爆豪くんも成長してるんだね…!
すると突然、爆豪くんは思い出したように勢いよく私へと振り返ると、人差し指をビシッと突き立てられた。
「いいか⁉ こういうサポート系はてめぇが1番適役だろ!俺はさっきの試合みたいな中途半端な結果に興味はねぇ!!やるなら完全勝利!それしか俺は認めねぇからな!!分かったか⁉」
『……あ、はい』
でもこういう横柄な態度は変わってなくて逆に安心するかも……なんて。