第20話
お名前は?
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『焦凍くん、こっち!』
「待って、名前ちゃん…!』
『早く行かないと、流星群終わっちゃうよ!』
いつだったか…こんな日があったような気がする。
夏の夜。
今日が1番流星群が綺麗に見える特別な日。
2人で一緒に見ようねって約束して、親に内緒でコッソリ家を抜け出したんだっけ…?
子どもだけでなんて……いけない事をしてるのは分かっていたけど、特別な事をしてると思うと、それがまた余計に冒険心をくすぐられた。
「でもっ、いいのかな…?もしバレたら、お父さんに怒られちゃうかも……」
『その時は、私も一緒に謝ってあげるから。ほら、行こう?』
「…うんっ」
そうだ…。
不安そうな君を安心させてあげようと、一緒に手を繋いで公園まで走って、それからーー…
ーーーそれから…どうしたんだっけ…?
あぁ…、…ダメだ。
頭の中の映像がそこから
何か、とても……
とても、大切でーー…
特別な日だった気がするのに…。
絶対に、忘れちゃダメなのに……。
どうして、思い出せないの…?
ーーー✴︎✴︎✴︎
『ーーっ…、ん……?』
ゆっくり浮上する意識。
まだハッキリしない頭のまま視線を横に向けると、そばにいた誰かが私に気付いた様子で上から覗き込んで来た。
「おっ、良かった。目ェ覚めた?」
『………骨抜、くん……?』
見慣れない顔が最初に視界に映り、一瞬頭が真っ白になる。
顔と名前が一致した瞬間、炎の中で骨抜くんが駆けつけて来てくれた記憶が走馬灯のようによみがえり、慌てて上体を起こした。
『そうだ試合は⁉ ……って言うかココ、どこ?』
「保健室だよ。アンタ、ずっと気を失ってたんだよ」
『リカバリーガール⁉』
「骨抜に感謝しなよ。アンタを心配してずっと診ててくれたんだからね」
『えっ…?』
「ハハッ、気にしなくていいよ。俺が勝手にした事だからさ」
そう言って、本当に気にした様子もなく気さくに笑う骨抜くん。
どうやら目を覚まさない私を心配して、ずっと様子を診てくれていたようだ。何て優しい人なんだ。B組でもない私なんかのために……。
『ありがとう骨抜くん。心配かけたみたいでごめんね?私、骨抜くんが来てくれてから何も覚えてなくて……試合の結果はどうなったの?』
「1ー1で引き分けさ。ラスト障子と角取が制限時間まで戦ったけど、時間切れ。俺は最善の判断だったと思うね」
『引き分けか……。ごめんね?私が気絶しなければ、もしかしたら勝てた試合かもしれないのに……』
申し訳なくて落ち込んでいると、骨抜くんは気にした様子もなくケロリと言ってのける。
「あぁ、全然ダイジョブ。障子と角取以外全員ダウンしてたから」
『ーーえっ?全員ダウン…っ⁉』
「そっ。だから気にすることないよ。俺も最後飯田にやられちゃったし」
『そ、そうだったんだ……』
私が知らない間に結構すごい事になってたんだ……。
じゃあ、轟くんもあの後気絶しちゃったって事…?
「……ありがとね、苗字さん」
『え…?』
突然のお礼に何の事かと顔を上げると、ニッと口角を上げる骨抜くんと目が合った。
「俺が来るまでずっと鉄哲を守ってくれてたでしょ。見つけた時は驚いたよ。とっくに避難してると思ってたからさ……見かけよりよっぽど根性据わってんだね?」
『いや、私はただ……あそこで鉄哲くんを置いて、自分だけ逃げる事はしたくなくて…』
そう…。
出来なかったんだ。
私が憧れて来たヒーローはみんな、いつだって命懸けで救けたい人を守っていた。
私が憧れたのはそう言うヒーローなんだ。
そんなヒーローの背中を今までずっと追い続けて来たのに、私があそこで逃げ出すなんて恰好つかないもんね…?
『ーー…私も、誰かを救けられるヒーローになりたかったから』
「………うん、やっぱイイね」
『 "イイ" …?』
「気に入ったってこと。友達思いの奴は好きだよ。俺、苗字さんと一緒のチームになれて良かった。ヒーロー科編入したら、ぜひB組に来て欲しいね」
『えっ…。本当に⁉』
嬉しい言葉に思わず感激して目を輝かせると、それに応えるように骨抜くんは大きく頷いてくれた。
「もちろん。苗字さんならすぐにB組と仲良くなれるよ。今日で確信した」
『えへへ……ありがとうっ!』
ヒーロー科の人からこんな風に言われるなんて……めちゃくちゃ嬉しい!
頑張って良かったなぁ…。
『……そう言えば、他のみんなは?』
「アンタが最後の一人だよ。他の子はみんな戻って行ったさ」
リカバリーガールの言葉に私は目を丸くする。
『えっ⁉ 私そんなに長く気を失って…⁉』
「いや、ついさっきまで轟たちもここにいたんだけどーー…」
何故かその先の言葉を濁す骨抜くんに、私は首を傾げる。
『どうしたの?』
「あー…いや、何か……訳ありぽかったからさ…」
『?』
「轟と……何かあった?」
『……えっ?どういうーーー』
「そこまでにしな」
質問の意味が分からず聞き返そうとすると、ピシャリとリカバリガールに言葉の続きを制された。
「ここはダべる場所じゃないんだよ。元気になったんなら早く戻りんさい!それに、アンタ次の試合も出番あるんじゃなかったかい?」
『ーー…あぁっ⁉ そうでしたッ!!』
「ヤベッ…、急ごう苗字さん!」
『うん!!リカバリガール、ありがとうございました!!』
慌ててベッドから飛び降り、軽くお辞儀をしてから、私達は急いで保健室を後にした。骨抜くんが言いかけてた言葉は気になったけど、それよりも爆豪くんにブチギレられるんじゃないかと言う事で頭がいっぱいで、それどころではなくなっていた…。