第2話
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*心操視点*
「さっき学食行ったら、苗字と轟が一緒に飯食ってるの見た!」
「轟…って、あの推薦入学者の?何で苗字と一緒にいるんだ?」
「すげぇ2人で仲良さそうにしてたし、ありゃ付き合ってんじゃね⁉︎その後ナンパして来た奴を轟が超怖い顔で追い払ってたし!」
「え!マジで⁉︎」
「……」
昼休み、苗字が轟って奴と教室を出て行った後、教室ではその話題でもちきりだった。
真相は定かじゃないが、轟の苗字を見つけた時の顔だったり、話しを聞いてる感じじゃ、轟がアイツに気があるのは確かな気がした。
ヒーロー科の奴とアイツに面識あったのか?
確か、引越してきたばかりだと最初の自己紹介の時に言ってたハズだが…。
普段なら他人の色恋沙汰なんか興味ない。
本人たちの勝手だし、俺には関係ないから。
けど、その時は何故かそこだけ引っかかってしまい、気になった。
「…んで?アンタらどーいう関係なわけ?」
だから直接苗字に聞いてやろうと思った。
『それはっ……ただの、幼馴染み?』
「何で疑問形?」
『じゃなくて、幼馴染みです!べ、別にそんな変な関係じゃ…!』
コイツ…ほんと分かりやすいな。
そんなどもりながら目泳いでたら何かありますって言ってるようなもんだろ。
まぁ、そこまで深く聞き出す義理もないけど。
隠したい何かがあるなら、せめて忠告だけしてやろうと思った。
「……まぁ、これ以上詮索するのも趣味じゃないし別にいいけど。誤解されんの嫌ならあんま目立つ行動は控えたら?」
『……』
そう言うと苗字は何も言わず、ただ黙って俯く。チラリと横目でみると、落ち込んでるのか表情は暗かった。
そのまま午後の授業も終えて帰り支度をしていると、先に支度を終えた苗字は鞄を背負うと、サッサと教室を出て行く。
その一連の様子を目で追っていた自分に気付いた瞬間、少し動揺した。
俺は、何を気にしてるんだ…?
言い過ぎたとでも思ってるのか。
……らしくないな。
心を落ち着かせようと軽くため息を吐き、俺も帰り支度を済ませて自転車置き場まで向かった。
その道中、見覚えのある派手な髪色に目が止まる。昼休み、苗字を探しにきてたーー
「轟…。あんな所で何してんだ…?」
見ると、校舎の裏側へと曲がって行く所で、すぐにその姿は見えなくなった。
あっちには特に何もなかったハズ…。
クソッ…。
嫌なタイミングで見ちまったな。
趣味が悪いと自分でも自覚しながら、俺は轟の後を気付かれない様に追った。
物陰に隠れながらチラリと様子を伺うと、数メートル先に轟の背中と見覚えのある女子が轟と向かい合う様にして立っていた。
…あの女子、ウチのクラスのーー。
確か入学式の時、轟のことをえらく気に入ってた奴だよな?まさか…。
「あっ、轟君…!来てくれてありがとう!嬉しい…」
「話って何だ?」
「えっと…単刀直入に言うね?轟君って、今付き合ってる人とか、いる…?」
「…いや、いない」
そう答える轟にあからさまに嬉しそうに女子の表情がパッと明るくなる。
「本当⁉︎よかった〜…やっぱりあの話し嘘だったんだ…」
「あの話…?」
疑問に思う轟に、女子は両手を胸の前でブンブン振りながら「こっちの話!」とだけ答えた。
おそらく、昼休みにクラスの奴らが話してたことだろう。あの話しだけでは信憑性に欠けるからな。
「じゃあ、改めて私が言いたかったこと言うね?……私、入学式の時から轟君のことが好きでした!よかったら私と付き合って下さい!」
…やっぱりな。
このシチュエーションからして、だいたい予想はしていた。だがまさか他人の告白場面に出くわすとは予想外だった。
……場違いだよな俺。絶対バレないようにしないと…。
今更ながら後悔していた。
「悪ィ…。他に好きな奴がいるから、お前の気持ちには応えられねぇ」
ーー!!
アイツ……そういうのハッキリ言うんだな…。
好きな奴って、やっぱりーー
「やっぱり轟君って… 苗字さんのこと好きなの?」
「!」
俺が気になっていた事を、女子生徒はストレートに聞いた。何て答えるのか気になり、俺もじっと轟の言葉に耳を傾ける。
「…別に、そこまで答える義理はねぇだろ」
冷たく言い放つ轟に、女子生徒はショックを受けたみたいで「ごめんなさい…」っとだけ言って、それ以上は何も言わなかった。
「用が済んだなら行くぞ…じゃあな」
そう言って
ーーアイツ…あんな言い方してたけど、やっぱ苗字のこと…。
昼間の出来事を思い出す。
苗字を見つめるあの優しい目や、クラスの男子の目撃談、そして、アイツの慌てた様子……これで全て合点が行った。
轟は、幼馴染みである苗字を好きで、アイツもそれに気付いてる。けど、付き合ってはいない。
ようは轟の片思いの状況が続いてて、アイツはそれに戸惑ってるってカンジだろう…。
なら、俺が苗字に忠告したあの言葉は、アイツには少しキツイ言い方だったかもな…。
脳裏に悲し気な表情をした苗字が浮かぶ。少し罪悪感を抱きながら俺は自転車を漕ぎ、帰り道を走った。
暫く漕ぎ続けていると、見知った後ろ姿が目に入る。
…このタイミングで会うとか…。
偶然か必然か…。
俺はトボトボと歩く苗字に、自転車を漕ぎながら近寄って行く。
何故か気付かないフリして通り過ぎるとか、
その時の俺は選択肢になかった。