第19話
お名前は?
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『ーー…分かった。それじゃあ今の作戦で行くんだね?』
「うん。とりあえずはコレで問題ないと思うよ。後は柔軟に」
「よっしゃあぁ!!腕が鳴るぜッ!!」
「頼むぜ鉄哲。お前熱くなるとすぐ周り見えなくなるんだからさ…」
「回原クンの言う通りネ!頭すぐ沸騰するのはよくないデス!」
「分かってらァ!何てったって苗字がいるんだからな!!」
『えっ?私?』
なぜそこで私の名前が…?
言われた意味が分からず、私は人差し指で自分の顔を指しながら小首を傾げた。他の人も同様に頭に疑問符を浮かべながら鉄哲君に視線を向けている。
そんなみんなに鉄哲くんは歯並びの良い尖った歯が全て見えるくらい口端を持ち上げて、頼もしい笑顔を見せた。
「苗字はヒーロー科に憧れて俺たちのチームに入って来てくれたんだ!!そんな目の前でカッコワリィ姿は見せらンねぇだろ!!これがヒーロー科の本気だって所をたっぷり見せつけて、最後はヒーローらしく派手に勝利しようぜッ!!」
『ーー!、鉄哲くん……』
「おっ。たまにはイイこと言うじゃん鉄哲」
「同感だね」
「イエス!みんながとてもハッピーな気持ちになりマス!」
鉄哲くんの言葉に触発され、みんなの顔から笑みがこぼれ落ちる。
私自身も緊張していた気持ちが少し緩和され、緊張とは違う別の熱い何かが胸の中にじわりと広がった。
こんなの……私だってみんなにカッコ悪い所見せられないよ!
『ーーみんなの力になれるよう、私も全力を出し切るねっ!』
そう言ってニコリと笑えば、みんなからたくさんの激励の言葉が飛び交う。そのおかげで私のボルテージはさらに上昇して行くのだった。
こうして、次に始まった第二セットでは拳藤さんチームと八百万さんチームが対戦し、4-0でB組チームが勝利。これでA組B組はそれぞれ1勝1敗と言う、どちらも引けを取らない結果となった。
ーーそして、あっという間に私達の出番がやって来た!
「第三セット、準備を!!」
『……っ』
ブラドキング先生の指示にみんなが覚悟を決めた顔で立ち上がる。落ち着いていた緊張感がまた一気に押し寄せてきた。体が熱い。呼吸が上がる。
私は目を閉じ、一つ深い呼吸をしてからゆっくり立ち上がった。
「ーーー苗字」
『ーー!、心操くん…?』
……と、後ろから呼び止める声に振り返れば、そこには真剣な顔をした心操くんが真っすぐ私を見つめていた。なのに、目が合うと何だか少し言いにくそうに視線を泳がせる。
何かを伝えたいけど言い出せない……そんな雰囲気だった。
『どうしたの…?』
何だろうと不思議に思いながら声をかけると、迷いが消えたのか、心操くんは逸らしてた視線をまたゆっくり私へと戻した。
「……こういうの、キャラじゃないから……言い慣れないんだけどさ」
『うん…?』
「……応援、してるから。……がんばれ」
『…!』
いつも素直に感情を表現するのが苦手な心操くんが、わざわざ私のために一生懸命に気持ちを伝えようとしてくれるその姿が嬉しくて……思わず笑みがこぼれた。
『……ありがとうっ!心操くんが応援してくれるなら、きっと大丈夫だね!』
「ーーー…」
今度は逆に私が心操くんに向けて拳を前へ突き出した。気持ちに応えるように、とびきりの笑顔を向けながら……。
嬉しい。
人から応援されるのって、こんなに嬉しいものだっけ?
私は心操くんに手を振ってから、足取り軽く訓練場所へと足を運んだーー…。
「………」
「どうしたんだい轟くん?ぼーっとしてるが、気分でも優れないのか?」
「……いや、大丈夫だ」
「そうかい…?なら早く俺たちも行こう!少しでも空いた時間に作戦の確認をしておきたい!」
「あぁ……」
ーーー✴︎✴︎✴︎
ーーさて…、とりあえず配置には着いたけど…。
『……まず、最初は作戦通りに相手をおびき寄せる方向で良いんだよね?』
「そうそう。方法はとりあえずーー」
「俺ァよ…良くバカ扱いされるわけだが、腐っても雄英合格した男。考え無しに生きてるわけじゃァねェのよ」
『鉄哲くん…?』
「急にどうした」
作戦の確認を回原くんに尋ねていると、突然鉄哲くんは会話に割り込み、突拍子もない事を言い始める。
しかも話してる間、ずっと自身の拳でゴンゴンと周りのパイプを小突きながら。鉄哲くんの意図が読めない…。
「このチーム!!索敵
「たしかになー」
「ならどうする⁉オイ!!みんな!!」
さらに語気が荒くなる。
鉄哲くん…一体何をしようとしてるの…?
「そこはさっき話ーー」
「なら当然ーー」
「え?」
「ーーー更地にするよなァ!!?」
「バカの考え!!」
回原くんの話の続きは
『ちょ、さっきブラドキング先生が被害は最小限にって言ってなかったっけ鉄哲くんッ⁉』
「小細工無用!来いや、
えぇぇ~~~っ!⁉
さっきまでの作戦の意味はーー⁉
「もう!向こうは轟いるんだぞ!!」
「まァ、これはこれでやれる事あるんじゃね」
「柔軟な思考かよ柔造!!」
その後角取さんも帰国子女なのか、英語で鉄哲くんに文句を言っていたけど、鉄哲くんの暴走は止まる気配はなかった。彼の進む道だけ綺麗に視界が開けて行く。うん。もうあれは止まらないな。
『……い、いいのかなぁ…?』
途方もなく呆然とその場に立ち尽くしていると、骨抜くんがそっと声をかけてきてくれた。
「まぁ…元から考えなしに突っ込んで行くタイプだけど、今回は特に気合い入ってるね」
『…どうして?』
「苗字さんがいるのもあるだろうけど……やっぱさ、こうしてA組と対決する機会って今までなかったんだよね。同じスタートラインに並んだはずなのに、A組の方が目立った活躍をしてた。いつも俺たちはA組の後を追う形でさ……そんなの、やっぱ悔しいじゃん?今日くらいA組に目に物見せてやりたいよね」
『ーーー!』
その気持ちは……よく分かる。
そっか…。
私、何だか勘違いしてたな。
ヒーロー科にいるみんなは選ばれた人達で、恵まれた環境の中でみんなが一緒に強くなってるんだと思っていた。表面上ではみんなキラキラ眩しく見えていたけど、目に見えないだけで、みんな心の中では思う事があるんだな……。
物間くん…。
だからあんなにA組を目の敵にしてたのかな?
今なら彼が何であんな態度を取っていたのか、理解する事が出来る。
……まぁ、少し病的な部分は否めないけど。
でも、これは私だけじゃない。
この合同訓練は、みんなの本気が詰まってる大事な戦いなんだ…!!
『ーーー限界を超えろ…… "
「そういうこと」
これは、何が何でも負けられないーーー!!