第19話
お名前は?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その後、すぐに覚醒した宍田くんが口田くんと切島くんを捕えてそのまま2人は檻に投獄された。もちろんA組もやられっぱなしじゃない。隙が出来た円場くんを梅雨ちゃんが捕えてすぐに投獄。
結局、2対1とA組に
今A組に残っているのは心操くんと、梅雨ちゃんと、上鳴くん。
一方、B組は宍田くんと
1番厄介そうな相手って…やっぱり宍田くんだよね。
隠密行動をしても、宍田くんに常に居場所がバレちゃうし…。
一体どうやって近付けばいいんだろう…?
そんな心配を他所に、A組チームは何か策を思い付いた様子で、梅雨ちゃんの体から出る粘液のような物を自分達の体に塗りつけていた。それを見てピンと来る。
『そっか…!匂いを上書きすればいいんだ…!』
「…なるほどな。いい機転だ」
さすがの相澤先生も感心した様子で静かに呟く。
『……こうやって見てるだけでも、本当に勉強になりますね。相手の得意分野を逆に利用するとか……思いつきもしなかったです』
「個性も千差万別、だから必ず自分と相性が悪い個性はあるワケだ。それを見つけ、どう活用するかが重要になって来る。……お前の個性でも、相手にとったら厄介だと思う奴もいるって事だ。そこを突く事ができれば、必ず有利な状況になる。覚えておけ」
『はいっ!』
私の個性と相性が悪い人か…。
それってどんな人なんだろうな……。
《蛙吹氏3人向かって来てる!》
そんな中、案の定鼻の利く宍田くんは迫って来る3人に混乱した様子だった。うまくA組の作戦に持ち込めてる。このまま姿を見られずに近づければーー…
ーーって、何かさっきから私、A組贔屓し過ぎかな…?
………ううん、違う。
A組を応援しちゃう理由は、心操くんがA組チームで戦ってるからだ!
負けず劣らずしっかりみんなに付いて行ってる心操くん。
さっきの個性発動だって、上鳴くんを庇うために咄嗟に動いていたように見えた。
私が穴に落ちそうになった時に手を差し伸べてくれたように……。
心操くんは根っからのヒーロー気質だと思う。本当にすごい。ピンチの時に現れる救世主みたいだ。
心操くんとは確かにライバル関係でもある。
でも、何故か今は負けたくないとかそう言う気持ちじゃなくて、頑張れ心操くん!って、応援したい気持ちの方がずっとずっと大きい。
だって、私達はこの日のために毎日特訓を続けてきたんだから!
全てはヒーロー科に編入するために……!
だから頑張って!心操くん!!
絶対に、一緒にヒーロー科編入しよう!!
《1人捕獲。引きずり出します!》
モニターからは誰かを捕えたのか、塩崎さんの確信じみた声が漏れる。広範囲に張り巡らせていた自身の髪でもあるツルを自在に操る。そこから姿を現したのは……
《ハイ正解はずれクジーー!》
場を盛り上げるようなテンションで得意げに笑う上鳴くんだった。
《3人ご一緒ォ⁉ 仲良く痺れてーーーな⁉》
けれど、そうスムーズに行かないのがB組の強みだ。
塩崎さんが瞬時に上鳴くんをツルの束で球状に閉じ込め、自身には電気を通さないように分厚いツルのシールドを形成する。対策は万全だ。
『……やっぱB組も強いですね』
「確かにA組は敵との戦闘で経験を積んで来た奴もいるが、B組もまた堅実に自身の個性やスキルを向上させてたからな。クラス全体で言うと、B組の方が個人の成長は高い」
『そうなんですね…っ!努力してるのはB組も同じか…』
そんな事を語ってる間にも、状況はどんどん進んで行く。
反撃に出ようとした上鳴くんを鱗くんがカバーして、宍田くんの太腿に付いていたポインターが破壊される。
《はああーーー⁉》
《ーーっブねえ!》
『あぁ~上鳴くん惜しいっ…!』
《次だ!早くツル張り直せ!》
《ええ。宍田さん位置を……》
『……?』
どうしたんだろう?塩崎さん……急に黙り込んでーーー…あっ。
《おい⁉ 今のは俺の声じゃねえよ!!》
………。
本当に、個性を使うタイミング抜群でしょ…!心操くん!
溢れて来る笑みを口元で噛み締めながらモニターに注目する。
これから予想される展開が熱すぎて、胸の高揚が収まらない。
『やっちゃえ…!心操くん…!』
本当はめちゃくちゃ叫んで喜びを表現したいけど、轟くんが……みんながいる手前、あまり取り乱した姿は見せたくなかったので、私はかなり控えめに意識しながら声を漏らした。
《宍田、敵の位置をーー…指さし⁉ 喋れよ!疑心暗鬼なりすぎ!そっちに1人いるのか⁉ オイ!喋れよ!》
鱗くんの必死な呼びかけにも答えず、宍田くんは1人で心操くんが潜んでいるのであろう方向へと駆け出す。もうコミュニケーションも何もあったもんじゃない。
その隙を見逃さず、梅雨ちゃんが塩崎さんを鱗くんの個性が当たらない高台へと移動させる。
鱗くんと梅雨ちゃんが戦闘している間も、宍田くんは心操くんしか見えていないようだった。宍田くんから逃げることは最早不可能で、心操くんもそれが分かってるのか微動だにしなくて……
ーーそして、ついに居場所を突き止められた…。
《…………》
静かに睨み合う両者。
もう逃げられないぞ、と……宍田くんの目が語っていた。
もう、ここから先は "洗脳" は効かない。今からはお互いの実力勝負だけだ。身体能力では明らかに宍田くんの方が上。頼りになる梅雨ちゃんは今はいない…。
ーーどうする…っ⁉ 心操くんっ…!
そして、そのまま力任せに引くと接着していた部分が外れ、そのままパイプは勢いよく宍田くんの頭部に直撃した。
『よしっ!』
思わずガッツポーズを取る。今の攻撃はかなりダメージを与えた様に見えた。
けれど宍田くんは一瞬ふらりとヨロつくも、すぐに体勢を立て直して心操くんを殺気だった目で捉える。
『嘘でしょ…っ⁉』
てか、どんだけ頑丈なの宍田くん⁉
あんなデカいパイプ頭に直撃したら失神どころか、普通大怪我なんだけどッ⁉
きっと心操くんも同じ気持ちだったのだろう。その瞳は明らかに動揺していた。きっと、今ので仕留めるつもりだったんだ。
けれど、宍田くんはそんなの関係なしに容赦なく心操くんに襲い掛かろうとする。
ーー絶体絶命の大ピンチ。
『心操くんっ…!!』
《避けろォオ
『ーー…⁉』
……その声が心操くんの変声機からなのか、はたまた本物の鱗くんのモノなのか、私には判断がつかなかった。
だって、今この場にいるのは心操くんだけでーーーえっ…?
突如何か大きな物体が宍田くんの後頭部を直撃したかと思えば、気が付けば宍田くんは気を失ったように倒れていた。
そこに覆いかぶさるように倒れていたのは……鱗くん⁉
《ごめんなさいね》
『梅雨ちゃんっ…!』
どうやら助っ人に来た梅雨ちゃんが鱗くんを舌で投げ飛ばしたようだ。
今度は宍田くんも持ちこたえられなかったみたい。2人とも気持ちよく伸びきっていた。
とりあえず、これでB組は全員戦闘不能!
心操くんチームの勝ちだ!
『やったぁ!心操くんやりましたよ、先生っ!』
「あぁ。……後の2人が心操に有利な環境を整えたから成し得た結果だ」
『確かに…!2人のおかげですね』
「………だが、初めての戦闘訓練にしちゃ上出来だ。次はお前だぞ、苗字。心操を見習って、気を引き締めて行けよ」
『ハイッ!』
「第1セット、ぐぬぬぬぬ…!A組+心操チームの勝ーーー利!!」
こうして心操くんチームは最後に大逆転を決めて、有終の美を飾るという何とも華々しい結果に終わった。