第19話
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「じゃ、第一試合ーー…スタート!!」
いよいよ始まった対抗戦試合。
私達は巨大なモニターに映し出された映像を見ながら、互いのチームの様子を観察していた。
心操くんのチームは蛙吹さんと上鳴くんと切島くんと口田くんか…。
一体どんな風に戦うんだろう?楽しみだなぁ。
「苗字。まず最初に取るべき行動は何か分かるか」
モニターを見ていると、横から唐突に相澤先生は私に質問してくる。
私は少し驚きながらも質問された意味を考えた。
『……えっと。索敵、でしょうか?』
「そうだ。まずは敵の位置を把握しない事には何も始められない」
『それじゃあ口田くんの索敵能力は有力ですね!生き物を操って、空や地上から敵の位置を把握できるし、自身は身を潜めながら敵の情報を知る事が出来ます!』
「そうだ。……だが、そう単純に行かないのがヒーロー科の常なんだよ」
『……えっ?』
何かを悟ったような言い方に思わず声が漏れる。
どういう意味ですか?と尋ねるより先に、その答えは案外すぐにやって来た。
「うおっ⁉ 梅雨ちゃんと切島が
誰かが焦ったようにそう口にした。
慌ててモニターに視線を戻すと、B組の宍田くんが普段よりも倍以上の大きな体に変身していて、その巨体が持て余す力で梅雨ちゃんと切島くんをふっ飛ばしていた。
吹き飛ばされた2人は壁や地面に強く叩きつけられ、衝撃で崩れたコンクリートの壁から砂埃が舞う。それくらい強烈な一撃。
『いつの間に近付いて…ッ⁉』
《口田氏の索敵に補足されるのは折り込み済みですぞ!塩崎氏を最も警戒するであろう事も!彼女を
モニターから宍田くんが得意げに言ってのける声が響き渡った。
先読みされてる…。
全部読まれた上で、完璧なまでに対策されてる…!
信じられない…これがーーー
「ーーこれが、ヒーロー科とお前達の経験の差だ」
『……これはなかなか…厳しい差ですね…』
まじまじと見せつけられた。
これは一筋縄じゃいかなそうだ……そんな中、更に宍田くんの背中にしがみついていたもう1人のB組の男子(確か
打つ手が速い…!
反撃する暇もない!
ーーけど、その瞳の色に諦めは見えない。
ん…?
今なんか、マスクに触れてたようなーー…
一瞬、装着していたマスクに心操くんの指が軽く触れていたように見えた。
その瞬間ーーー
《よっしゃ蹴散らせ宍田ーーー!!》
《任されましたぞォォオ!!》
円場くんの声が宍田くんの士気を上げる。
そのまま勢いに乗った宍田くんが心操くんと上鳴くんに襲い掛かろうとする。
ーーヤバイッ…!!
《お疲れさまでしたァァーーーーーー!!!》
上鳴くんが潔く諦めた様子で声を張り上げる。
やられる…!そう思った。数秒後に2人が宍田くんに叩きつけられる映像が脳裏をよぎる。
だが、いつまで経っても次の攻撃は繰り出される事はなく、静寂な時間がその場に流れた。
一体…何が起こったの…?
ワケが分からないままモニターに注目していると、円場くんが驚いた様子で心操くんを凝視していた。
《ーー…俺の声で喋りやがった…⁉》
『えっ…?』
ーーまさか、さっきの円場くんの声は心操くんが⁉
《 "もう一つの声帯" ペルソナコード》
『あのマスク…!そう言う用途だったんだ…!』
だからさっき話す前にマスクに触れていたんだ…と理解する。
それにしても、他人の声を利用して相手を洗脳するって……個性が格段にパワーアップしてる。分かってても、不意打ちを仕掛けられたらうっかり口を開いてしまいそうだ。
何はともあれ、要である宍田くんの動きは封じ込めた。今がチャンスだ!
『よしっ!これで形成逆転できますね⁉』
私は意気揚々と隣にいる相澤先生の顔を見上げる。けれど、先生は私と相反して渋い顔をしながらモニターを見つめていた。
「……判断は良かったが、問題はその後だよ」
『?』
《ーー遅ェ!!》
『………えっ?』
それは一瞬の出来事だった。
捕縛布で反撃に出ようとした心操くんを、円場くんの "個性" で口田くんと同じように閉じ込められてしまう。
咄嗟の判断力はやっぱりヒーロー科の方が一枚上手らしい。
またもや経験の差が出てしまった。
『そんな…』
「心操も個性の使い所は良かったんだがな……こればっかりはどうしようもない」
『……』
「……敵わないって思ってるなら、お門違いだぞ」
『ーー!』
「いきなり勝とうだなんて思うな。お前らは今回初めてヒーロー科と戦闘するんだ。出来なくて当たり前なんだよ。勝つことに
『ーー…はいっ!』
そうだった。
私はあの頃の情けない自分が嫌で、生まれ変わった自分を見てもらおうとばかり注目して、勝手にヒーロー科との実力差に敗北感を感じてた…。
通形先輩も言ってた。初めての事は出来なくて当然だって。
大事なのは敵うか敵わないかじゃなくて、今どう自分が行動すべきかだ。
ヒーロー科はそれを知ってる。
だからそこから学べばいいんだ。こんな状況の時、彼らはどうやって行動して勝利に導いて行くのかを…!