第18話
お名前は?
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「さァA組!!!今日こそシロクロつけようか⁉」
みんなの元へと近付くにつれ、何やら騒がしい声が前方から聞こえて来た。
誰だろうと目を凝らすと、金髪頭のタキシードの様な格好をした男の人が、A組に向かって何かを
あっ…。
あの人、確か合宿でもあんな風にA組を煽ってたような…。
何と言うか……彼からはヒーロー科の闇を感じる…。
止まらない彼の暴走は、相澤先生の捕縛布によって強制終了させられていた。周りのB組の落ち着いた様子から、きっとこれは日常茶飯事なんだろう。慣れってすごい。
「今回、
「しょうもない姿はあまり見せないでくれ」
先生たちの言葉にヒーロー科のみんなが一斉にザワつく。
私達は一瞬顔を見合わせると、どちらからともなく先生たちの後ろからみんなの前へゆっくり姿を現した。
「ヒーロー科編入を希望してる、普通科C組心操人使くんと、苗字名前さんだ」
「あ~~~~~~~~!!!」
『⁉』
期待していた反応は予想以上のモノだった。
「心操ーー!!」「だから合宿に来てたんだな苗字!」「よろしくなー!!」など、驚きと歓迎の言葉が飛び交い、私は戸惑いつつも愛想笑いを浮かべる。隣の心操くんはこんな状況でもポーカーフェイスだった。
そんな中、自然と目についてしまう轟くんの姿。
少し驚いた表情の轟くんと目が合った瞬間、ドキリと胸が高鳴る。
私は気を逸らすために慌てて視線を逸らした。
ダメダメ…!
今は意識してる場合じゃないんだから集中!!
「一言挨拶を」
『…あっ、はい!』
相澤先生の言葉に気を取り直し、先に私から挨拶する。
『初めまーーじゃなくてっ…!えっと…、実は夏合宿の時からヒーロー科の編入を目指して今まで必死に頑張って来ました。だから、今日こう言う機会を与えられたのは凄く嬉しく思ってます!いつか必ずみんなと一緒に学べる日を目指して全力で頑張るので、どうぞよろしくお願いします!』
言い終えると、みんなから温かな拍手が送られた。「健気や~」「何か初心を思い出すな」「無難」などと言葉が聞こえて来る。…いや、ここでの無難は悪口じゃない?絶対今の爆豪くんが言ったよね?
「次、心操」
少し傷付いて気持ちが沈んでいた私の隣で、心操くんはじっとヒーロー科のみんなを視界に捉えて静かに口を開く。
「何名かは既に体育祭で接したけれど、拳を交えたら友達だとか…そんなスポーツマンシップ掲げられるような気持ちのいい人間じゃありません。俺はもう何十歩も出遅れてる。悪いけど必死です」
『…⁉』
和やかな雰囲気から一変、心操くんの辛辣な言葉に一気にこの場の空気が緊張感に包まれるのが分かった。ギョッとして心操くんを見ると、神妙な顔付きで真っすぐ前を見据えていた。
「俺は立派なヒーローになって、俺の "個性" を人のために為に使いたい。この場のみんなが、超えるべき壁です。馴れ合うつもりはありません」
少し沈黙が訪れてから、すぐさま大きな拍手が鳴り響いた。
みんな心操くんの譲れない思いに感銘を受けた様子で頷いたりしている。「何か正反対な2人だなぁ~」なんて声もどこかから聞こえて来た。
本当にそうだと思う。
いつだってこう言う場面では、心操くんの方が真剣だ。
何だか私のさっきの言葉が薄っぺらく感じるよ…。
「じゃ、早速やりましょうかね」
「戦闘訓練!!今回はA組とB組の対抗戦!!舞台はここ、運動場γの一角!!双方4人組を作り、1チームずつ戦ってもらう!!」
ーー…先生からの説明を要約するとこうだった。
私達は特別に今回、A組チームとB組チームに1回ずつ参加できるらしい。
チーム決めは公平にクジで決定される。ルールは先に4人捕まえて檻の中に投獄させた方が勝利。5人チームでも4人捕えられた時点で負けになるらしい。
つまり…経験の少ない私達はハンデになると言うワケだ。
「お荷物抱えて戦えってか。クソだな」
『うぐっ…。すみません…』
「ひでー言い方やめなよ!」
「いいよ。事実だし」
「徳の高さで何歩も先いかれてるよ!」
あぁ…神様どうか!
爆豪くんのチームにだけは入れないで下さい…っ!!
切実な願いを込めながら私はクジを引いたーー。
『……えっと、B組3番は…』
「おぉっ!俺達のチームを選ぶとは強運だなァ⁉合宿ン時は世話になったぜ!よろしくな苗字!!」
『鉄哲くん…!ううん、こちらこそよろしく!』
良かったぁ…。切島くんタイプの人だ。
個性もちょっと似てるんだよね?
「あ、俺も助けてもらった。あん時はありがとね。俺、骨抜柔造」
「柔造も?結構B組も世話になってたんだな。あ、俺は回原 旋。よろしく」
「角取ポニーと言いマス!ヨロシクね!」
『みんな、よろしくお願いします!』
あまりB組と関りがなかったから不安だったけど、みんなとてもフレンドリーな人達で安心した。
このまま平和的に終わりたい…!
『よしっ、A組の4番は…っとーー』
「てめェ…、今何つった…」
『ーー!!』
低く呻る声が背後から聞こえた瞬間、背筋に悪寒が走った。
確認しなくても相手が誰で、今どんな表情なのか容易に想像出来る。
ねぇ…神様…?
あなたは私がお嫌いですか…?
奇遇ですね。私もです。
「今4番って言わなかったか修復女ァ…?」
『………き、記憶にございません~』
笑顔を引きつらせながらゆっくり振り返ると、半月型の目を吊り上がらせた恐ろしい形相の爆豪くんが額に青筋を立てていた。
「とぼけンじゃねぇ!!てめっ、今すぐ番号取り換えて来いッ!!」
『私だってそうしたいですよぉ!!』
「あ"ぁ"ん⁉ ンだとてめぇ!!俺を断るなんざ100万年早ェーんだわ!!」
「爆豪!やめなって!」
「耳郎の言う通りだ!…つかお前、追い払いたいのか引き止めたいのかどっちなのよ?」
「アイツら…仲良いんだな」
こうしてA組チームは耳郎さん、瀬呂くん、砂藤くん、そして……最後は神様のイタズラにより、最も恐れていた爆豪くんという結果になった。
まだ始まってもいないのに、既に精神的に参っている。
爆豪くんとは上手く連携を取れるんだろうか…?
『……それでもーー』
やるしかないんだ。
もう諦めたりなんかしない。
今日ここで、新しい自分に生まれ変わって見せる…!
第18話 おわり