第2話
お名前は?
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『今日は誘ってくれてありがとう。すごく美味しかったよ』
「あぁ。俺も誘って良かった」
私たちはヒーロー科と普通科の別れ目になる廊下にいた。
…最後はちょっとビックリしたけど、すごく有意義な時間だった。
でも、やっぱり気になる。
『…さっきの人って、ヒーロー科の人?』
「…確かな。あんま周り意識して見てねぇから覚えてねぇけど」
『……轟くんって、私といる時と他の人の時とで、全然雰囲気が違うね』
「…!」
少しビックリしたように轟くんは目を見開くと、またすぐに目を伏せた。
「…そうかもな。意識したことなかったけど言われればそうだな」
『…何で?』
轟くん、私にはあんなに優しい目をするのに
さっきのは、全然違う別の人みたいにーー…
「俺が怖いか?」
『ーー!! あ、えっと…』
図星だった。だから言葉にも詰まってしまう。
そんな私を見て、轟くんも「いいんだ」と仕方なさそうに呟いた。
「駄目なんだ俺…。お前のことになると自分を抑えられなくなる。普段は割と冷静な方だと思ってたんだがな…」
『で、でもっ…それだとみんなに誤解されないかな?轟くん、ホントは凄く優しいのにーー』
「他の奴の事なんか、どうでもいい」
『!』
「俺は、お前さえ隣にいてくれればそれでいい…それだけで、俺は…」
切なそうにそう呟く轟くんの熱の
ドクンッ…ドクンッ…
心臓が…すごいバクバク鳴ってる…。
何か変だ…何で急に、こんなっ…!
「…名前…」
『!』
囁く様に私の名前を呼ぶと、轟くんの右手がゆっくり私の頬へと伸びてくる。
『と、どろき…くん…?』
「……頼む…早く、俺をーー」
キーンコーンカーンコーン
私の頬に轟くんの手が触れる寸前、予鈴のチャイムが鳴った。その瞬間一気に現実に引き戻され、お互いハッとして距離をとった。
轟くんも伸ばした手を引っ込めると、その手をキュッと握り締めて私に背を向ける。
「……教室、戻らねーとな。…またな」
『え…あっ、また…ね』
そのまま振り返らずに廊下を進んでいく轟くんを暫く眺め、私も自分の教室に向かった。
轟くん、何を言おうとしたんだろ…?
凄く思い詰めた顔してたな…。
ーーガラッ
教室の扉を開けると、クラスにいた何人かの生徒たちが私を見て一瞬静まり、またすぐにコソコソと耳打ちし合ってるのが見えた。
えっ…?
なに、このカンジ…。
何でヤベー奴来たぞみたいになってるの⁉︎
周りの嫌な視線を受けながら席に座ると、隣にいる心操くんにだけ聞こえるようにそっと話しかけた。
『ね、ねぇ心操くん…何か私、すごく見られてる気がするんだけど…?』
「当たり前だろ。ヒーロー科の推薦者がわざわざ普通科にまで足を運んでくれたんだ。しかも苗字を名指しでな。そりゃ噂にならない訳ないだろ?」
コッチを見ずに淡々と言い放つ心操くん。
そんな冷たく言わなくても…!
文句を言おうとしたら、やっとこっちにチラリと目線だけ向ける。
「…んで?アンタらどーいう関係なわけ?」
『それはっ……ただの、幼馴染み?』
「何で疑問形?」
『じゃなくて、幼馴染みです!べ、別にそんな変な関係じゃ…!』
「……へぇ。ただの幼馴染みがわざわざ教室探し周ってまで学食に誘うとか、よっぽど積もる話でもあったんだろうな?」
なっ…!
鋭いな、心操くん!っていうかーー
『何で、学食行ったこと知ってるの⁉︎』
「クラスで見た奴が言ってたぜ。"2人で楽しそうに話してた。あれは絶対付き合ってる"ってな。あと、"ナンパしてた奴を轟が追い払ってた”……ともな」
『うっ…』
さっきのチャラ男くんのことだ…!
やっぱり見られてたんだ……。
見られるよねそりゃ。
『わ、私たちは、その〜…あのぉ…』
「……まぁ、これ以上詮索するのも趣味じゃないし別にいいけど。誤解されんの嫌なら、あんま目立つ行動は控えたら?」
私が言い辛そうにしてるのを見て何か感じ取ったのか、心操くんはそう言うと教科書を手に取り、次の授業の準備を始めた。
『……』
…別にこんな必死に隠す必要もないんだろうけど、わざわざ言う必要もないと言うか…。
うぅっ…もどかしい。
ただ、自分の意図しない方向に目立ってるのは確かだ。
はぁ…また浮いちゃったな、私…。
そのまま滞りなく午後の授業は終わり、あっという間に下校時刻となった。
さて、帰るか…。
何か今日は疲れたなぁ。
…まだ登校して2日目なのに…。
カバンを背負って、廊下を出る。
何となくヒーロー科の教室がある方を見ると、まだ誰も教室から出て来ていない様子だった。
まだホームルーム中かな?
……轟くん、もしかしたら一緒に帰ろうとか
思ってたかな?
…って、何を期待してるんだ私…!
「誤解されんの嫌なら、あんま目立つ行動は控えたら?」
先程の心操くんの言葉が頭の中で響く。
誤解、か……私はただ、幼馴染みとして仲良くしたいだけなんだけどな…。
でも、それは轟くんの気持ちを否定しちゃうことになるのかな…?
…分からない。
どう接するのが正解なの?
悶々とした気持ちを抱えたまま、私は雄英を後にした。