第18話
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エンデヴァーが勝利を収めた翌日。
相澤先生に課題を言い渡されてから、今日でちょうど3週間が経った日だったーー。
昼休みが終わりかける頃、教室に珍しい人物が顔を覗かせていた。
「苗字、心操」
『相澤先生…!』
「おはようございます」
先生は何も言わずに私達に向かって手招きをする。きっと、今日行われる試練についてだ。すぐに理解して、私達は緊張した面持ちで相澤先生の元へと近付いた。
「分かってると思うが、今日はお前達の実力を試す日だ。…ってことで、今すぐに更衣室で着替えて準備してくれ」
『…えぇっ⁉ い、今からですか…⁉ まだ授業半分残ってますけど…』
「必要ない。担任にも許可を頂いてる。…心配しなくても後で詳しく説明するよ。だから早く準備しろ」
「はい」
『わ…分かりました』
授業を中止してまで行うなんて……こんなの初めてだ。
今回は一体どんな試練が待ってるんだろうーー…?
まさかの展開に戸惑いながらも、私達は相澤先生の後に続こうとすると、先に教室を出た先生が何かに気付いた様子で廊下の方へと顔を向ける。
「おお、お二人さん。相変わらず仲のよろしいことで」
「相澤くん!違うんだ、これは彼から強引に…」
「浮気現場みたいなノリやめて下さい。サムい」
『…?』
何事かと先生の後ろから顔を覗かせると、そこにいたのは慌てた様子のオールマイトと、その隣に何故か緑谷くんが並んで立っていた。
『オールマイト!緑谷くん!こんにちは』
「やぁ、苗字少女。久しぶりだね」
「こんにちは苗字さん!僕たちは最近会ったばかりだね」
『そうだね。緑谷くんはオールマイトと一緒のところ良く見かけるね?』
「えっ、あ、そ、そうかなぁ~⁉ アハハハ~…」
私の言葉に緑谷くんはワザとらしく誤魔化す。
その様子を不思議に思っていると、緑谷くんは何かに気付いたみたいで、私の後ろに視線を向けた。
「心操くん!たしか前も相澤先生と一緒にいたよね」
「まァね」
心操くんは短くそう答えると、少し照れ臭そうにはにかんだ。そう言えばこの2人は体育祭の時に1度戦っていたんだ。あの時は白熱した戦いだったな…。
「緑谷。早めにアップ済ましとけよ。今日は忙しいぞ」
「は、はいっ!」
相澤先生はそう言って私達に向き直ると、廊下を進んで行く。
今日は忙しい…?
何だかその言葉に違和感を抱きながらも、私は慌てて緑谷くんたちに別れのあいさつをしてから先生の後を追いかけたーー…。
『うわぁ~…!何この広い敷地…⁉ 凄い!』
雄英体操着に身を包んだ私達は、相澤先生と一緒に運動場
目の前に広がるのは、広大な敷地の中に巨大なパイプがいくつも連なり複雑に入り組んでいる施設。まるで施設そのものが巨大な工場のようで、その場に立っているだけでも迫力に圧倒された。
こんな壮大な場所で行われるなんて…規模が大き過ぎない⁉
「そこまではしゃぐ事か?」
『…心操くんは相変わらず反応がドライですねー』
「俺は何度かここで特訓受けてたから」
『えっ!そうなんだ?いいなぁ~』
最初からこんな立派な施設で特訓受けてたなんて羨まし過ぎる…!
私なんて最近になってようやく体育館γが使えたのに。
ふと心操くんを見ると、首元の捕縛布に隠れて何か黒いマスクの様な物が装着されている事に気付いた。
『あれ?それ前から付けてたっけ…?』
「…あぁ、コレか。サポート科に頼んで作ってもらった」
『へぇ!どうやって使うの?』
興味津々でたずねると、心操くんは意味ありげに口角を上げて静かに呟く。
「秘密兵器」
『……』
そこは教えてくれないんだ…。
手の内は全て見せないってこと…?ちゃっかりしてるよ本当に。
「オイ、こっちだ」
相澤先生に呼ばれて振り返ると、少し離れた位置にいる相澤先生の隣に、ガタイの良い大柄な男の人が腕を組んで立っていた。
あれ…何かどこかで見たことあるような風貌……。
『……あっ!ブラドキング先生⁉』
確か林間合宿に行った時にB組の担任の先生だった人だ。
あの時は遠くから見てただけで全然関わりがなかったけど…何でここにいるんだろう?
「ようこそ。君たちが噂のヒーロー科編入志願者だな?こうして対面して話すのは初めてだったか」
「よろしくお願いします」
『何でブラドキング先生がここに…?』
「ムッ…⁉ まだ話してなかったのか?」
「今から話そうと思ってたとこだよ」
私の言葉に目を丸くしたブラドキング先生は相澤先生にたずねると、先生は気にした様子もなく、そのまま淡々と話を進める。
「…先にも言った通り、今日は鍛え上げた君たちの戦闘力を試す。ただし、個人戦ではなく……ヒーロー科との合同戦闘訓練の中でな」
「!」
『ヒーロー科とのーー…合同戦闘訓練ッ⁉』
突然のヒーロー科の名前に一瞬耳を疑った。
でも、聞き間違いじゃない。ヒーロー科とハッキリ先生はそう言った。
……そうか。
だからさっき緑谷くんにあんな風に言ったんだ。
ここに来てようやく辻褄が合った。
「……何故、わざわざヒーロー科と一緒に行うんですか?」
「彼らの戦闘技術は高いし、中には直接敵と戦った奴もいる。更なる向上のためにも実際に自分で体験してみて、直接その空気を肌で感じて欲しい。自分の実力が一体どこまで通用するのかをな…」
「君たちにとってもこれは良い経験だ。この機会に思う存分力を出し切ってくれ」
『なるほど…!』
「………」
「…ってことで、今からアイツらの所にあいさつしに行くぞ。気合入れてけよ」
『はいっ!』
「はい」
まさかのヒーロー科との合同戦闘訓練…。
ずっと目指して来ていた人達と一緒に戦えるんだ…!嬉しい!
ちょっと前の私なら不安や絶望しかなかったけど、今の私はヒーロー科と共に戦える事に喜びを感じている。
自分に自信が付いて来てるんだ…!
体育祭の時みたいな悔しい思いは、もうしたくない。
ここであの時の汚名返上してやるんだ。絶対に…!