第18話
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『相澤先生…。本当に抜かりないなぁ…』
「自分で蒔いた種だろ」
『だ、だって…!心操くんがあんな聞き方するから…っ』
「俺のせいだって言いたいのか?」
『……違います。私の責任です……ゔぅっ』
…何の事かというと、先ほど相澤先生から帰り際に呼び止められ、明日までに反省文を提出しろと言う厳しいお達しを受けてしまったのだ。
「よくイレイザーの前であんな事言えるよ」
『気づいてたなら止めてくれたって…』
「やだよ。面倒事はごめんだ」
『そんな薄情な…っ⁉』
次心操くんに相澤先生の話しを振られても、絶対に何も喋らないでおこう!
うん、今決めた!私が損するだけだし。
『…あれ?心操くん寮に戻らないの?』
一緒に隣に並んで歩いていると、突然心操くんは寮とは別の方向へと進んで行くので思わず呼び止める。
「トレーニング。苗字は先に戻ってていいから」
さっそくトレーニングするんだ。
……本当、頑張ってるなぁ心操くん。
私も見習わなきゃ。
…あっ。そうだ!
『待って、心操くん!』
「……なに?」
『よかったら、心操くんのトレーニングしてる様子を見学させて欲しい!』
「断る」
『即答ッ⁉』
あまりにもためらいなく言うもんだから、思わず目が飛び出しそうになった。
断るにしても、もう少し申し訳なさそうにしてくれたっていいんじゃないか?
「そう言うのあんま人に見られたくない」
『心操くんの邪魔にならないように遠くから見てるから!それならいい?』
「見られてるって意識がある以上、気が散るから」
『じゃ、じゃあ……心操くんのトレーニング場所教えてくれれば、知らない間にこっそり見に行くよ!』
「余計に気が散るだろ…。もっと他の事に時間を有効的に使えよ」
な、何か…日に日に相澤先生の言動に似てきてるな心操くん…。
さすが相澤先生の愛弟子…!
「そもそも、俺のトレーニングなんか見ても何も参考にならないだろ」
『そんなことないよ!だって心操くん凄く努力家だし、ヒーローになるためにストイックに頑張ってる姿、すごく尊敬してるんだよ私っ!』
「…!」
『ヒーローを一緒に志してから、体育祭ではトーナメント戦まで勝ち上がって、負けても諦めずに目標のためにがむしゃらに突き進んで行く姿がカッコよくて…、どんどん逞しくなって行く心操くんを見てると、何だか本当に置いてけぼりになりそうで……実はちょっと焦ってるんだ』
前の実施試験の時だって、私がヘマした時に命懸けで救けてけれたのは心操くんだった。あの時の心操くんは、本当にピンチを救い出すヒーローみたいですごくカッコよかった。
あんな風に私もなりたいと思ったんだよ。
『最初はね、心操くんは何でも器用に出来る人なんだって思ってた。…でも、違った。心操くんは
「!」
『だから心操くんを見てると、私も頑張らなくちゃ!って良い刺激をもらえるから、すごく力が湧いて来るんだよねっ!』
ずっと心の中で思っていた感情を素直にぶつける。
そんな私を心操くんは少しだけ大きく見開かれた瞳で見つめると、すぐにその視線は逸らされた。
「……別に、努力なんかじゃない。ただ当たり前のことをやって来ただけだ」
『ふふっ…。そうやって謙遜するところも心操くんらしいね』
「うるさい。……これ以上喋ってたら日が暮れる。もう行くからな」
『えぇっ!結局見せてくれないんだ⁉』
「……今日は無理だ。じゃあな」
『あっ…、……行っちゃった』
どんな風に鍛えてるのか見たかったのに…。残念。
……けれど、後ろ向いて立ち去ろうとしたあの一瞬。
心操くんの顔が少し赤かった気がするのは、私の気のせいだったのだろうか…?
『………反省文、書かなきゃ』
ふとした感じで思い出してしまった嫌な記憶にその考えもすぐに打ち消され、私は重い足取りのまま寮へと向かったーー。
ーーー✴︎✴︎✴︎
ーー翌日。
昨日言われた通り、特別講師を付けると相澤先生に言い渡された私は、朝から指定された場所で特別講師が現れるのを緊張した面持ちで待っていた。
『…ここって体育館
ここは普段ヒーロー科が使用していて、私たち普通科は立ち入る事のない場所だった。そんな滅多に入る事の出来ない特別感に私は少し浮かれる。
みんなここで強くなって、色んなヒーローが誕生して行くんだ……ぜひ私もそのパワーをあやかりたい。
『特別講師ってどの先生なんだろうなぁ~…』
ガラッ
『ーー!!』
何の前触れもなく突然開かれる扉に驚いて顔を向けると、そこに立ち尽くしている人物にさらに驚愕する。
『ーー…えっ、特別講師って…まさかっ⁉』
「そのまさかなんだよね!力を貸すよ、名前ちゃん!!』
『通形先輩…っ⁉』
どうして先輩が⁉
確か今は休学中のハズじゃーー…
雄英体操服に身を包む先輩は、相変わらず存在感のあるオーラを放ちながら私の元へとやって来る。私は驚きを隠せないまま目をパチクリさせていた。
「まぁ、驚くのも無理はないよね!ここはプロヒーローが来ると思うよね、フツー!」
『は、はい…。ビックリしました…。予想外過ぎて…』
「よぉーし!サプライズは大成功だ!!イレイザーから話は色々聞いてるよ。戦闘力を上げたいんだってね?」
『そうですけど……良いんですか?先輩、今休学中なのに迷惑じゃーー』
いくら先生の頼みとはいえ、個性もまだ戻っていない状態で、私1人のために先輩の手を煩わせてしまっては申し訳ない。今は先輩も自分の事で色々辛いだろうに…。
「君は勘違いをしているようだね?」
『え…?』
「むしろ俺は休学中だからこそココに来たんだよ!ずっと引きこもってばかりじゃ体も
『…ほ、本当ですか?』
「もちろん!俺が嘘をつく人間だと思うかい?」
『……思いません』
「だろっ!」
明るく笑いながらそう言い放つ先輩に、心がじんわり温かくなるのを感じた。先輩はいつだって笑顔を絶やさずに明るく振舞ってくれるし、他者を思いやる気持ちが人一倍強くて、困ってる人がいればすぐに力になろうとしてくれる。
その笑顔にどれだけ心が救われる事だろう…。
「…それに、前に君に言ったろ? "何か力になれる事があれば、遠慮なく言って欲しい" って」
『 "お節介やいちゃうのは、ヒーローの基本" ……でしたっけ?』
「そういう事っ!」
ーー私は、そんな強くて心の優しい先輩が、大好きだ。