第18話
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エンデヴァーが勝利したあの日…。
この国を守る新たな象徴が誕生し、世間を大きく揺るがせていた。
……それよりも時は少し
その裏で私達は密かにヒーローになるべく新たな試練に立ち向かっていたーー。
ーーー✴︎✴︎✴︎
ある日の休日。
学生にとってはようやく訪れるつかの間の休息のこの日に、何故か私と心操くんは
例のごとく、心操くんは相澤先生から教員寮に来るように伝言を預かったみたいで、一緒にここまで
『……ねぇ、心操くん』
「なに?」
『この状況、すごく嫌な予感がするんですけど……』
「まぁね」
『まぁねって…、何でそんな余裕そうなのッ⁉』
そう…。
以前にも1度相澤先生に呼び出された時に、私達はそれぞれ課題を言い渡され、クリアするためにトラウマになり兼ねないキツイ試験を命からがらくぐり抜けたのだった。出来ればあんな思いはもう二度と味わいたくない。
『またあんな試練を言い渡されるかもしれないんだよ⁉ 怖くないの?』
「別に。今更何を言われても、ここに来る時点でもう覚悟は出来てる」
……何なんだこの差は。
同じタイミングで進んで来たハズなのに、精神的に置いてかれてる感が半端ない…ッ!!
『心操くんは強いね…。私なんか相澤先生から呼び出されるたんびにビクビクしてるのに……』
「何にそんな怯えてるんだよ」
『えっと……ヒーロー育成のために容赦ない所とか、結果が出ないとすぐに "切り捨てる" とか言って脅してくるし、それからーー』
「ーーそれから………何だ?」
冷たく響く声に、一気に背筋が凍り付くのを感じた。
もちろん、その声を発した人物が誰かなんて、顔を見なくても分かる。
……と言うより、見れない。恐ろしすぎて。
「どうした…?早く続きを聞かせろ」
静かな怒りを含んだ声に怯えながら顔を上げれば、腕を組み赤い瞳で髪の毛を逆立てながらコチラを睨みつける相澤先生がいた。
…これはヤバイ。完全にスイッチが入ってる。
私は何とかこの場を
『い、いやっ、あのぉ~…!そ、そんな相澤先生だけど、実は生徒思いの優しい先生だよね~…って話をしようと…っ、』
「ほぉ…。そうだったのか」
『ーー!、は、はいっ!!決して陰口なんかでは…』
一瞬、納得したような言い方にホッと安堵すると、その瞳はまたギラリと鋭い光を放ちながら、真っすぐに私を射抜く。
「苗字……ーーー俺をナメるなよ?」
『ヒイィィーー!!? すみませんでしたァーー!!』
「……自業自得」
恐怖に震え上がる私の隣で、心操くんはボソリと呆れたように呟いた。
「ーーというワケで、今日来てもらったのは他でもない。君たちに新たな課題を与えるためだ」
あの後こってりお説教をくらってまだ尾を引いていたけれど、言い渡される "新たな課題" という言葉にすぐに気持ちが切り替わる。
やっぱり想像していた通りだ。
次は一体どんな無理難題を言い渡されるのか……私は内心ハラハラしながら耳を傾けていた。
「これまで各々地道に鍛錬を続け、個性の強化に取り組んで来た事と思う。……だが、ヒーロー活動と言うのは時に敵とも戦闘し、勝利しなければならない場面が必ずくる。その時にどう対処すればいいのか、ヒーローに求められる能力は
『求められる能力…』
「そうだ。情報力、判断力、機動力、戦闘力……他にも色々あるが、中でも重要なのは "戦闘力" だ。敵との対峙で有利に運ぶために最も求められる項目だからな」
戦闘力…。
それって、私が一番苦手な項目…っ!
あれ…?
待って、何だかとても嫌な予感がーー…
「ーーつまり……今回君たちに与える課題は、 "戦闘力" を身につけてもらうことだ」
『ーーっ⁉』
「そして、3週間後に成長出来たかどうか、その実力を試させてもらう」
『ま、待って下さいっ!』
「…何だ、苗字」
慌てて止める私に、相澤先生は何食わぬ顔で見つめてくる。
先生の言ってる事はとてもよく分かる。
ヒーローとしては当然求められるものばかりだ。
ーーでもっ…、私には致命的な問題がある。
『…わ、私っ……、戦えないんですけど…』
「……」
私の言葉に心操くんも黙ってコチラに顔を向ける。
少しの静寂が訪れた後、先生は静かに口を開いた。
「戦闘力とは、何も攻撃だけを含めた言い方じゃない。判断力だったり索敵や防護力など…様々な構成から成り立ち、より戦闘を有利に運ぶためにその全てを統括された言い方に過ぎない」
『……えっと、つまり…?』
何だか小難しい言い方に首を傾げると、先生は呆れた様に軽くため息を吐きながら、ポリポリと頭を掻いた。
「…簡潔に言うとだな、お前の個性でも十分戦闘力を補える力を持ってるってことだ。ようは使い方次第だな」
『えっ!…ど、どうやって使えばっ⁉』
「明日苗字には特別講師を付けさせる。その人から色々教わるといい。俺が教えるよりも、その人から教わる方がきっとお前の役に立てる」
『あ、ありがとうございます。……あの、特別講師って誰なんですか?』
「明日になりゃ分かるさ」
『は、はい…!頑張ります!』
教えてくれないんだ⁉ えぇ…誰だろう?
やっぱりプロヒーローの先生?うぅ、気になる…!
「……実力を試すと言うのは、どんな方法で行われるんですか?」
『あっ、確かに。この前はダミー人形を見つける救助活動も交えてましたが…今回はどんな形でやるんですか?』
「それも当日発表する。楽しみは最後まで取っとけ」
『……』
「……」
相澤先生って……結構秘密主義者だよね?
けれど、言葉の最後に不敵な笑みを浮かべる先生に嫌な予感が走ったのは私だけじゃないはずだ。
そうだよね?……心操くん。