第2話
お名前は?
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「そんなことねぇだろ」
『え…?』
じっと私の話しに耳を傾けていた轟くんは、静かに、けどハッキリと私に向かって言い放つ。
「少なくとも俺は、幼い頃からお前にたくさん助けられた。その個性で何度も俺の傷を癒してくれた」
『…私の、個性で…?』
一度は本気で憧れたヒーロー。
だけど、ヒーロー科の試験を受けた時に思い知らされた。
周りがロボットを破壊してポイントを稼ぐ中、私1人何も出来ずに立ち尽くしてた。
自分の無力さに、ただ
ーーだけど、
「俺にとって、お前は誰よりも救いのヒーローだったよ」
『…っ…』
優しくそう言ってくれる轟くんの言葉に、目頭が熱くなるのをグッと堪える。
『…ありがとう、轟くん。そう言ってもらえるだけで、私も救われたよ…』
轟くんの言葉は今の私にとても深く刺さる。
そして同時にもどかしくもあった。
記憶のない私が、人のために個性を使って救っていたこと。感謝されてるのに、それを覚えていないのがとてつもなく悔しくて、申し訳なかった。
早く…、早く轟くんのことを思い出したい…っ!
「アレ?…轟じゃん!なになにそっちのカワイー子⁉︎」
突然聞こえた明るい声に何事かと振り向くと、金髪頭で吊り目のチャラそうな男の人が私を指差しながら近付いて来る。
ビックリした…。
轟くんと知り合い?お友達なのかな。
「なんだよ〜。全然ソッチの気なさそーなカンジだったのに、女子と2人で飯とか!なに、友達?それとも彼女とか⁉︎」
『いやいやっ、私はただの幼馴染みで…』
「あっそうなん⁉︎ なんだ〜、じゃあ今度オレと一緒に飯とかどーよ?奢っちゃうよ?」
『あ、えぇっと…』
すっ凄いチャラい人だッ…!
こうグイグイ来られると、どうしたらいいか
分かんなくなるよ…。
ーーダンッ!!
突如鳴り響く大きな音に、私とチャラ男くんが驚いて音の鳴る方へ顔を向ける。
その視線の先には轟くんがいた。
どうやら音の原因は、テーブルにお箸を思いきり叩きつけた音だったようだ。
俯いた轟くんの顔はよく見えないけど、彼を
『と…轟、くん…?』
恐る恐る声をかける。
応える様にゆっくり顔を上げる轟くんの顔を見た瞬間、背筋が凍り付いた。
その目は、氷の様に冷たい眼差しだった。
「なぁオイ…」
「は、ハイィッ⁉︎」
チャラ男くんも轟くんの迫力に怖気付いてるのか、青ざめた表情で声を裏返しながら姿勢をピシッと正す。
「ソイツに軽い気持ちで近付くんじゃねぇ。遊び程度で言ってんなら、俺が許さねぇ」
「じょ、ジョーダンだって!お友達になりたいな〜って思っただけで、ナンパとかじゃねぇから!なっ?だからそんな怖い顔すんなって〜…あっ!オレ用事あったの思い出したわッ!そんじゃ、失礼〜!!」
涙目で
「チッ…。悪かったな、嫌な思いさせて。食い終わったなら、もう行くか」
『う、うん…』
い、今のは一体…。
あんな轟くんの顔、初めて見た…。
先程の出来事に驚きを隠せないまま、私たちは食堂を後にした。