第17話
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『ーーハァッ!、ハァ…、ハァ…っ』
ガバリと勢い良く上半身を起こすと、そこは先ほど居眠りしていた木の幹が視界に映った。もちろんエンデヴァーも、荼毘の姿もいない。いつもの慣れ親しんだ光景だ。
私は荒い呼吸を繰り返しながら、自分を落ち着かせようと早鐘を打つ胸に手を当てる。
…大丈夫…今のは夢。
全部、夢だから…。
そう自分に言い聞かせて呼吸を整えようとした。
なのに何故か胸のザワつきが収まらない。
ブーーー。
『ーー⁉︎』
その時、ポケットに入れていた携帯が突如鳴り響く。
滅多に掛かって来ることのない着信に驚きつつも、手にした携帯のディスプレイを確認すると、そこには心操くんの名前が表示されていた。
…嫌な予感が走る。
私は震える手で通話ボタンを押すと、受話口を耳に押し当てた。
『…も、もしもし…?』
恐る恐る口を開けば、受話口の向こうから切迫詰まった様な声が耳に届く。
[苗字、すぐに寮に帰って来い…!]
『ど…どうしたの急に…?』
戸惑いながらそう聞き返すと、耳を疑う言葉が返って来た。
[エンデヴァーがヤバイ事になってる…!]
ーーああ…、何で…。
ーー何で、嫌な予感はいつだって当たってしまうの…?
『すぐに戻る…っ!』
そう言い残して通話を切ると、急いで寮へと駆け出した。
駆け込む様に寮の扉を開けると、談笑スペースに集まるクラスのみんなの姿が視界に飛び込んで来た。
どうやら談笑スペースにあるテレビにみんな釘付けになっているようで、私に気付いた心操くんがコッチだと手招きする。
『何があったの…⁉︎』
「俺も今さっき戻って来たら…こうなってた」
そう言ってテレビの方に視線を向けるので、私もつられてその先を辿る。テレビ画面には街中で逃げ惑う人々や、半分にへし折ったような形をした高層ビルから黒い煙が立ち籠めている様子が映し出されていた。
『何…これ…』
一体何が起こっているのか分からない。
ワケも分からず映し出される映像を見つめていると、倒壊したビルの背後で発火したように燃え盛る炎の塊が空中に浮かんでいるのが見えた。
《ああ今!!見えますでしょうか⁉︎ エンデヴァーが!!この距離でも眩しい程に!!激しく発火しております!!》
『ーー!!』
リポーターの言葉でようやくその炎はエンデヴァーの炎なのだと理解する。遠く離れても太陽のように眩しい光を放っており、画面越しでも思わず目を細めてしまう程。
何かと戦ってる…⁉︎
あそこで今エンデヴァーは必死に戦っているんだ…!!
『頑張って…エンデヴァー!』
必死にそう祈っていると、突如激しい閃光は止み、空中に浮かぶエンデヴァーの姿が映し出される。その姿は
そうだよ…。
心配する事なんかない。
エンデヴァーはいつだって強くて、勇ましい人なんだ!
…やっぱりアレはただの夢ーーー
その時、エンデヴァーの足元付近に黒い小さな塊が空中を漂っているのに気が付いた。
何だろ…あれ…?
ーーそう思った刹那。
小さな塊から手の様なモノが生えたかと思うと、そのまま勢いよくエンデヴァーの脇腹や顔面付近を貫く。
まるでスローモーションの様にエンデヴァーの体から赤い鮮血が吹き出した瞬間、心臓を撃ち抜かれたような衝撃が走った。
遠く離れていても分かった。
きっと今のは致命的な傷を負ったのだと…。
「あ…⁉︎ エンデヴァーが落ちるぞ!」
「やられたの⁉︎ 嘘でしょ!だって…No.1だよっ⁉︎」
クラスメイト達がザワつき、狼狽える声が耳に届く。
けれど、聞こえているのに情報が頭に入って来ない。
もう、何も考えられなかった。
私は地面へと落下して行くエンデヴァーを呆然と見つめる。徐々に踏み込む足の感覚が無くなり、思わずフラリとヨロけた。
「ーーオイッ…!」
倒れ込みそうになった瞬間、私に向かって素早く伸ばされた誰かの手がガシリと力強く肩を掴む。
ダルく重たい頭を上げれば、心操くんが心配した様子で私の顔を覗き込んでいた。
「苗字、大丈夫か…⁉︎」
『…心操…くん…っ』
私は
『どうしよう…っ、エンデヴァーが…!エンデヴァーが死んじゃう…っ!』
夢で見たエンデヴァーの傷付いた姿が今の状況と酷似していて、どうしても悪い方向に考えてしまう。
すると心操くんは胸元を掴んでいた私の手の上から自分の手を優しく重ねると、力強い眼差しを私に向けた。
「大丈夫だ、落ち着け。まだ死んだと決まってないだろ?お前の信じるエンデヴァーをちゃんと見ろ」
『ーー…!!』
心操くんの言葉にハッと目を見開く。
"俺を、見ていてくれ"
そうだ…。
何を弱気になっているんだ私は…っ!
エンデヴァーはこんな事で倒れたりなんかしない。
倒すと決めたからには、どんだけ
『ーーうんっ…、そうだね…!』
心操くんのおかげで徐々に落ち着きを取り戻した私は、またテレビへと視線を戻す。
液晶画面に映し出された映像は、ヘリコプターに乗ったリポーターが上空から実況している場面に切り替わっていた。
《突如として現れた1人の敵が!!街を
ーー"改人脳無"
確か保須市や神野事件の時にも出現していた…。
と言う事は、やっぱりこれも敵連合が関わっているって事なんじゃ…⁉︎
《きゃあぁぁッ!!》
『!!』
叫び声に驚いて顔を向けると、街中に現れた脳無の存在に怯えてパニックを起こした人々が我先にと逃げ惑う様子が映し出されていた。
《象徴の不在…》
『…!』
《これが、象徴の不在…!!》
まるでこの状況に絶望したようにリポーターが震える声で呟くと、画面のフレーム外から突如威勢の良い声が聞こえてきた。
《適当なこと言うなや!!どこ見て喋りよっとやテレビ!》
『!』
カメラが1人の少年を映す。
その少年は仲間に止められながらも、やめることなく必死に上空を指差していた。
《あれ見ろや!まだ炎が上がっとるやろうが!見えとるやろが!!エンデヴァー生きて戦っとるやろうが!!》
『ーー…エンデヴァー⁉︎』
少年の指差す方向を見れば、上空を炎が上がっては消える様子が遠目から確認する事が出来た。
私はその炎を見た瞬間、胸がジンと熱くなる。
エンデヴァーはあそこにいる。
まだ彼の
《おらん