第17話
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『心操くん見た⁉︎ 昨日のビルボードチャート!エンデヴァーカッコ良かったよね!』
翌日、朝一の教室で、私は隣に座る心操くんに向かって興奮気味に話しかけていた。そんな私の様子を見て、心操くんは迷惑そうに眉をひそめる。
「朝っぱらからテンション高いな…」
『だって、昨日のはさすがに興奮しちゃうよ!オールマイトのいない初めてのビルボードだよ?ようやくエンデヴァーが…!、……憧れの人がNo.1になれた日なんだもん。こんな形だけど、嬉しかったんだよ』
「……」
多分、エンデヴァーはこんな形では望んでいなかっただろうけど…。それでも、あなたがNo.1になれた事で、世間はあなたに注目してくれる。
そして、新しい象徴があなたで良かったと…みんなから認められる日が必ず来る!
だから絶対に、大丈夫…っ!!
『…それに、こんな話……轟くんには話せないからさ』
そう言うと、ピクリと心操くんの眉が引くついた。
「…俺はアイツの代わりってワケ?」
『えっ…、ちがっ、そういうつもりじゃなくて!』
一瞬不穏な空気が漂い、慌てて否定する。
『…心操くんも私の事情知ってるから、共感してくれるかなって思って…』
「……」
『ほっ、本当だよ…⁉︎』
「そんな必死になるなよ。冗談だ」
『えっ…冗談…?』
な、何て紛らわしい…!
心操くんのは冗談かそうじゃないのか、見分けがつかないよ!
…って、私もこんな必死に否定するのも何だか変なカンジだし…。結局心操くんの本心って、よく分からないままなんだよね…。
相澤先生の実地試験を行った日、心操くんの本心が知りたくて気持ちを聞いたら、はぐらかされたまま曖昧な状態がずっと続いていた。
こちらからまた深掘りするのも何だか気が引けるし、取り敢えずはあまり気にしすぎないようにしているのだけれど…。
心操くんは本当の所、私の事をどう思ってるんだろう…?
もやもやした気持ち抱えながら、思わず心操くんをじっと見つめていると、視線に気付いた心操くんが怪訝な顔をして振り向く。
「…何?黙って見つめられると気になるんだけど」
『ーー!!、えっ、いやその…!』
「…?」
『心操くんは、誰か憧れてるヒーローはいないのかなって…!』
「…!」
誤魔化すために咄嗟にそう言ったけど、意外と今の質問は心操くんの気を引くのに効果的だったみたいだ。
我ながら珍しく機転が
そう言えば今まで聞いた事なかったもんね!
心操くんは誰に憧れたんだろう?気になる…!
しかし、心操くんは少し考える素振りをすると、意外な言葉を呟いた。
「……特にいない」
『えっ⁉︎本当っ⁉︎ 誰もいないの⁉︎』
「…何か文句ある?」
『い、いや…文句はないけど。何でヒーロー目指したのかなって思って…』
何かきっかけみたいなモノはみんなあるのだと思い込んでいたから、意外な言葉に驚いた。すると心操くんは少し遠い目をしながら静かに言葉を紡ぐ。
「ヒーローは漠然とした憧れだったから。…俺のこんな "個性" でも、誰かの役に立ちたい…人のために使いたいって…そう、思ったんだ」
『……そうだったんだ』
初めて心操くんの気持ちを聞けて、少し嬉しく思う。
…そう言えば、前に心操くんが私に言ってくれた言葉がある。私が心操くんにヒーロー向きの個性だと言った言葉が嬉しかったって。
それって、自分の個性に劣等感があったから、だからずっと自分の個性を誰かに必要とされたかったのかもしれない…。自分の存在を認めてもらいたくて…。
どんな理由であれ、そこに "なりたい" という憧れが生まれた時点で、それはもう立派な理由だ。
「…けど、きっかけじゃなくて、尊敬するヒーローならいる」
『えっ!誰⁉︎』
思わず身を乗り出し気味にそう聞けば、少しだけ照れ臭そうに心操くんは名前をこぼす。
「……イレイザーヘッド」
『イレイザー…って…』
相澤先生のヒーロー名…⁉︎
「…何笑ってんだよ…」
黙り込む私を見て、何か勘違いしたのか不貞腐れる心操くんだったけど、私が目を輝かせながらズイっと詰め寄ると、ギョッと目を見開いて驚いた顔をした。
『ーーそれって凄く素敵だと思う!!』
「…っ⁉︎」
『だって、今相澤先生から色々教わってるんでしょ!? その姿を見て尊敬するようになったって事だよね?まるで本当の師弟関係みたい!きっと相澤先生も喜ぶーー』
「言うなよ…!」
『えっ』
「お前は余計な事言わなくていいんだ…!いいな…⁉︎」
『は、はいっ…!』
珍しく焦った様子で必死に念を押す心操くんの圧に、思わず敬語で返事をしてしまった。
心操くんは「言うんじゃなかった…」と言って頭を抱えていたけど、私は何故そんなに嫌がるのか良く分からず首を
相澤先生…喜ぶと思うんだけどなぁ…。
まぁ、本人が嫌がるなら言わないけど…。
そうこうしてる内に昼休みの時間となり、私はいつもの様に食堂へと向かう。
取り敢えず、轟くんの前ではエンデヴァーの話しをしないように気をつけなきゃ…!