第17話
お名前は?
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「ここにいたか、苗字」
『相澤先生…⁉︎どうしたんですか?』
この日は普段通りの日常…のはずだった。
いつもの様に雄英から寮に戻り、放課後のトレーニングに
毎度の事ながら、相澤先生から声掛けられるのって、結構ビビるんだよね…。
何て本人を前にして口では言えない事を心の中で呟いていると、相澤先生はいつもの平坦な口調で言い放つ。
「急で悪いが、今日この後予定空けといてくれ」
『え?な、何かありましたか…?』
「
合理的…。
相変わらず無駄が嫌いなんだな先生は。
それよりもーー
『来賓って…一体どなたなんですか?』
「それはだなーーー」
「
「猫の手、手助けやって来る!」
「どこからともなくやってくる」
「キュートにキャットにスティンガー!」
"ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ" と言ってお決まりの決めポーズをキメながらA組の寮に突如現れたのは、夏合宿の時にお世話になったプッシーキャッツのみなさんだった。
相澤先生に言われて、まさかの名前にビックリした…。
またプッシーキャッツのみなさんに会える日が来るなんて…!
けれどあの時とは違い、全員私服姿だ。
ヒーローコスチュームに見慣れていたため、私服姿だといつもより大人の落ち着いた雰囲気が漂う。普段のコスチュームが可愛いから余計にそう思うのだろう。
「プッシーキャッツ!お久しぶりです!」
「元気そうねキティたち!」
飯田くんやみんなが嬉しそうに駆け寄って行く。それを見たマンダレイ達も嬉しそうに微笑んでいた。
そして、プッシーキャッツの後ろで少し緊張した面持ちで佇む、今日1番会いたかった人物に私は一目散に駆け寄る。
『洸汰くん!!元気だった⁉︎』
「洸汰くん!!久しぶり!!」
声を上げたのはほぼ同時だった。
私は驚いて隣にいた緑谷くんに視線を向けると、緑谷くんもまた驚いた様子で私を見つめていた。
『ぷっ、あははっ。被っちゃったね?』
「ご、ごめん!邪魔しちゃって!」
『邪魔じゃないよ!手紙のお礼を言おうとしてただけたから』
「えっ…手紙って、苗字さんも洸汰くんから貰ったの⁉︎」
『"も" って事は…緑谷くんも⁉︎』
2人して驚きながら顔を見合わせていると、後ろから何だか恥ずかしそうに小さく呟く声が耳に届いた。
「…ど、どっちにも書いたから…」
『えっ⁉︎ そうだったんだ!』
「手紙ありがとうね!宝物だよ」
「別に…、うん」
照れ臭いのか、洸汰くんは少し頬を赤らめていた。
「緑谷くん、見てよ」
「え?」
「やっ、やめろよ」
マンダレイが指差す方向を見つめれば、そこには緑谷くんのトレードマークでもある赤い靴が玄関に綺麗に揃えられていた。
「自分で選んだんだよ。"絶対赤だ"って」
『緑谷くんと同じ色に…?』
「べっ…、違っ…」
焦った様子で慌てる洸汰くんに、緑谷くんは嬉しそうに笑う。
「お揃いだ!」
その言葉に洸汰くんは恥ずかしがりながらも、嬉しそうに口端を上げていた。
緑谷くんとお揃いの靴…。
同じ物を欲しがるって事は、その人が好きとか、憧れてとか理由はたくさんあると思うけど…。
合宿では緑谷くんに急所パンチしてたのに、何で急に?
その時、手紙に書いていたある文章が思い浮かんだ。
確か、"ちゃんとぼくにも、ヒーローがたすけにきてくれました" って書いてたはず…。
もしかして、そのヒーローってーー…!
私は洸汰くんに近寄り、しゃがみ込んでコソっと耳打ちする。
『ねぇ、洸汰くん。手紙に書いてくれてたヒーローって…緑谷くんのこと?』
「えっ…まぁ、うん…。敵に襲われそうになった時…緑谷さんが助けに来てくれて…」
『やっぱり…!そうだったんだねっ』
ヒーローの正体が緑谷くんだと分かり、何だか嬉しさが込み上げた。
命懸けで救うヒーローは、洸汰くんの目にはどう映ったんだろうか…。
「…あの時…」
『…ん?』
「色々…酷いこと言ったの……ごめん…」
『大丈夫だよ。気にしてないから!……それより洸汰くん、1つだけ聞いてもいい?』
「…?」
不思議そうに顔を上げる洸汰くんに、私は優しく微笑みながら口を開く。
『洸汰くんはまだヒーロー…嫌い?』
「…!」
それは、私が1番最初に洸汰くんに尋ねた質問だった。
洸汰くんは私の言葉に一瞬ビックリしたように目を丸くすると、段々とその頬を赤らめ恥ずかしそうに呟く。
「……っ、…す、好き…だよ」
『よかった…っ!』
その言葉が嬉しくて、私はニッコリ微笑みながら帽子の上から洸汰くんの頭を撫でると、最初は少し慌てた様子で「や、やめろよ…っ!」と、手を払い除けようとしてたけど、止める気配のない私に観念したのか、最後は帽子のつばを持って、恥ずかしそうに私から顔を隠そうとしていた。
ーーもうそこに、あの時のヒーローに嫌悪感を抱いていた眼差しはどこにもなかった。