第2話
お名前は?
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『うわぁ…すごい、人多い…』
食堂は思いのほか人で混み合っていた。
サポート科や経営科も集まるため、注文も列で並んでいる。
その分食堂もかなりの大きさだ。
雄英生ってこんなにいたのかと、改めて思い知らされる。
「名前。コッチ空いてる」
『あ、うん!ありがとう!』
受け取った品を手に空いてる席へと向かい、お互い向かい合う形で腰を下ろす。
『轟くんの美味しそう!お蕎麦好きなの?』
「あぁ。冷たい方が好きだ」
『うんうん、確かに冷たいお蕎麦美味しいよね!私は無難にハンバーグ定食にしたよ』
「そっちも美味そうだな」
『うん!どれも美味しそうで正直迷ったよ。じゃあ食べよっか?…いただきます』
「いただきます」
お互い両手を合わせると、目の前にある料理へと箸を伸ばす。早速ハンバーグを一口頬張ると、その瞬間体中に衝撃が走った。
お肉柔らかッ⁉︎
肉汁が…溢れ出る…!
『美味しい!何これ⁉︎ 学食ってこんなにレベル高いのッ⁉︎』
「確かに美味いな。さすがクックヒーローってカンジだな」
『えっ!これもヒーローが作ってくれてるんだ⁉︎ 雄英スゴイ…』
プロの料理が学食で食べれるなんて…。
さすが雄英…お金のかけ方も違う!
暫く夢中で食べ進めていたが、ふと気になった事を口にする。
『そういえば、ヒーロー科ってどんな授業してるの?』
「午前は普通の授業だった。午後からはヒーロー基礎学があるな」
『そうなんだ!じゃあ午後からどんな授業が始まるかドキドキだね!』
「…あぁ」
入学式からヒーロー科だけカリキュラム違ったから、もっとスパルタな感じかと思った。
意外と普通のこともするんだ〜。
まぁ、当たり前か…。
「…なぁ、一つ聞いてもいいか?」
『えっ?な、なに?』
急に真剣なトーンで言われるから、少しドギマギしてしまう。轟くんは少し沈黙してから、意を決した様に口を開いた。
「…何で、雄英にいるんだ?」
ドキリ、と心臓が跳ね上がった。
思い掛けない言葉に固まる私を見て焦ったのか、轟くんは少し申し訳なさそうに言葉を
「いきなり悪ィ…今更ってカンジだよな。けど、昔名前に聞いたことあったんだ。 "ヒーローになりたくないのか?" って」
『そうなんだ…! 私、何て言ってた?』
「 "私の力じゃヒーローにはなれない" って笑ってた。だから、何でヒーローを目指したのか気になったんだ」
『そっか……ハハッ、そんなこと言ってたんだ…』
私が知らない過去の自分。
その時から未来の自分がこんな風に挫折しちゃうって分かってたのかな…。
『…昔、ある事件に巻き込まれた時にヒーローに助けられた事があるの』
「ある事件…?」
轟くんは眉を潜めて、興味深げに私の言葉を繰り返す。
『私がまだ小さい頃、いつ頃かはハッキリ覚えてないんだけど……火事に巻き込まれたことがあるの』
「そんなことがあったのか…⁉︎」
初めて聞かされたのか、轟くんはかなり驚いた様子だった。
『うん…。あの時、初めて死という恐怖を味わって、 "あぁ…私、ここで死ぬんだ" って思った。けど、そこへヒーローが助けに来てくれたの』
目を閉じて、あの日のヒーローへの想いを馳せる。
あの時、あの瞬間…。
ヒーローが現れた時の、あの魂が震え上がる程の
『ヒーローを目指したのは、それがきっかけかな。後は自分の個性で人助けをしたいと強く思って……で、雄英のヒーロー科受けたんだけど、やっぱり私には向いてなかったみたい!過去の私の言う通りになっちゃったね』
あははっと空笑いしか出て来なかった。
過去の私の方が、既にヒーローになれないことを分かっていたなんてもう笑うしかない。
何を自惚れちゃってんだか…。