第16話
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『うわっ…!もう人がこんなにたくさん…⁉︎』
まだまだ時間的に余裕だと高を括りながら行くと、体育館は予想以上の人で埋め尽くされていた。
凄い大盛況…!
やっぱりみんなA組の出し物に興味あるんだなぁ。
人の圧に圧倒されながらも、何とか人混みをかき分けて、丁度ステージが見渡せる中央辺りまで辿り着けた。
よしっ、ここなら遠すぎなくて丁度いいや。
楽しみだなぁ〜!
「フンッ…。どうせ大した事ないくせに」
『!』
ワクワクしながら開始時間まで待っていると、突然聞こえてきた声に驚いて顔を向ける。
そこには2人組の男女が面白くなさそうな顔で周囲の状況を見渡していた。
普通科の制服……違うクラスの人達?
何でそんな風にーー…
「ーーお前、知らないだろ?今ヒーロー科の主体的な動きに他科が振り回されてるせいで、ヒーロー科に対してストレスを感じてる奴がいること」
ーーあっ…。
心操くんが言ってた事って、こう言う事だったんだ…。
ヒーロー科に対して面白くないと感じてる人達。もちろん純粋に私みたいに楽しみにしてる人達も大勢いる。
けれど、確かにそう感じてしまう人は一部いるんだ。
でもーー…
その時、体育館全体の照明が消え、暗闇に包まれると同時に開始のブザーが鳴る。
するとステージの暗幕がゆっくり開き、A組のみんなが楽器を構えたり、ポップな衣装に身を包み並び立つ姿が目に飛び込んで来た。
いよいよ始まる瞬間に、周りから「きたー」「1年ガンバレー!!」と声が上がる。
『…大丈夫』
ボソリと呟いた声は、盛り上がる周囲の声にかき消さるけど、私は期待の眼差しをA組のステージへと向けた。
ーー私は知ってるよ。
ーーヒーロー科のみんなが本気を出せば、
ーーみんなの心を動かす事が出来るんだって!!
「行くぞコラァアア!!!」
爆豪くんの
「よろしくお願いしまァス!!」
耳郎さんのハスキーボイスな歌声に魅了されながら、その中で楽しそうに踊るA組のみんなから目が離せない。
「おぉ⁉︎」
「いいじゃん!!」
みんなの歓喜に湧く声が耳に響く。
青山くんのレーザービーム、そして轟くんの氷結が氷の架け橋の様に天井に張り巡らされ、熱気の籠った体育館に、少しヒンヤリした冷気が漂った。
『…雪?』
ふと、頭上からチラチラと雪の結晶の様な物が舞い落ちて来る。
天井を見上げると、切島くんが削った氷が青山くんのレーザーに照らされキラキラと輝き、まるでダイヤモンドダストの様に幻想的な空間を作り出していた。
『…綺麗…』
繰り広げられる様々な演出に、胸の高揚感は収まる事を知らない。
凄いっ…!みんな凄いよ!
まるで異次元の世界に飛び込んだみたい!
歌のサビに差し掛かり、会場はより一層盛り上がる。
チラリと先程の普通科の人達へと視線を向けると、2人とも別人の様に楽しそうにはしゃいでいた。
その変わり様に思わず笑ってしまう。
さっきまであんなにも嫌悪感を抱いてたのに、2人とも今は無邪気にこの場を楽しんでくれてる。
これがヒーロー科の力なんだ。
みんなに勇気や感動を与えてくれる。
私もずっとみんなを追いかけて来たから分かるんだ…。
ヒーロー科はいつだって限界を越えて来る…。
正に "
私も…いつか…みんなの隣にーー。
こうしてA組のステージ発表は大盛況のまま幕を閉じたのだった…。
ーーー✴︎✴︎✴︎
『ハァ〜…凄かったなぁ』
感激のあまり思わず心の声が漏れる。
A組のライブが終わり、その後すぐに始まったB組の劇も中々の見応えだった。
何か色んな要素が詰め込まれていた気もするけど…。
まぁ面白かったし、いっか。
余韻に浸りながら会場を後にすると、前方にA組のみんなが演出に使った氷やらを運んでいる現場に出会した。
私は思わずみんなの元へと駆け寄る。
『みんな〜!お疲れ様!すっごく良かったよ!』
「…おっ、苗字じゃねぇか!観に来てくれてたんだな。サンキューな!」
私に気付いた切島くんがいの1番に話しかけてくれる。いつも友好的な彼はA組の中で1番話しやすくてめちゃくちゃ良い人だ。
けれどその後ろにいた爆豪くんは肩越しに振り返ると、切島くんとは対照的に不機嫌そうな顔で私を睨んだ。
「当然だろ。観に来てなきゃブン殴ってた」
『まさかの鉄拳制裁ッ⁉︎』
「コラ爆豪!女の子に暴力はダメだろ」
「じゃあ爆破」
『どっちも暴力的…!』
「爆豪。あまり名前をいじめんな」
突然聞こえてきた声に驚いて振り返ると、いつの間にか私のすぐ後ろに轟くんが立っており、じっと爆豪くんを見据えていた。
『と、轟くん…!』
「あぁ?ンで、テメーがコイツ庇うんだ?」
そう言うと、爆豪くんは何かを察した様にニヤリと悪い顔をする。
「ハッ!まさかソイツに惚れてやがんのかァ?轟ちゃんよォ?」
『ちょっ、爆豪くーー』
「そうだ。悪ィか?」
『ーーっ⁉︎』
「な"っ…!⁉︎」
轟くんは表情1つ崩す事なく、涼しい顔でハッキリそう言った。
私はもちろん、爆豪くんや切島くんもまさかの反応にみんな目を丸くして口も半開きになっている。
「だからダメだ」
と、轟くんそんなハッキリ…⁉︎
は…恥ずかしい!……けど、
ーー何でちょっと嬉しいとか思ってるの、私…?
「とっ轟…おめー……」
切島くんは声を震わせると、ニカッと尖った歯を見せながら笑う。
「ーー漢らしいじゃねぇかッ!!」
『えっ』
「誤魔化すでもなく、堂々と言い切るその姿!正に漢だぜ!!」
「本当に思った事言っただけだ」
「漢らしいじゃねぇかッ!!」
「もういいわッ!!つか、テメーもちったあ動揺しろクソがッ!!」
まさかの公開告白に顔を赤くしていると、轟くんは気にした様子もなく私に顔を向ける。
「似合ってんな。それ」
『え…?』
「着物。綺麗だ」
『…っ!…あ、ありがとう』
轟くんはいつもサラリと私を褒めてくれる。
それが全くワザとらしくなくて、自然に言ってのけるから凄い。
本来ならお化け屋敷だから不気味な雰囲気を演出するための格好だったのだけど、意図していたのと違う方向に行ってしまった。
…まぁ、悪い気はしないのでよしとしよう。
「名前。この後まだ時間あるか?」
『えっ?う、うん!まだ少し余裕あるよ?』
「なら片付けが終わったら、一緒に回らねぇか?」
『…!、うん、行きたいっ』
まさかの嬉しいお誘いに素直に喜ぶと、轟くんも嬉しそうに目を細めて笑った。
「なら待っててくれ。すぐに終わらす」
『私も手伝うよ!』
「おう。サンキュ」
私も色々観て回りたいと思ってたから嬉しい。
時間まで目一杯楽しもう!