第16話
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ーーこうして私達は空いた時間に着々と作業を続けて行き、見事なまでの立派なお化け屋敷を完成させた。
1ヶ月あった期間はあっという間に流れ、そして迎えた今日ーー…文化祭到来!!
《Good Moorrrnin!》
準備を終えて、クラスのみんなと最後の確認を行っていると、校内放送からマイク先生のハイテンションな声が辺りに響き渡った。
《ヘイガイズ!!準備はここまで、いよいよだ!!!
今日は1日無礼講!!学年学科は忘れてハシャげ!!そんじゃ皆さんご唱和下さい!》
いよいよ始まる開幕の合図に周りのみんながザワつく。始まる瞬間と言うのはいつだって高揚感が高まるモノだ。私は初めて迎える雄英文化祭の瞬間を、今か今かと待ち構えていた。
《雄英文化祭ーーー…開 催!!!》
マイク先生の掛け声と同時に、開幕の花火がパンッ!パンッ!と打ち上がる。その瞬間、雄英全体からワァァ!と活気あふれる歓声が響き渡り、私は文化祭の熱量をヒシヒシと肌で感じていた。
『凄い…これが雄英文化祭っ!』
いつものかしこまった雰囲気の雄英とは違い、今日は雄英全体が鮮やかな彩りで装飾され、校門前にもたくさんの美味しそうな模擬店が立ち並んでいる。
私は初めて迎える文化祭の賑やかな雰囲気に、ワクワクとドキドキが止まらなかった。
学内だけでの開催だったから、どんな感じになるのか不安だったけど、全然盛り上がってる!
みんな気合い入ってるし、色々観て回るの楽しみだな!
『…えっと、確かA組の出し物は10時からだったよね?その後続けてB組の劇があって……あぁ〜これも観たいなぁ…。間に合うかな?』
私のシフト時間は午後からだ。
配られた文化祭のパンフレットを見ながら、自分のシフト時間に間に合う様に頭の中で組み立てていると、ぐるぐる歩きながら考えていたため、ゴツンと誰かの背中にぶつかってしまった。
『あだっ』
「ごめん、大丈夫?ーー…って、何だ苗字か」
ぶつけた鼻先を手でさすっていると、そんな風な言い方をされカチンと頭に来る。
もちろん、それが誰かなんて1人しかいない。
私は怒りを含んだ眼差しで、目の前の人物へと顔を上げた。
『あのねっ…!悪いのは私だけど心操くんだってーー』
言いかけた途中で私は全身が硬直してしまう。
見上げた先に居たのは、赤く血塗られた顔でコチラを見つめる心操くんの姿だった。
『ヒィィッ!⁉︎』
近距離で見てしまい、思わず腰が抜けそうになるのを何とか堪えながら、私は後ろへと勢い良く
『そ、その格好で振り返るのはナシだよ⁉︎ 心臓に悪いっ!』
バクバクする胸を押さえながら心操くんを指差すと、心操くんはムスッとした表情をする。
「お化け役なんだからしょうがないだろ。俺だって好きでこんな格好してるワケじゃない」
『じゃあ何でお化け役になったの?』
「……余ったやつで良いって言ったらこうなった」
『そうなっちゃったんだ…』
不本意なカンジなのかな?
だったら最初からやりたい事すれば良かったのに…。
なんて考えるも口には出さないでいると、心操くんは私の足元から頭のてっぺんまでを、まじまじと見つめる。
「苗字は結局受付役になれたんだっけ?」
『うん、お陰様で。自分から必死に立候補した甲斐があったよ〜』
「……ふぅん。それでその格好か」
今の私の格好は、赤い無地の着物に黄色い帯を巻いたシンプルな姿だった。
お化け屋敷だから雰囲気出すために和装が良いってなって、着物になったのだ。
本当は白装束に頭に三角巾を付けるという案もあったが、丁重にお断りして何とかこの形に落ち着いた。
『……ど、どうかな?似合ってる?』
着物の袖口を指で軽く摘みながら、両腕を広げて見せると、じっと見つめる心操くんと目が合い、何だか少し照れ臭くなって視線を逸らす。
…なんて、心操くんが素直に褒めてくれるワケーーー
「似合ってるよ」
『…えっ…』
まさかの一言にドキリと胸が高鳴ると、何故か心操くんはニヤリと口端を上げる。
「日本人形みたいで良いんじゃない?」
『………それ、褒めてる?』
「褒めてるだろ。この雰囲気にはピッタリだって事だよ」
『…あぁそうですかっ!ありがとうございますッ!』
絶対褒めてない!
ちょっとときめいた私の気持ちを返して欲しいよ!
少し憤慨しながら目に付いた時計にチラリと視線をやれば、時刻はあっという間に9:20分を指していた。
少し早いけど、混む前に良い場所を確保しておこうかな?そんな風に思い、私は心操くんに声をかける。
『私ちょっとA組の出し物観に行って来るよ!』
「…もう行くのか?」
『うん。早めに行って良い場所で観たいから!……心操くんは行かないの?』
「こんな格好で行けって?」
そう言うと、呆れた様にため息を吐かれた。
「遠慮しとく。悪目立ちしたくないし」
『そんな事ないと思うけど…』
「そんな事あるんだ。いいから早く行けば?」
『はいはい。ちゃんと出番までには戻るから!じゃあ、行ってきまーす!…わっ、と…草履なの忘れてた…歩きにくい…!』
私は心操くんに軽く手を振ると、慣れない草履におぼつかない足取りで、A組のステージ発表が行われる体育館へと急いだ。
「……楽しそうだな、アイツ……」