第16話
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人には得手不得手と言う物がありまして。
どんなに努力しても克服できない事もあるワケで、それをやるべきだと強要するのは間違ってる。
「ーー…では多数決の結果、今年のC組の文化祭の出し物は "心霊迷宮" に決定しました」
『…ウソ、でしょ…⁉︎』
ーーだからこれは、大いに間違ってる!!
「よぉし。思ってたより早く決められたな。ウチはコレで決定した事を校長先生に伝えておくから。1ヶ月後の文化祭に向けて、計画的に進めて行くように!」
キーンコーンカーンコーン…。
担任が言い終えるのと同時に昼休みのチャイムが鳴る。
教室から出て行く担任の背中に、"待って!行かないでー!" と心の中で叫ぶが聞こえてるはずもなく……ピシャリと無情にも扉は固く閉ざされた。
あぁ…!
決まってしまった…!
『うぅっ…、こんなの、あんまりだ…っ』
「何してんの」
やり直せない現実に、若干涙目になりながら頭を抱えていると、隣にいる心操くんに不審な目で見つめられる。
『心操くん…っ、私…文化祭、参加したくない…っ』
「は?何でだよ。まさか、怖い物が苦手だからとかバカみたいな理由?」
『いいよバカで!心操くんはそんな事でって思うかもしれないけど、私にとったら苦痛でしかないんだよ…!』
嘆く私の姿を見て、心操くんは呆れた様に目を細める。
「だから、何で怖がらせる側の方が怖がってるんだよ。普通逆だろ」
『そ、それは何て言うか…、もうあのおどろおどろしい雰囲気が苦手なのっ!その空間にいるだけでもうっ…、怖がらせる側とか関係なく!』
「じゃあ中に入らなければいいんじゃないの?受付役とか…何でもあるだろ」
『!』
心操くんの提案に、電流が走った様な衝撃を受けた。
そうか…!直接関わらなくても、間接的に関わる事が出来る!そこのポジションを完全に見落としていた。
『それだっ!!さすが心操くん!解決したよ!』
「ちょっと考えれば分かるだろ」
サラリと毒舌を吐かれるけど、今は軽く流しておく。
それよりも抱えていた悩みが
後で役割を決める時に自分から立候補しよう!
『…でもね、こんな事言っておきながら実は文化祭すごく楽しみなんだよね』
「さっきと言ってる事変わってるけど」
『それはホラ!怖いのが苦手なのに心霊迷宮にするとか言うからだよ!』
それとこれとはまた別の話しなのだ。
別に文化祭そのものが嫌なワケじゃない。
『…だって、初めての雄英文化祭だよ⁉︎ どんな感じになるのか考えるだけでワクワクしない?雄英の事だから、きっと規模の大きいテーマパークみたいになるんだろうなぁ…!』
「子どもみたいにはしゃぐな…」
テンションの高い私とは真逆に、心操くんは低いテンションで呆れたように呟く。
いや、まぁ…これが彼の通常運転なのだけど。
『はしゃぐよ!だって一応まだ子どもだし!……心操くんは楽しみじゃないの?』
「俺はっ…」
単純に気になった疑問をぶつけると、心操くんはまさか聞かれると思わなかったのか、一瞬ビックリしたような顔をして言葉を詰まらせる。
そして少し沈黙した後、フイっと視線を逸らされ、何だか照れ臭そうに言葉を紡いだ。
「……どんな風になるのか、興味はある」
『……それって、楽しみにしてるって事じゃないの?』
「うるさいな…!お前みたいなテンションまでじゃない。それなりにって意味だ」
珍しく必死に弁明する心操くんが可愛いくて、思わず頬が緩んだ。
こういう時、本当に素直じゃないんだから…。
まぁ心操くんらしくていっか。
「…そんな事より、今日も食堂行くんじゃないのか?
いつまでも
心操くんの言葉にハッとして私は慌てて時計を確認する。
今昼休み中だという事をすっかり忘れていた。
時計はちょうどいつも轟くんと食堂で落ち合う時間帯を指していた。
『あ、ヤバっ!ちょっと出遅れちゃった!急がなきゃ…!』
寮生活になってからお金に余裕が出来たので、最近はずっと食堂で一緒にご飯を食べている。
ちなみに心操くんは人混みが嫌いみたいで、いつも購買で昼食を購入してるみたい。
学食美味しいのに、何だかもったいない気もする…。
まぁ…本人に言った所で、俺の勝手だろとか言いそうだから言わないけど。
『じゃあまた後で!』
私は慌てて準備すると、軽く心操くんに手を振ってから轟くんが待つ食堂へと駆け足気味に教室を出て行った。