第2話
お名前は?
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『はぁ…はぁ…っ、ここなら平気かな…?』
「悪ィ… 俺、やらかしたか?」
『え?…いや、大丈夫!ちょっと急でビックリはしたけど。…よく私が普通科だって分かったね?』
「教室順番に見て来た。思いのほか早く見つけられてラッキーだった」
『そ、そうなんだ…それで、私に何か?』
わざわざ教室周ってまで私を探してたんだから、何かよっぽど大事な用事がーー
「学食、一緒に行こうと思って」
『…え?』
が…学食?
それだけのために、わざわざ…?
『私と一緒に…?』
「…少しでも、一緒にいてぇから」
『ーー!』
「ダメか?」
轟くん…。
君って人は、ホントにズルイ人だよ。
そんな言い方されたら、断れない。
「ゆっくりでいいから、俺の事思い出してくれ。俺も名前に好きになってもらえるよう頑張るから」
…あの言葉はやっぱり本当だったんだ。
本気で私のことーー
落としにきてるッ!!!
これが計算か天然なのかはこの際もういい。
私も知りたい。
あなたがどうしてこんなにも私を大切に
思ってくれるのか。
あなたのことを思い出したい!
『ダメじゃないよ。私もちょうど行ってみたいって思ってたから嬉しい』
自然と笑みが溢れた。
そんな私を見て、轟くんも嬉しそうに微笑む。
「良かった。じゃあ早速行こう、奢る」
『えっ!そんな、悪いよ!』
「俺から誘ったんだから、奢らせてくれ」
『そ、それじゃあ…いいかな?』
「あぁ。行こう」
『うん!ありがとう、轟くん!』
嬉しくて微笑みながら轟くんを見ると、何故か複雑そうな顔で私を見ていた。
『…轟くん?どうしたの?』
不思議に思ってそう尋ねると、轟くんは少し言いにくそうに話し始めた。
「……いや、さっきから気になってたんだが…」
『…?』
「何で苗字呼びなんだ?」
『…えっ…』
そっか…!
私、轟くんと初めて会った時、"焦凍くん”って呼んでたよね…?
無意識にそう呼んでた……。
「名前で呼んでいいんだぞ?」
『あっうん、そう…だね…』
名前で呼んでいいと急に言われても、私も思春期であって、男子を名前で呼ぶなんて今までしたことがない。
というか、幼馴染みとはいえ会って間もない男子をいきなり名前で呼ぶなんてそんなの恥ずかしくて無理だ。
迷った末、私は轟くんに頭を下げた。
『やっぱりごめん!まだ名前で呼ぶのは無理…かも…』
「…何でだ?」
無理、という言葉に少し傷つけてしまったかもしれない。轟くんの反応を見るのが怖くて、私は慌てて理由を話した。
『轟くんが嫌いとかそんなんじゃないよ⁉︎ただ……、ちょっと恥ずかしくて…。だから、もう少し慣れたら必ず名前で呼ぶから。だから、それまでもうちょっと待ってて欲しい……』
顔は見れない。
きっと傷付いた顔させてしまってるから。
やっぱり無理してでも呼ぶべきだったかもしれない。
言ってから後悔が押し寄せてくる。
「そんな泣きそうな顔するな」
返って来た言葉は、優しい声色だった。
顔をあげると、穏やかな表情をした轟くんが私を見つめていた。
「別に怒ってねぇよ。名前が呼びやすい呼び方でいいから」
『……えっ…いいの…?』
「言っただろ?ゆっくりでいいから、俺の事思い出してくれって。お前に無理はさせたくねぇから、気にしなくていい」
『……っ』
優しい轟くんの言葉に、胸がじーんと熱くなる。
『…ありがとう』
何て優しい人なんだ…。
轟くんのためにも、名前で呼べるように、1日でも早く記憶を思い出さなきゃ!
そう強く心で念じた。