第15話
お名前は?
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病院に到着すると、私達はすぐに負傷したみんながいる病棟へと急ぐ。
その途中で、リカバリーガールとオールマイトはナイトアイがいるICUへと向かうため、一旦別れる事になった。
「じゃあ、苗字少女は他のみんなを頼んだよ」
『はい!』
「いいかい。絶対に無茶だけはするんじゃないよ」
『…はい。ナイトアイの事、お願いしますっ…!』
「もちろんさね。ただ…治癒は絶対じゃない。私で無理なら、アンタにも相当な負担がかかるって事だ。…バカな事は考えるんじゃないよ?」
『…っ…、分かって…ます。相澤先生と約束したので』
もう、無茶な真似はしないってーー…。
「…それでいい。それじゃ行くよ、オールマイト」
「はい」
リカバリーガールは少し安心した様に頷くと、オールマイトと一緒にICUへと向かう。
私はその背中を見送りながら一抹の不安を感じるも、きっと大丈夫だと何とか自分に言い聞かせ、みんなのいる病棟へと急いだ…。
病棟に着くと、看護師さんに負傷した人がいる病室へと案内された。
私は、はやる気持ちのまま勢い良く扉を開く。
『苗字です!緊急要請で助っ人に来ました!』
「おぉっ!苗字じゃねーか!久しぶりだな!」
『えっ…⁉︎』
扉を開けた先にいたのは、包帯で全身グルグル巻きにされたミイラだった。
…いや、見た目はミイラそのものだけど、その人は私を知ってるみたいで、親しい人に向ける口調で呼びかけられ、思わずギョッとする。
けれど、覆われてない口元から尖った歯が見えた瞬間、すぐに誰だか察しがついた。
『切島くんっ⁉︎』
「おう!こんな見た目になっちまったけど、何とか無事だ!」
『本当によく無事だったね…!待ってね、今治してあげるから!』
「おぉ…!助かるぜ!」
私はすぐ様包帯の上から触れると、"修復" を使う。
まさか切島くんも
こんな状態になるまで必死に戦っていたって事だよね…?
一体どれだけ壮絶な現場だったんだろう…。
改めて、ヒーローになる覚悟を植え付けられる。
「相変わらずスゲェーな苗字の個性は!腕も動くし、体も全然痛くねぇ!」
切島くんは支えていた三角巾から腕を外すと、何の障害もないかの様に軽く腕を振り回す。
その表情は包帯で良く見えないけど、チャームポイントである尖った歯が良く見えるほど口元は大きく開かれ、喜んでくれているのが伝わった。
緊迫していた気持ちが、少しだけ和らぐ。
『ふふっ…。良かった。でも、今日は無理せずゆっくり休んでね』
「そうだな!ありがとな苗字!」
『うんっ、力になれて良かったよ。じゃあ私は他の人達の所に行くね?』
「おぅ!頼む!麗日と梅雨ちゃん、あと緑谷もいるはずだから!」
『そうなんだっ…!分かった!』
やっぱり他のA組のみんなもいるんだ!
何も知らない間、みんな命懸けで戦ってたんだな…。
でも、もう大丈夫!
私がみんなを救けるから!
その後すぐ麗日さんと梅雨ちゃんの元に行き、"修復" を使った。
切島くんの状態を見た後だったから、てっきり麗日さんたちも相当なダメージを負ってるのかと思ってたけど、意外にも見た目には大きな負傷はなく、擦り傷や
「ありがとう名前ちゃん。おかげで助かったわ」
「うん…。凄い楽になったよ。ありがとう」
『良かった。あと緑谷くんもいるって切島くんから聞いたんだけど…』
「緑谷ちゃんなら多分大丈夫じゃないかしら…?病院に運ばれるまでの間、何の処置もされずに自力で動いていたし、目立った外傷はなかったわ」
『そうなんだ…?』
緑谷くんの "個性" って確か超パワーだったよね…?
体育祭で観てた時は "個性" を使う度に手を負傷してたハズだけど…。
そんな風に違和感を感じていると、さっきからどこか元気がなさそうな顔をした麗日さんが、不安気な瞳でコチラを見てるのに気付いた。
『麗日さん…?どうしたの?』
「……あの、ナイトアイの状態って……大丈夫なんかな…?」
『ーー!』
その質問に、私は心臓が締め付けられたような息苦しさを覚えた。
正直、状態を直接見たワケじゃないから何とも言えないのだけど、危険な状態である事は間違いなかった。
何と言うべきか迷ったけど、今は少しでも不安を拭ってあげたくて、私は優しく微笑む。
『…大丈夫。リカバリーガールが治癒で治してくれてるはずだから。今はナイトアイの無事を祈ろう?』
「…そう、やね…」
こんな気休め程度の事しか言えないけど、それでも不安を煽るよりマシだ。
ナイトアイと面識のない私でもこんなに辛いのに、一緒に過ごして来た麗日さん達はより辛いだろう。
でも、1番辛いのはーー…。
『…通形先輩の所、行って来るね』
2人は渋い顔をすると、何と言っていいか分からない様子で私を見た。
正直、私だって通形先輩に何と声をかけたらいいか分からない。でも、悲しんでいる人がいるなら、救けてあげたいって思うから…!
『2人はゆっくり休んでて。また雄英で会おうね…!』
そう言い残して、私は病室を後にした。
しばらく廊下を小走りで進んでいると、前方から何やらトラブルがあったのか、誰かが騒ぎ立てる声が耳に響いた。
「傷口が開きます!安静にしていて下さい!」
「離して下さいッ!行かなくちゃダメなんだッ!」
『あれはっ…⁉︎』
聞き覚えのある声が聞こえ、耳を疑う。
良く目を凝らすと、左足にギプスを着け、腹部や腕に包帯を巻かれた通形先輩が、止めようとする看護師さんを引き摺りながら何処かに向かおうとしている所だった。
『通形先輩ッ!!』
私は声を上げながら先輩の元へと駆け寄る。
そんな私に気付いた様子で、通形先輩は驚きながら振り返った。
「何でっ、君がここに…⁉︎」
『私も緊急要請で病院に呼ばれたんです!傷付いたみんなを救けるために』
「…頼むから止めないでくれ。俺は、サーの元へーー」
『大丈夫。止めませんよ』
「…!!」
私の言葉に驚く先輩を横目に、私は引き止めていた看護師さんに向き直る。
『先輩は私に任せて下さい。何かあったらすぐに私の力で治せるので』
「ほ、本当ですか…?」
『リカバリーガールのお墨付きなので安心して下さい!お願いします……先輩を、ナイトアイの元へ行かせてあげて下さい…っ!』
「名前…ちゃん…」
「…分かりました。リカバリーガールのお墨付きなら任せます。よろしくお願いしますね?」
看護師さんは渋っていたけれど、リカバリーガールの名前を聞いた途端許しをもらった。
さすがリカバリーガール。
信頼と実績…ってやつなのかな。
『行きましょう、先輩!』
「ありがとう…!」
『歩けますか?それとも、今治しますか?』
「いや、大丈夫!すぐに行こう…!」
『了解です!』
私達はナイトアイのいるICUへと急いで向かった。
どんな現実が待ち受けようと、きっと受け止めなきゃならないんだ…。
ーーでも、願うならどうか…無事でいて!!