第15話
お名前は?
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「いやぁー!お見苦しいモノをお見せしてしまって申し訳ない!でも、ギリギリ見えないように努めたんだよね、ちんちーー」
『あのぉ!!あなたは一体どちら様でしょうか⁉︎』
本能的にこれ以上喋らせてはいけない気がして、遮る様に言葉を被せた。
本当に何なのこの人っ⁉︎
「アハハ、かなり警戒させちゃったかな?でも怪しい者じゃないんだよね!」
何をどう考えても怪しいしかないけど、その人は至極明るく笑い飛ばしながら、親指を自分の顔に指してニンマリと笑う。
「初めまして。俺は通形ミリオ!ヒーロー科3年B組だよ」
『先輩っ⁉︎ あ…えと、初めまして!1年C組普通科の
苗字 名前です』
「やっぱり!おかしいと思ったんだよね!」
『はい…?』
まさかのヒーロー科の先輩という事実に驚きつつも自己紹介すると、通形先輩は驚いた表情を見せながら私を指差す。
私は言われた意味が分からず、その指先を見つめながら小首を傾げた。
「君、いつもこの時間にトレーニングしてるよね⁉︎
ココ、3年の寮に近いから俺の部屋から良く見えるんだ。だから気になって様子を見に来たってワケさ!」
『あっ、なるほど…!私の事知って下さってたんですか』
「そっ!だからてっきりヒーロー科の子だと思ってたんだけど、今日行ったA組には居なかったからさ。まさか普通科だったとは驚きだ!」
通形先輩は何だか興味深そうな眼差しを私に向けると、口角を上げて微笑む。
「良かったら、理由を教えてくれないかな?君が毎日鍛えてる理由をさ」
『理由…ですか』
「大丈夫!俺こう見えて結構口堅いよ?言って欲しくない事なら絶対に誰にも言わないから安心して良いんだよね!」
本当にまだ会ったばかりで、先輩の事何も知らないのだけど、その底抜けに明るい佇まいから悪い人ではない気がして、私は正直に話す事にした。
『私…本当はヒーローになりたくてヒーロー科の試験受けたんですけど、落ちちゃったんです。でも、やっぱり諦めきれなくて…』
通形先輩は腕を組み、小刻みに頷きながら私の話に耳を傾けている。
『そしたら、ヒーロー科編入のチャンスを頂いたんです!だから、編入するためにこうやって毎日特訓していて…』
スタートから遅れた私は、みんなよりもっと頑張らないといけないから…!
『だから、少しでもヒーロー科のみんなに追いつきたくて頑張ってるんです……ヒーローは、私の憧れだから…っ!』
「クゥ〜〜!泣かせるねコンチクショー!過去の自分を見てるみたいだよ!」
『えっ…?』
過去の自分…?
通形先輩は目元を片腕で覆い、泣いてる素振りを見せるけど、その口元は嬉しそうに口端を上げていた。
「今ので俺、君の事すごく応援したくなったんだよね!実は俺もかつて学年でビリケツだった。だから、みんなに追いつくためにはこの "個性" を強くする必要があった…」
『 "個性" を強くする…?』
「そう。俺の "個性" はね、あらゆるものをすり抜ける。もちろん、発動中は自分の肺すらも透過するから酸素も取り込めないんだ」
『えっ⁉︎ そうなんですか…』
発動中は呼吸が出来ないって事か…。
うまく扱えないと、確かに中々リスキーな個性だ。
何だか私と少し似てるな…。
『…それじゃあ、通形先輩は努力で強い"個性"にしたって事なんですね?』
「そう言う事!必ずみんなに追いついてやる!その一心で俺は学年トップまで登り詰め、今や雄英のビッグ3と言われるまでになったんだよね!」
……えっ?
ビッグ3…?
噂で聞いたことある。
雄英のトップに君臨する、凄い3人組がいるって…。
ーーまさか…その人が…⁉︎
『えぇっ⁉︎ 通形先輩、ビッグ3の人だったんですか⁉︎』
私の目の前にいるこの陽気な人が、まさかのビッグ3と言う事実に驚きを隠せない。
ビッグ3と言われるからには、もっと風格のある風貌や雰囲気を
通形先輩は少し照れ臭そうに鼻先を人差し指で擦る。
「エッヘン!実はそうなんだよね!ソレもコレも全てはサーによる指導の下、"予測"と"経験"を
『サー…?』
「あっ、サーってのはサー・ナイトアイの事だよ。かつてオールマイトのサイドキックだった人なんだ。今は事務所を立ち上げて、俺はそこで日々
『オールマイトの…⁉︎ そんな凄い人に認めてもらえるなんて凄いですね!』
「有難い事にね!……サーには本当感謝してるんだ。何も出来なかった俺に、全てを教えてくれた人だからね」
過去の思い出を振り返っているのか、通形先輩は目を細めて静かに呟く。
すごく優しい顔だ。
きっと、通形先輩にとってサーって人はかなり特別な存在なんだ。
私がエンデヴァーを尊敬し、憧れているように…。
『…失いたくない、大切な人なんですね』
「そうだね。だからこれからもサーのそばで、今よりもっと成長した俺をみてもらいたいんだよね!」
『じゃあ将来はサイドキック入りですか⁉︎』
「サーの気が変わらなければそうなるね!」
通形先輩はそう言って嬉しそうに微笑んだ。私はその頼もしい笑顔に何だか勇気を貰う。
強い個性だからトップに君臨したワケじゃない。先輩はビリから努力でのし上がった人だから。
…だから、こうした努力は決して無駄じゃないんだと言われたような気がしてーー。
私も通形先輩みたいに、いつかみんなに追いつけるかな…?
『…ありがとうございます、通形先輩!何だかすごく励まされました!これからも頑張ってトレーニングを続けて行きます!』
私の意気込みに、通形先輩は嬉しそうに微笑んだ。
「いえいえ!お礼を言われる様な事なんて何もしてないさ。もし鍛錬を続けて行く上で何か力になれる事があれば、遠慮なく言って欲しいんだよね!」
『えっ!良いんですか⁉︎』
「もちろんっ!困ってる人がいたらお節介やいちゃうのは、ヒーローの基本だろ?」
『ーー!、…ありがとうございます…っ!』
本当に、どこまで優しい人なんだろう。
感動して思わず私は先輩に深く頭を下げた。
第一印象は "何なのこの人⁉︎" だったのに、今はこんなにも頼もしくて、尊敬させられる存在になっている。
発目さんしかり、通形先輩しかり。
人を見た目で判断してはいけないなと、つくづく思った日だった。
まぁ、1人例外を除いて…。