第14話
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ーーという様な事があり、冒頭へと戻るワケだ。
「では、試験の内容を説明する。お前達が居るこの倒壊ゾーンで、今から救助訓練を交えた実地試験を行う」
『救助訓練…?』
あれ?
課題がクリア出来ているか確認するだけじゃないの⁉︎
「お前達に与えた課題は、ヒーロー活動において重要になって来るモノだ。どうせなら個性や技能を使うのも、実際の救助活動を模した形の方が、適性な使い方が出来ているか判断がしやすい」
『で、でも…私達まだ救助訓練を受けた事がないので、上手く出来るかどうか…』
「そこまで難しいものじゃない。このビルの中にいる要救助者を見つけて連れて来れば良い」
相澤先生は私達の目の前にそびえ立つビルを顎で指す。
それに釣られてビルを見上げると、中々の高さがあり、所々壁にヒビが入っていて、今にも崩れるんじゃないかと心配になる見た目だった。
「要救助者って、実際に中に誰かいるんですか?」
「いや、そこはダミー人形を使っている。さすがに本物の人を使って何かあってからじゃ遅いからな」
何かあるって、何ッ⁉︎
やっぱり倒壊する恐れとかあるのかな…⁉︎
それは怖過ぎる…!
青ざめる私を他所に、相澤先生は淡々と言葉を続ける。
「時間は無制限。初めてだからな、大目に見てやる。
…質問がないなら、早速始めるぞ」
私は心操くんに視線を送ると、相澤先生と同じ捕縛布を巻いた心操くんと視線が合う。
口元まで隠れているため、目元しか表情が見えなかったが、その力強い眼差しは"いつでも大丈夫だ" と語っていた。
私は大きく頷く。
『準備、オッケーです!』
「ではーー…試験開始!」
相澤先生の合図と共に、私達はビルの中へと駆け出して行ったーー…。
『うわぁー…中も結構ボロボロだね…』
「気をつけろよ。床も穴が空いてる所があるから、その周囲には近付かない方がいい」
『うん…!』
よく見て歩かないと、本当に崩れてしまいそうだ。私の個性で全てのビルの状態を修復するにはエネルギーをたくさん消費してしまう。
ここだと言う所で使わないと、また体に負担をかけてしまうので、慎重に判断して使わなければならない。
『要救助者、どこにいるのかな…?』
「多分先生の事だから、そんなすぐに見つかる場所には置いてないだろ。まぁけど…取り敢えずは、下から順番に見て回るしかないな」
『そうだね…』
何となく心操くんが指揮を取る形で進んで行き、要救助者がいないか探し回るが中々見つからない。
「ここにもいないな…。苗字、次の階に行こう」
『うん……あ、ここの階段壊れちゃってる』
階を進もうとした所で、上に昇るための階段が途中から失われていた。
ようやく腕の見せ所が来た!
『ここは私が!』
私は崩れて粉々に散らばった階段の破片に触れて、念じる。
『階段を…修復!』
念じた瞬間、まるで崩れた瞬間を逆再生した様にカケラが元の場所へと戻って行く。
そしてパズルのピースが揃ったみたいに、最後の破片がパチリとはまり、見事に階段は元通りになった。
『よし、これで進めるね!』
「…お前、見た目によらず結構すごい個性だよな」
『前半の部分は言わなくてもいいんじゃない⁉︎』
相変わらずの心操くんに少し憤慨しながらも、チラリとライフ・コンパスを確認する。
指針はまだセーフティゾーンだった。まだまだ余裕だ。
「それ、サポートアイテムか?」
心操くんも装着していたコンパスが気になっていたみたいで、私の左手に視線を寄越す。
『うん。これで自分の状態が確認出来るの。凄く助かってるよ』
「良かったな。もう俺が面倒見る心配がないって事だろ?」
『えっ…?ーーあっ!私が体育祭前に倒れた日の事をまだ言ってる⁉︎』
「お前にはアレで貸しがあるからな。返してもらうまでは言い続ける」
『えぇっ⁉︎ ………今のは返した事にならない?』
「なるワケないだろ」
鋭い心操くんのツッコミを受けつつも、その場は取り敢えず収まり、私達は試験を続行するべく更に上へと進んで行く。
今、何階まで来たんだろう…。
ひたすら探しては昇ってを繰り返して、自分でも分からなくなって来た時ーー。
「…見つけた」
『えっ、本当っ⁉︎』
心操くんの言葉に顔を上げると、広いフロアの中央に、瓦礫に埋もれる様にしてダミー人形が配置されているのを発見した。
『やった!早く持って行こう!』
ようやく見つけた人形にはやる気持ちを抑えきれず、
私は一直線に駆け出す。
その周りに地割れが起こっていた事にも気付かずに…。
「ーー待て、苗字ッ!!」
『ーーえっ…?』
後ろで今まで聞いた事がない程の焦った心操くんの声が響き渡り、驚いて振り返ると同時に、ピシッと地面が割れる音が耳奥に響いた。
ーー瞬間、地響きを起こす程の轟音が鳴り響き、私の足元の地面が崩れ落ちる。
『ーーッ!⁉︎』
突然の出来事に声をあげる暇もないまま、私はバランスを崩して、大きく陥没した穴へと吸い込まれて行く。
ーーあ…落ちる。
やけに冷静にそう頭の中で判断した瞬間だった。