はじまりは越野の一言だった。

「おい、仙道！彼女いるのか！？」
「……。は？」

それは、部活の休憩中に響き渡った。部員全員がざわつきはじめ、仙道に彼女がというワードが更新された。主将の魚住が口を開く。

「湘北と練習試合が近いんだぞ！」
「違いますって、魚住さん」

サボり癖があるだけで頭を悩ませているのに、彼女なんて。田岡監督の耳に入ったら大噴火。いや、部活存続の危機かもしれない。
１００歩譲って彼女がいてもいい、だが部活は真剣にしてくれと、部員一同が願うのだった。

「仙道サン。彼女ってどなん人なんですか？」

怖いもの知らずな彦一のリサーチが入る。

「…うーん年上？」

「年上」にドワッと、部員たちがまたざわつきはじめた。
仙道は、そのうち飽きるだろうと適当に流すのだった。


帰り道、仙道は曙の事をふと想った。
店を経営してるから学生じゃないのは確かだ。でも、雰囲気からまだ大人って感じはしない。
高校１年のとき、卒業式で３年生の列に１つ頭が飛び出ている生徒を見つけた思い出があった。その生徒は、自信無さげで少し俯いていた。

もしかして、その人が曙さんだったかな。