壱ノ章
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【時雨視点】
「とりあえず身の回りのものを揃えましょうか」
『あの僕、無一文なんですが…』
「分かっています。お詫びも兼ねて今日は私が払います」
『申し訳ありません、給料が入ったらお返ししますので…!』
「お詫びなので返さなくても結構ですよ。貴方は何を買うか考えていれば良いのです」
そんなこんなで僕は閻魔大王第一補佐官である鬼灯様と街へ繰り出すことになったのである
こちらが裁判で一言も言わなかったせいでこんな面倒ごとに巻き込まれたというのに文句1つ言わない
やはり地獄トップ2と言うからにはこのくらいの懐の大きさも必要なのだろう
今までこの気味の悪い目の色のせいで散々邪険に扱われてきたが、さすがはあの世
鬼だけでなく妖怪といった異形の者達が至る所で生活していた
物珍しそうにキョロキョロとする様はなんとも滑稽だろうが、獄卒の鬼以外で自分よりも不思議な見た目のものを見たことが無いのだからしょうがないだろう
しばらく歩くと目的の店が見えてきた
「家具から選ぼうと思うのですが何か希望はありますか?」
生前はまともな生活を送っていなかったためそんなことを聞かれても困る
『できるだけ安いものを…』
「気にしなくてもいいと言っているのに、貴方結構頑固ですね。では生活に困らない程度のものを買ってくるので少し店内を見ていてください」
なんて出来る上司なんだろう、相当人望があるのだろうなぁ
ここは家具だけでなく雑貨も取り扱っているらしい
生活用品から怪しげな呪具まで様々で、見ていて飽きない
仕事帰りに棄てられた古書を読む生前の唯一の趣味は、給料が入ったらここで新品を買い漁って実行しよう
これからの生活に思いを馳せていると鬼灯様が戻ってきた
「荷物は閻魔殿へ送りましたので安心してください。次は服ですね、付いてきてください」
『は、はい』
勘違いかもしれないがなんだか楽しそうにみえる
堅物そうに見えて意外に世話好きなのかもしれない
今度はさっきの店と違い少し小さめな店構えだ
店内は想像以上の品揃えで、商品がセンスよく並べられており、ほんのりと品のいいお香の香りがする
『素敵なお店ですね』
「ええ、私の服もよく仕立ててもらいます。」
「あら鬼灯様、ご来店ありがとうございます♪そちらは妹さんかしら?」
「彼はうちの従業員です」
「あら!そうなの?私ったらやーねぇ」
終始気さくな話し方をするお姉さんだ、世間話が止まらないが人柄のおかげか嫌な気はしない
「今日は彼の仕事着と私服を仕立てていただきたいのです」
「まぁ!そういう事なら喜んで!なにかご希望は?」
『あまり派手でないものがいいです』
「なるほどね、明日中には仕上げるわ♪送り先は閻魔殿でいいわよね?」
「はい、お願いします」
ようやく無事に買い揃えることが出来たが実はあの後、しばらく採寸と称したこだわりトークで小1時間かかった
すっかり日は傾き、辺りを朱色に染めている
今日1日で色々ありすぎて、ひと段落ついたところでドッと疲れが出てきた
『今日はありがとうございました、付き合っていただいて…』
「いえ、こちらも久々に仕事から離れられていい息抜きになりましたよ。あぁ、それと」
鬼灯様は突然思い出したように懐を漁ると小さな紙袋が出てきた
「たまたま先程の店で見つけてあなたに似合いそうだったので買いました。新卒祝いです」
『開けてもいいですか?』
「どうぞ」
確認を取り、慎重に袋を開けると髪紐が入っていた
一束ずつ微妙に色味が違う赤い糸に落ち着いた品のある金色の糸がアクセントとして織り込まれ、繊細な模様となっていおり、紐の先には紐に合う色の小さな石が通されている
男性でも付けられるような派手すぎない、しかし職人の技が光るとても美しい品だ
素人目にも高価なものだとわかる
『本当に貰ってもいいんですか…?』
「貴方に合うものを選んだつもりでしたが、気に入りませんでしたか?」
『いえ、とても気に入りました…一生、大事にします…!』
「泣いてるんですか?」
『えっ』
鬼灯様の言葉に驚いて頬に手を当てると濡れた感触が
人らしい感情表現はとっくの昔に出来なくなったと思っていたけど案外まだ残っているらしい
『嬉しいんです、自分のために何かしてもらうのは初めてだったので…』
僕はちゃんと笑えているかな
くしゃくしゃで見るに堪えない顔だったら嫌だなぁと人事のように思いながら
『僕、鬼灯様に会えて本当に良かったです』
涙でぼやける視界の奥で、鬼灯様が笑ったように見えたのは気のせいだったのだろうか
「とりあえず身の回りのものを揃えましょうか」
『あの僕、無一文なんですが…』
「分かっています。お詫びも兼ねて今日は私が払います」
『申し訳ありません、給料が入ったらお返ししますので…!』
「お詫びなので返さなくても結構ですよ。貴方は何を買うか考えていれば良いのです」
そんなこんなで僕は閻魔大王第一補佐官である鬼灯様と街へ繰り出すことになったのである
こちらが裁判で一言も言わなかったせいでこんな面倒ごとに巻き込まれたというのに文句1つ言わない
やはり地獄トップ2と言うからにはこのくらいの懐の大きさも必要なのだろう
今までこの気味の悪い目の色のせいで散々邪険に扱われてきたが、さすがはあの世
鬼だけでなく妖怪といった異形の者達が至る所で生活していた
物珍しそうにキョロキョロとする様はなんとも滑稽だろうが、獄卒の鬼以外で自分よりも不思議な見た目のものを見たことが無いのだからしょうがないだろう
しばらく歩くと目的の店が見えてきた
「家具から選ぼうと思うのですが何か希望はありますか?」
生前はまともな生活を送っていなかったためそんなことを聞かれても困る
『できるだけ安いものを…』
「気にしなくてもいいと言っているのに、貴方結構頑固ですね。では生活に困らない程度のものを買ってくるので少し店内を見ていてください」
なんて出来る上司なんだろう、相当人望があるのだろうなぁ
ここは家具だけでなく雑貨も取り扱っているらしい
生活用品から怪しげな呪具まで様々で、見ていて飽きない
仕事帰りに棄てられた古書を読む生前の唯一の趣味は、給料が入ったらここで新品を買い漁って実行しよう
これからの生活に思いを馳せていると鬼灯様が戻ってきた
「荷物は閻魔殿へ送りましたので安心してください。次は服ですね、付いてきてください」
『は、はい』
勘違いかもしれないがなんだか楽しそうにみえる
堅物そうに見えて意外に世話好きなのかもしれない
今度はさっきの店と違い少し小さめな店構えだ
店内は想像以上の品揃えで、商品がセンスよく並べられており、ほんのりと品のいいお香の香りがする
『素敵なお店ですね』
「ええ、私の服もよく仕立ててもらいます。」
「あら鬼灯様、ご来店ありがとうございます♪そちらは妹さんかしら?」
「彼はうちの従業員です」
「あら!そうなの?私ったらやーねぇ」
終始気さくな話し方をするお姉さんだ、世間話が止まらないが人柄のおかげか嫌な気はしない
「今日は彼の仕事着と私服を仕立てていただきたいのです」
「まぁ!そういう事なら喜んで!なにかご希望は?」
『あまり派手でないものがいいです』
「なるほどね、明日中には仕上げるわ♪送り先は閻魔殿でいいわよね?」
「はい、お願いします」
ようやく無事に買い揃えることが出来たが実はあの後、しばらく採寸と称したこだわりトークで小1時間かかった
すっかり日は傾き、辺りを朱色に染めている
今日1日で色々ありすぎて、ひと段落ついたところでドッと疲れが出てきた
『今日はありがとうございました、付き合っていただいて…』
「いえ、こちらも久々に仕事から離れられていい息抜きになりましたよ。あぁ、それと」
鬼灯様は突然思い出したように懐を漁ると小さな紙袋が出てきた
「たまたま先程の店で見つけてあなたに似合いそうだったので買いました。新卒祝いです」
『開けてもいいですか?』
「どうぞ」
確認を取り、慎重に袋を開けると髪紐が入っていた
一束ずつ微妙に色味が違う赤い糸に落ち着いた品のある金色の糸がアクセントとして織り込まれ、繊細な模様となっていおり、紐の先には紐に合う色の小さな石が通されている
男性でも付けられるような派手すぎない、しかし職人の技が光るとても美しい品だ
素人目にも高価なものだとわかる
『本当に貰ってもいいんですか…?』
「貴方に合うものを選んだつもりでしたが、気に入りませんでしたか?」
『いえ、とても気に入りました…一生、大事にします…!』
「泣いてるんですか?」
『えっ』
鬼灯様の言葉に驚いて頬に手を当てると濡れた感触が
人らしい感情表現はとっくの昔に出来なくなったと思っていたけど案外まだ残っているらしい
『嬉しいんです、自分のために何かしてもらうのは初めてだったので…』
僕はちゃんと笑えているかな
くしゃくしゃで見るに堪えない顔だったら嫌だなぁと人事のように思いながら
『僕、鬼灯様に会えて本当に良かったです』
涙でぼやける視界の奥で、鬼灯様が笑ったように見えたのは気のせいだったのだろうか