壱ノ章
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ここは大叫喚地獄、吼々処
恩を仇で返した者、自分を信頼してくれる古くからの友人に対して嘘をついた者が落ちる地獄である
罪深き亡者たちが絶え間なく断末魔を上げる
しかしその中で1人異質なものがいた
どんな拷問を受けても一言も言葉を発さず、常に無表情で、時より生理的に呻くのみ
人間とは思えない真紅の瞳の色は妖しく恐ろしく光っている
獄卒たちは不気味がり、いつしかこの男の元に現れる者は少なくなっていった
そんな気味の悪い亡者の元に1人の足音が近づく
足音の主は閻魔大王第一補佐官、鬼灯である
いつも部下の代わりに拷問をするはずの鬼灯は今日は金棒を振り上げる素振りすら見せない
100年ほど経過したがこんなことは初めてだったため、表情にこそ出さないが亡者は血にまみれた顔を上げ、目を合わせた
「何故、何も言わないのですか」
『…』
何を言っているかわからない、と言わんばかりに亡者は首を傾げる
「100年前の裁判の時、無言の肯定と捉えて判決がなされました。しかし調べてみればあなたは全くの無実…」
鬼灯は頭を抱えてため息をひとつ
亡者は俯いてしまった
「しかしこちらの手違いであったことは変わりありません。申し訳ありませんでした」
『…あの』
「はい。」
鬼灯は初めて聞いた声のか細さに動揺したものの冷静に答える
『僕の生まれについては…』
「いえ、何故かあなたの生まれについては記録が抹消されていました」
『鬼も極楽には行けるのでしょうか』
「そもそも鬼自体、あの世の生き物なので転生はできませんよ。」
その会話を最後に亡者は再び黙り込んでしまった
「さて、無駄話はこれくらいにしましょう。これから閻魔殿に行きます。道中地獄温泉でその血みどろな体を清めてください、着替えはこちらで用意します」
仕事なれしているのかテキパキと次の準備をしていく
結局、閻魔大王に会うまで亡者は真実を言う機会を失ってしまったのである
「君が例の子か!今回は本当にごめんね~」
『あの、閻魔大王様、ひとつよろしいでしょうか』
「うんうん、お詫びと言っちゃ何だけどなんでも聞いて」
閻魔大王は地獄の王らしからぬ朗らかな笑みを浮かべている
『…僕の母は人間ですが、父は地獄から出張に来ていた鬼でした』
「うんうん…って、ええええ!」
「まさか…」
『鬼は転生できない。では半人半鬼はどうなのでしょうか』
亡者は淡々と語るが、当時まだ歴史が浅い地獄では半人半鬼に対しての裁判など異例中の異例であった
「う~ん、参ったなぁ…どうする?鬼灯くん」
「冤罪で100年も閉じこめていた手前もありますから…」
『あのもしそちらがよろしければここで雇っていただけませんか?』
「いえ、こちらとしては一向に構わないのですが…」
亡者からの提案に閻魔と鬼灯はまた目を見開いたが、地獄側からしたら非常に好都合な話だ
彼の処遇も決まる上、獄卒の万年人材不足の改善にもなる
しかし彼にとってはメリットがない話なのも事実
鬼灯が本当にそれでいいのか確認を取ると亡者もとい新獄卒は首を縦に振った
『あの世で暮らすならば働き口は欲しかったので。改めまして時雨と申します。どうぞよろしくお願いします』
時雨は軽く挨拶をすると頭を深々と下げた
「よろしくね時雨くん。なんというか、聞いてた雰囲気と違って逞しい子だね…」
「では時雨さんは閻魔殿内の寮で暮らしてください」
「しばらく鬼灯くんは時雨くんをお世話してあげてね」
「はじめからそのつもりです。では」
食い気味で答えた鬼灯はどこからとも無く大量の書類を取り出し、容赦なく閻魔の机の上に置いた
「閻魔大王、私の分の仕事もよろしくお願いします」
「この冷酷鬼ぃぃぃ!!」
恩を仇で返した者、自分を信頼してくれる古くからの友人に対して嘘をついた者が落ちる地獄である
罪深き亡者たちが絶え間なく断末魔を上げる
しかしその中で1人異質なものがいた
どんな拷問を受けても一言も言葉を発さず、常に無表情で、時より生理的に呻くのみ
人間とは思えない真紅の瞳の色は妖しく恐ろしく光っている
獄卒たちは不気味がり、いつしかこの男の元に現れる者は少なくなっていった
そんな気味の悪い亡者の元に1人の足音が近づく
足音の主は閻魔大王第一補佐官、鬼灯である
いつも部下の代わりに拷問をするはずの鬼灯は今日は金棒を振り上げる素振りすら見せない
100年ほど経過したがこんなことは初めてだったため、表情にこそ出さないが亡者は血にまみれた顔を上げ、目を合わせた
「何故、何も言わないのですか」
『…』
何を言っているかわからない、と言わんばかりに亡者は首を傾げる
「100年前の裁判の時、無言の肯定と捉えて判決がなされました。しかし調べてみればあなたは全くの無実…」
鬼灯は頭を抱えてため息をひとつ
亡者は俯いてしまった
「しかしこちらの手違いであったことは変わりありません。申し訳ありませんでした」
『…あの』
「はい。」
鬼灯は初めて聞いた声のか細さに動揺したものの冷静に答える
『僕の生まれについては…』
「いえ、何故かあなたの生まれについては記録が抹消されていました」
『鬼も極楽には行けるのでしょうか』
「そもそも鬼自体、あの世の生き物なので転生はできませんよ。」
その会話を最後に亡者は再び黙り込んでしまった
「さて、無駄話はこれくらいにしましょう。これから閻魔殿に行きます。道中地獄温泉でその血みどろな体を清めてください、着替えはこちらで用意します」
仕事なれしているのかテキパキと次の準備をしていく
結局、閻魔大王に会うまで亡者は真実を言う機会を失ってしまったのである
「君が例の子か!今回は本当にごめんね~」
『あの、閻魔大王様、ひとつよろしいでしょうか』
「うんうん、お詫びと言っちゃ何だけどなんでも聞いて」
閻魔大王は地獄の王らしからぬ朗らかな笑みを浮かべている
『…僕の母は人間ですが、父は地獄から出張に来ていた鬼でした』
「うんうん…って、ええええ!」
「まさか…」
『鬼は転生できない。では半人半鬼はどうなのでしょうか』
亡者は淡々と語るが、当時まだ歴史が浅い地獄では半人半鬼に対しての裁判など異例中の異例であった
「う~ん、参ったなぁ…どうする?鬼灯くん」
「冤罪で100年も閉じこめていた手前もありますから…」
『あのもしそちらがよろしければここで雇っていただけませんか?』
「いえ、こちらとしては一向に構わないのですが…」
亡者からの提案に閻魔と鬼灯はまた目を見開いたが、地獄側からしたら非常に好都合な話だ
彼の処遇も決まる上、獄卒の万年人材不足の改善にもなる
しかし彼にとってはメリットがない話なのも事実
鬼灯が本当にそれでいいのか確認を取ると亡者もとい新獄卒は首を縦に振った
『あの世で暮らすならば働き口は欲しかったので。改めまして時雨と申します。どうぞよろしくお願いします』
時雨は軽く挨拶をすると頭を深々と下げた
「よろしくね時雨くん。なんというか、聞いてた雰囲気と違って逞しい子だね…」
「では時雨さんは閻魔殿内の寮で暮らしてください」
「しばらく鬼灯くんは時雨くんをお世話してあげてね」
「はじめからそのつもりです。では」
食い気味で答えた鬼灯はどこからとも無く大量の書類を取り出し、容赦なく閻魔の机の上に置いた
「閻魔大王、私の分の仕事もよろしくお願いします」
「この冷酷鬼ぃぃぃ!!」