壱ノ章
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「で?時雨君の上司は部下をこんなになるまでこき使うようなやつだった?」
『全くそんなことはありません…』
「じゃあその隈は何?せっかくの可愛い顔が台無しじゃない」
『仕事は順調です、ただ…最近少し考え事をしていまして』
2人が首を傾げる
なにかおかしなことでも言っただろうか?
「夜眠れないだけならそんなに酷いことにはならないと思いますが…」
「それにこのリストに載ってる漢方、ほとんど疲労回復の効果があるものだよね」
『考え事をしてぼーっとしている時間が勿体なくて、その、ちょっとばかり研究を…』
「寝る間も惜しんでってワーカホリックかアンタ!?」
「はぁ、いったい何にそんなに悩んでるのさ」
『えっと…』
焦る桃太郎さんと困ったような白澤様にここ数日のあらましを話し、終わると2人は唖然とした表情で固まっていた
「くそ!あの朴念仁が!!やっぱり抜け駆けしてやがったか!!」
「時雨様と鬼灯様が未だにただの部下と上司だったことに驚きなんですけど…」
『えっと、話が全く読めないのですが…』
「鈍い!だがそこが可愛いんだチクショー!」
「つまり時雨様は鬼灯様がす…』
桃太郎さんの声を遮るように外から黄色い歓声が聞こえてきた
白澤様の彼女…にしてはやたらと熱量が高い
白澤様も不思議に思ったようで窓の外を覗き込むと、女性が1箇所に集まっている
よく見ると、頭一つ出て見知った顔があった
『鬼灯様…?』
「あいつが来るとミーハータイプの子達が騒ぐから嫌なんだよなぁー」
毎日のように頭を悩ませているが、実際に顔を見たのは久しぶりのように思われる
なんだろう、このモヤモヤした感じ
「相変わらずモテますね…」
「ケッ!あんな無表情のどこがいいんだか!」
いつもの事じゃないか、鬼灯様が人気なのは
女性の獄卒の人達にだって密かに恋心を抱いている人がいる
そんなこと分かっているのに、このつっかえたようなもどかしい感じはどうにも収まらなくて目を背けてしまった
『お代、ここに置いておきますね』
「あ、はい!って…時雨様、お釣り!」
『いつもおまけして頂いているのでお釣りは結構です、では』
「えっ、ちょ…」
「忙しないなぁ」
「何をあんなに急いでいたんでしょう」
「…さぁね〜」
流石に失礼だっただろうか、今度菓子折りでも持って謝りに行かないと
鬼灯様が女性に囲まれているだけであんなに取り乱すなんてやっぱり睡眠不足では正常な判断ができないらしい
鬼灯様には相応しい“女性”が必ずいるはずで、社会的にも祝福されるのは男女のカップルだ
いままでお世話になってきた鬼灯様にできることといったら僕以外を好きになってもらって幸せな家庭を築いてもらうことで
隣にいるべきなのは僕じゃない
でも…
「時雨さん」
『っ…!』
久しぶりに聞く声に驚いて言葉が詰まる
「単刀直入に聞きます。私のことを避けるのは何故ですか」
後ろが振り向けない
声が怒っている訳では無い、むしろ少し悲しそうで
「こちらでも考えたのですが避けられる心当たりがありません。なにかしてしまったのなら謝ります」
『そんな!鬼灯様は悪くありません、悪いのは勝手に悩んでいる僕です…!」
「…あなたをこんなに泣かせる悩みを…私に教えてはくれませんか?」
何を泣いているんだ僕は
止めなくてはと思っても涙は次から次へと溢れて来る
このままでは鬼灯様が困ってしまう
打ち明けてしまってもいいだろうか
迷惑はかけたくない
でもこれでは堂々巡りだ
このまま有耶無耶になるならいっそ…!
『好きに!なって、しまいました…あなたが』
「!」
言ってしまった
「…聞き間違いではないですね?」
『はい、好きです』
一言確認をとると鬼灯様は大きく息を吐き、僕を強く抱きしめた
いきなりで驚いたが僕より大きい身体に包まれるとひどく安心する
「どれだけ待ったと思っているんですか…」
『迷惑に思わないんですか?』
「あたりまえです、愛していますよ時雨」
『僕、男で、女の子みたいに可愛くないです』
「私にとってはあなたより愛らしい人はいません」
『僕なんて、嫉妬深いですよ…』
「私の方が嫉妬深いです。あなたが他の人と楽しそうにしているだけでも気が狂いそうになります」
『僕が隣にいてもいいんですか?』
「ずっと隣にいてください。幸せにします」
すごく満たされた気持ちだ
幸せで仕方がないはずなのに涙は未だに止まらない
僕はしばらくこのままでいたいと幸せの中で目を閉じた
『全くそんなことはありません…』
「じゃあその隈は何?せっかくの可愛い顔が台無しじゃない」
『仕事は順調です、ただ…最近少し考え事をしていまして』
2人が首を傾げる
なにかおかしなことでも言っただろうか?
「夜眠れないだけならそんなに酷いことにはならないと思いますが…」
「それにこのリストに載ってる漢方、ほとんど疲労回復の効果があるものだよね」
『考え事をしてぼーっとしている時間が勿体なくて、その、ちょっとばかり研究を…』
「寝る間も惜しんでってワーカホリックかアンタ!?」
「はぁ、いったい何にそんなに悩んでるのさ」
『えっと…』
焦る桃太郎さんと困ったような白澤様にここ数日のあらましを話し、終わると2人は唖然とした表情で固まっていた
「くそ!あの朴念仁が!!やっぱり抜け駆けしてやがったか!!」
「時雨様と鬼灯様が未だにただの部下と上司だったことに驚きなんですけど…」
『えっと、話が全く読めないのですが…』
「鈍い!だがそこが可愛いんだチクショー!」
「つまり時雨様は鬼灯様がす…』
桃太郎さんの声を遮るように外から黄色い歓声が聞こえてきた
白澤様の彼女…にしてはやたらと熱量が高い
白澤様も不思議に思ったようで窓の外を覗き込むと、女性が1箇所に集まっている
よく見ると、頭一つ出て見知った顔があった
『鬼灯様…?』
「あいつが来るとミーハータイプの子達が騒ぐから嫌なんだよなぁー」
毎日のように頭を悩ませているが、実際に顔を見たのは久しぶりのように思われる
なんだろう、このモヤモヤした感じ
「相変わらずモテますね…」
「ケッ!あんな無表情のどこがいいんだか!」
いつもの事じゃないか、鬼灯様が人気なのは
女性の獄卒の人達にだって密かに恋心を抱いている人がいる
そんなこと分かっているのに、このつっかえたようなもどかしい感じはどうにも収まらなくて目を背けてしまった
『お代、ここに置いておきますね』
「あ、はい!って…時雨様、お釣り!」
『いつもおまけして頂いているのでお釣りは結構です、では』
「えっ、ちょ…」
「忙しないなぁ」
「何をあんなに急いでいたんでしょう」
「…さぁね〜」
流石に失礼だっただろうか、今度菓子折りでも持って謝りに行かないと
鬼灯様が女性に囲まれているだけであんなに取り乱すなんてやっぱり睡眠不足では正常な判断ができないらしい
鬼灯様には相応しい“女性”が必ずいるはずで、社会的にも祝福されるのは男女のカップルだ
いままでお世話になってきた鬼灯様にできることといったら僕以外を好きになってもらって幸せな家庭を築いてもらうことで
隣にいるべきなのは僕じゃない
でも…
「時雨さん」
『っ…!』
久しぶりに聞く声に驚いて言葉が詰まる
「単刀直入に聞きます。私のことを避けるのは何故ですか」
後ろが振り向けない
声が怒っている訳では無い、むしろ少し悲しそうで
「こちらでも考えたのですが避けられる心当たりがありません。なにかしてしまったのなら謝ります」
『そんな!鬼灯様は悪くありません、悪いのは勝手に悩んでいる僕です…!」
「…あなたをこんなに泣かせる悩みを…私に教えてはくれませんか?」
何を泣いているんだ僕は
止めなくてはと思っても涙は次から次へと溢れて来る
このままでは鬼灯様が困ってしまう
打ち明けてしまってもいいだろうか
迷惑はかけたくない
でもこれでは堂々巡りだ
このまま有耶無耶になるならいっそ…!
『好きに!なって、しまいました…あなたが』
「!」
言ってしまった
「…聞き間違いではないですね?」
『はい、好きです』
一言確認をとると鬼灯様は大きく息を吐き、僕を強く抱きしめた
いきなりで驚いたが僕より大きい身体に包まれるとひどく安心する
「どれだけ待ったと思っているんですか…」
『迷惑に思わないんですか?』
「あたりまえです、愛していますよ時雨」
『僕、男で、女の子みたいに可愛くないです』
「私にとってはあなたより愛らしい人はいません」
『僕なんて、嫉妬深いですよ…』
「私の方が嫉妬深いです。あなたが他の人と楽しそうにしているだけでも気が狂いそうになります」
『僕が隣にいてもいいんですか?』
「ずっと隣にいてください。幸せにします」
すごく満たされた気持ちだ
幸せで仕方がないはずなのに涙は未だに止まらない
僕はしばらくこのままでいたいと幸せの中で目を閉じた
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