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第5章 青嵐吹く夏

外の暑さから逃れる為に、近くのファーストフードに入った。
2階にある座席から見る外からは、まだまだ見るだけで暑さが伝わってくるようだった。

地元に帰って落ち着いた後、雪音はいつものように彼氏である翔太と会っていた。
他愛のない話をしていると、突然机の机の上に置いてあるスマホが震えた。

「あ、香緒里からだ。」
「今日、秀人のところにいったんだよね?なんて?」
「ちょっと待ってね。」

メッセージアプリを開くと、『仲直り出来ました。』と一言だけ来ていた。
香緒里らしいな、と思い笑みを浮かべると、続けざまにもう一度、ポコンと着信が来た。
『心配掛けて、本当にごめんね。たくさん話聞いてくれてありがとう。』

「仲直り、無事に出来たみたい。」
「そっか、それは良かった!」

雪音の言葉に翔太もホッとしたように微笑んだ。

「一時はどうなることかと思ったけど………なんとかおさまって良かったわ。」
「……あのさ、真と香緒里が付き合うって可能性ってあったと思う?」

突然の翔太の話に雪音は目を開き、首を傾げた。

「どういうこと?」
「あ、いや、今回のことでというわけではなくさ。中学の時………例えば、秀人の気持ちを知らなかったら。例えば、沙世が真のことを好きじゃなかったら。という話。」
「うーん。」
「俺はさ、秀人はヤキモチを妬かないもんだと思ってた。でも、この間亮に『嫉妬なんじゃないか』って言われて考えたんだ。完璧超人の秀人も人間なんだから当然嫉妬してもおかしくないよなって。」
「言われてみると、確かにそうよね。」
「香緒里と真って似たところあるじゃん、家庭環境とか、性格的にも。だから不安に思ったのかな、て。俺の想像だけど。」

ふむ、と雪音は口元に手をやり考える。
そして少しして話し出した。

「たらればの話ではあるけどね。それでも香緒里は秀人のことを好きになったんじゃないかと私は思うよ。」
「そうなの?」
「似てるからとか正反対だとか、そういう意味で香緒里は秀人に惹かれたわけじゃないと思う。あくまで私の勘だけど。」
「勘ですか。」
「うん、大親友の勘。」

ふふふっと雪音は笑う。

「大親友、ねぇ。妬けるなぁ。」
「あら?香緒里にも妬いてくれるの?」
「そりゃ、まぁちょっとはね。仕方ないとはいえ、雪音は最近香緒里のことばっかりだったし。」
「大丈夫、一番は翔太よ?」

沙世がそばに居たら、『バカップル爆発しろ!』と言いそうな会話を和やかに二人はする。
だがその様子は傍からみても幸せそうではある。
現に、微笑む雪音を見て、脇を通った男性が思わず振り返ったくらいだ。

「何にしろ、ようやく落ち着いて良かった。」
「そうねぇ、二学期は平和に過ごせるといいんだけど…………そう上手くはいくかしらねぇ。」
「なんだかんだあれこれあること多いからな。」

夏休みももう残すところあと2週間ばかり。
香緒里も秀人もようやく穏やかに過ごせるのだろうと雪音は思い、目を細める。

さぁ、秋には何が起きるだろう?
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