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第4章 春の風薫る

「やっぱり大きいわねぇ、改めて見ると。」


『 緑ヶ丘学園高校』と書かれた門の前に立つ、真新しい制服を着た少女が校舎を見上げて言う。綺麗にショートカットされた髪は陽に当たり、茶色に見える。


「まぁな。特に寮は数年前に増築されたから、でかいと思うぞ。ここからは見えないけど。」


隣に立つ、少女より背の低い黒髪の少年が淡々とした口調で言う。


「さっすが亮、詳しいなぁ。」


その少年を亮、と呼んだ少年は亮に顔も背丈もよく似ている。違うのは黒髪の亮より少し髪の色素が薄いところと、やんちゃそうなその表情くらいだろうか。


「この学校、かわいい女の子多いなー!俺もここ選んでよかった!」
「出たよ圭の女たらしー。」
「女にしか興味ねぇのかよ。」


先の二人の少年と同じく顔がそっくりで、髪の色素が薄く、二人とは違い背の高い圭呼ばれた少年が周りを見回しながらにこやかに言う。
それに対して、亮と女の子、奈津が冷めた表情で圭を見た。


「奈津も亮も冷たいなーー男はみんなかわいい子が好きなもんだろ??なぁ悠?」
「は?俺??興味ないけど……バスケしてた方が面白くね??」
「お子様の悠にはわからない話だったか。」
「なんだと!?」
「あーうるせーうるせー。」


からかうように言った圭に対し、悠はムキになり、亮は呆れた顔をする。三者三様である。
奈津はそれを見て、くすくす笑いつつ、再度校舎を見上げる。


どんな人に出会えるだろう、どんなことがあるだろう。わくわくする。
新しく始まる生活を考え、早る気持ちを抑えつつ、三人に声を掛ける。


「そろそろ行こ、入学式始まっちゃうよ。」


三人も奈津を見、素直に返事をし、揃って校舎に足を踏み入れた。
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