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第3章 恋と謎

『次代生徒会長は、二年一組の新谷秀人君となりました………!!!』


つい先日、11月半ばに生徒会選挙が行われた。
香緒里の友人である新谷秀人は自ら進んで立候補をし、そのカリスマ性を生かし圧倒的な投票数で見事当選を果たした。
のだが。
『お前らも一緒にやるだろ??』
立候補の後、香緒里はもちろん、同じく友人の安西雪音、石川翔太、谷中沙世、沢田真をも生徒会役員に推薦をした。
有無を言わさない笑顔と、クラスメイトの後押しで渋々承諾した4人であったが、あれよあれよという間に当日票が集まり、結局、一緒に当選することになってしまった……

『なんでこーなっちゃったのぉぉぉ』

と、当選当日の教室に沙世の声が響いたと言う。







「なんだろうな、理由。」
二宮千佳の上履きがなくなった日の放課後の生徒会室。
秀人は顎に手を当て首を捻っていた。
「いじめってことは、なさそうだけどねぇ。こないだのでみんな懲りてるだろうし。」
沙世は自嘲気味に笑う。
「でもだとしたらなんだろうね??」
「誰かが間違えた、とかならいいんだけれど………」
雪音と翔太も眉を寄せる。
クラスでも呼び掛けるも誰も心当たりもなく、休み時間等で探したが結局見つかることはなかった。
「1回なくなったくらいじゃ、なんとも言えねーよな。」
真はそう言いつつ目の前の書類を手に取る。

「てかそんなことよりも、なんでこんなに書類いっぱいなのよー!!」
机の上に散らばる書類を恨みがましげに見ながら沙世は不満そうに頬を膨らませる。
「しょうがないじゃない、二学期の終わりに生徒総会があるんだから。」
「私企画なのに!?」
「いや企画だからこそだろ??」
「恨む!絶対秀人のこと恨んでやる!!」
わーんっと机に突っ伏した沙世のことを推薦した当の本人の秀人は笑って見ている。
香緒里と真は副会長、雪音は書記、翔太は会計、沙世は企画にそれぞれ就任している。
大まかに仕事は各役職によって分かれてはいるが、大体の作業は全員でやることになっている。

「先輩達のクラス、なんかあったんですかー??」
同じく生徒会役員である、一年の柳田葵が尋ねる。
一年生は、企画の柳田葵、書記の水谷透、会計の千葉聡の3人である。
「そーそー。なんかクラスの子の上履きがなくなっちゃったのよー」
後輩の前で駄々をこねていた沙世は声を掛けられその存在を思い出したのか、ガバッと起き上がり、何食わぬ顔でそう答えた。
「1年でもありましたよ、上履きなくなるの。確か透のクラスじゃなかったか??」
千葉はそう言った後、隣に座る水谷に問いかける。
「あーあったな。1週間くらい前だっけな?クラスの女子の上履きがなくなったんですよ。」
「まじか、じゃあ2回目ってことになるな?」
一年のその上履きが紛失した子の部活や特徴を秀人は聞いていくが、結局これといった共通点や原因となるものは見つからず。生徒会担当の先生が訪室してきたとこもあり、その日は作業に集中することとなった。

このまま何も起こらなければいいんだけど………という香緒里の思いは、早くも翌日に砕かれた。




翌日、一年生の下駄箱から一足、二年の別のクラスの下駄箱から一足、上履きがなくなった。
二日連続の紛失とあって、さすがに生徒だけでなく先生達も不審に思ったようで、各クラスホームルームの時に注意喚起された。
生徒総会が近く、本日も生徒会室で仕事をしている香緒里達の間でも、当然その話が持ち上がった。

「気味悪いわねー…」
「事件ですかねっ!?」
「おい柳田、なんでそんな嬉しそうなんだよ…!」
少しうきうきした調子で言う葵に、水谷がツッコミを入れる。
だってー推理小説好きだから!と理由になってるようななってないような答えをする葵に、一年生2人は呆れた表情になる。

「まぁとはいえ、実際何かありそうよねー」
「俺もそう思う。同一犯じゃないか?」
雪音が言い、真が頷く。
香緒里自身も、同じ人が盗んでいるのだろうとは思っているが、その誰かが全く思い至らない。
「男かなぁ…………ほら、上履きなくなってるのってみんな女の子じゃない??なんかそういう趣味の人がやってるとか………」
「やだ、沙世、それちょっと怖い……」
「いやでもさ雪ちゃん、あるじゃんよくそういうの。好きな子の体操服盗んだりとか。」
「確かにそういう話はあるけど……」
「でも今回は複数の人からだから、好きな人ってことはなさそうですよね?」
「んじゃあやっぱりそーいう趣味のやつってことか?」

あーでもないこーでもないと論議を交わす香緒里達を見ていた秀人は突然パンッと手を叩いた。
「よし、んじゃーやってみるか。」
「やってみるって………何を?」
全員でポカンと秀人を見ると、ニコッと黒いようないい笑顔を向けられた。

「んー?張り込み!」
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