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桜海祭実行委員会!


「あ〜行きたいけど行きたくな〜い…」
新歓の日。
五限までの授業を終えた私と綾子は友里恵と落ち合って、特別棟に向かっていた。
「何その矛盾したセリフ。」
相変わらずクールな調子で綾子は私を見た。
「だってさ〜新歓には、行きたいよ?すごくね。彰先輩や慧先輩に会えるんだし。でも……わざわざ櫻井幸也のいるところに行きたくない!」
「そんなに幸也君のこと嫌なの?」
「だっていちいち腹が立つんだもん!」
私が口を尖らせると、綾子は呆れた顔をした。
「私に言わせれば、どっちもどっちな気がするけどね。華音も結構幸也につっかかってるとこあるし。」
「別にそんなことないわよ!」
私がぶーたれ、友里恵と綾子がなだめ、苦笑いをしながら歩いていると、特別棟の前に着いた。
「あっ!華音ちゃん達!来た来た。」
彰先輩が私達に気がついて笑顔で手を振った。
ああやっぱり彰先輩の笑顔を見るだけて元気になれる…!
目が癒やされた私は途端に元気になって先輩に近づく。
「こんにちは!もう全員来ちゃいましたか?」
「いや、まだ二、三年の何人かが来てないよ。」
「二、三年生って何人いるんですか?」
友里恵が聞くと彰先輩は一瞬思い出すように目線を上にあげ、そして戻した。
「二年生が15人、三年生が12人だったと思うよ。」
「思うって…適当ですね…。」
綾子がそう言うと彰先輩は苦笑した。
「来る人はよく来るんだけど、来ない人は全然来ないからね。でも多分、今日は全員揃うんじゃないかな。」
「そんなもんなんですか?」
「あはは、学園祭終わったらとりあえず暇だからね、僕達は。その後はまぁなんとなく来年の学園祭のこと話しあったりするくらいだから。」
そうこうしているうちに、全員が集まったのか、慧先輩が彰先輩に近づいてきた。
「彰、全員来た。行くだろ?」
「そうだね。よ〜し、みんな移動するよー!僕達に着いて来てね。」
にっこり笑って彰先輩はみんなに呼びかけ、先頭をきって歩いて行く。
一クラス分くらいの人数でぞろぞろ歩く様はちょっと一目を引くのでは、と思ったけど、大学のサークルじゃ当たり前みたいで、道を歩いててもあまりそれを気にする人はいない。
まぁ、すれ違う女の人はみんな彰先輩達を見てたけど。


大学の最寄り駅付近にある居酒屋に、私達は入った。和風な内装で、店内の棚には盆栽があり、壁には墨絵が掛かっていた。
案内された座敷に着くと、彰先輩はバッグの中から二つ、袋を取り出した。
「席はくじ引きだよ。一年生はこっち引いて、二、三年はこっちの袋から引いてね。」
そう言って、袋を差し出され、私達は順番に引いていく。
「えーと、それじゃ、引いた番号の席に着いてね。席のところには番号書いた紙が置いてあるから。」
私は、と手元の四つ織りにされている紙を広げると2番、と書いてある。
「綾子と友里恵、何番?」
「22番。」
「私は31番だよ〜。」
うわ、二人とかなり遠い……大丈夫かな、私。いや、人見知りはしない方だからいいんだけど。
二番、と書かれた紙の置かれた席はその部屋の一番角の方。
そこに行き、先に私の目の前に座っていた人物を見て、私は声を上げた。
「なんであんたがここの席なのよ!」
「それはこっちのセリフだ!」
櫻井幸也は不機嫌そうにそう返した。
信じらんない…せっかくの楽しい新歓だっていうのにこいつが目の前にいるなんて…!
「まぁまぁ華音ちゃんも幸也も落ち着いて。」
「彰先輩!」
そう言って彰先輩は櫻井幸也の隣に腰を降ろした。
「彰さん…席、ここなんスか!」
「うん、3番だよ。なるべく一年生の間には二、三年が入るようにしてあるんだ。」
腹立つのが半分、嬉しいのが半分だな…これは。彰先輩が近くにいるのは非常に嬉しい…けど。
はぁ、と私は小さく溜め息をついた。
「あーきら先輩!早速一年生と絡んでるんですか?」
元気のいい、女の先輩が私の隣に座ってきた。
「沙織ちゃん、4番?」
「そーですよ〜。あ、私、笹沼沙織!二年の副代表やってます♪」
微笑んで、気さくに話しかけてきてくれた先輩に私も自然と笑みがこぼれる。
「あ、私、島村華音です。」
「華音ちゃんか〜かわいい名前だねぇ。そっちのイケメン君は?」
「櫻井幸也です。よろしくお願いします。」
ぺこりと頭を下げて言う。
何よ、先輩には礼儀正しいんじゃない!嫌な奴ね!ほんとに!
「よし、みんな席に着いたね?自己紹介はもう少ししてからするとして…とりあえず、乾杯しようか?」
ヒューっと、いくつかの口笛が鳴らされる。
「新しく入ってきてくれた、一年生のみんな。これからよろしくね。二、三年生はどんどん一年生に絡んであげてね。それじゃあ……カンパーイ!」
「「カンパーイ!」」
部屋の至るところからコップが掲げられる。
私のコップの中身は一応、一年生だからってことで烏龍茶。
「華音ちゃんって、どこ住んでるの?」
「埼玉県の○○市です。」
沙織先輩は私のお皿にサラダを取り分けながら、聞いてきた。
「あれ?幸也も埼玉だよね?」
彰先輩に聞かれ、櫻井幸也は頷いた。
「○○市の隣の××市です。」
「へー、じゃあ二人とも方向同じなんだ〜。え、行き帰りとか会ったりしないの?」
「「しません。」」
即答で、しかも同時に答える。
「ちょっとハモんないでよ!」
「はぁ!?知るかよ!お前がハモってきたんだろ!?」
睨み合う私達の前に、スッと手が伸びてきた。
「ダメだよ二人とも。せっかくの新歓なんだから、ね?」
にっこりとやはり魅力的に彰先輩は微笑む。
ま、確かにそうだね…ここで櫻井幸也に苛立っても仕方ない。
彰先輩もいることだし。
「沙織先輩はどこから通ってるんですか?」
「ん〜?神奈川の方だよ。彰先輩は都内でしたっけ?」
「うん、そうそう。あと、幸也とは高校も一緒。」
「え!?そうなんですか!?」
「緑川高校ってとこ、知ってる?」
「知ってますよ!私の学校の姉妹校ですもん!」
そう、私は緑川女子高校出身。で、緑川高校は男子校だ。
こんなイケメンの方が姉妹校にいたなんて知らなかった…あー先輩は東京だから、私と路線が逆方向なのか…。
しばらくわいわいやったあと、定番の自己紹介。
ぶっちゃけ、先輩の名前とか聞いてもすぐ覚えられない。だからとりあえず、この前会った一年生の顔と名前を一致させようと頑張った。

そう心の中で思いつつも、同じ1年生だということはわかるけど、名前と顔が全く一致しない。これ実行委員全員覚えるのに何ヶ月かかってしまうんだろうか……。
逆に、趣味が筋トレという若干ナルシストっぽい人や、将来陶芸家になりたいと言っている人など、個性的な先輩の方が同期より早く覚えられそう。
見た目が派手めな人、控えめな人、趣味が変わってる人、喋り方が独特な人とか、本当に色んな人がいた。仲良くなれるのかな、という不安もあるけど、それ以上に少し私はわくわくしていた。
そう、わくわくしていたんだけど…………
「大丈夫大丈夫ーー俺らも1年の頃から飲んでたからさ!」
「そうそう、カクテルとかなら美味しいからさー飲んでみようよー」
なぜ絡まれてるの!!??
自己紹介が終わり、みんなが席移動をして色んな人とコミュニケーションを取っている中、なんとなく移動するタイミングを逃してしまった私の元に、男の先輩二人がやってきた。ところまではよかったんだけど。
既に半分出来上がってるのか、やたらお酒を勧めてくる。
これアルハラ(アルコールハラスメント)てやつじゃないの!!??
頼みの綱の彰先輩は既にどこか他の席に行ってしまい、いない。
目の前にはまるでジュースのような色をしたお酒、カシスオレンジ。お酒なんて、父のビールの泡を舐めたことあるくらい。無理無理!!
いやぁ、まだお酒はちょっと……と愛想笑いをしている私の目の前のお酒のコップに、横から手が伸びた。
「これ、俺飲んでいいですか?」
先輩方が、うんと頷く前に、コップを手に取った櫻井幸也が一気に飲み干した。
「おおおお!!??」
「いい飲みっぷりだなお前!」
「飲めるやつか!」
えーと、これは、助けてくれた……の???事態をまだ把握出来ずにあちらこちらを見てしまう。
「飲めるやつか、じゃないだろおまえ達……」
ふと顔を上げると、彰先輩が戻っていた。割と先程からお酒を色んなところで飲んでるように見えたけど、全然酔っている様子はない。
「未成年にお酒を強要したらダメでしょ。大体おまえらも今年20歳になるんだろ??もう少し自重しといてよ。飲酒問題は勘弁だからな??」
「「……すみません!!」」
にっこり、と擬音が付きそうな笑みを浮かべて言う彰先輩に、二人はやっべ、という顔をして頭を下げた。
彰先輩つよい。
「まぁそれにしても、女の子のために代わりに飲んであげちゃうなんて優しいな、幸也は。」
「……こいつが酔っ払って、同じ帰り道の俺が面倒見るってなったら、くそめんどくさいんで、飲んだだけすよ。」
ハッとこちらを見て鼻で笑った櫻井幸也に、先程まで、ちょっと感謝をして、なんだいいやつじゃんとか思ってた思いが一気にどこか行った。
「はぁぁぁ!!??女の子に向かってくそめんどくさいとかひどくない!!??大体あんたの世話なんていらないし!!!ぜっったい感謝なんてしてやんない!!!このハゲ!」
「声かでかいんだよアホ女!!大体お前に1ミリも感謝されなくていい!!」
睨み合った後、私達は顔を逸らす。あー腹立つ腹立つこの男!!!!
「なに??これは仲が悪いの?良いの?」
「「良くないです!!」」
お酒を勧めてきた先輩の言葉に思わずハモる。
「「真似すんな!!」」
またしてもハモる。彰先輩含む周りは大爆笑。こっちは面白くないんだったらーーー!!!
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