狼使いと黒獣使い(文スト)
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ポートマフィアの最年少幹部太宰治。
貧民街でも噂されるほどの人物だ。
冷酷で人殺しも躊躇しない自殺好き。
その人と出会ったのは貧民街だった。
私は龍と銀ちゃんと貧民街でとても良いとは言えない暮らしをしていた。
そこに突然その人が来たのだ。
「君が芥川龍之介君だね?」
「.......」
「だんまりかい?まあいいけど」
「何をしに来た」
「勧誘だよ。ポートマフィアは君を歓迎する」
その人は癖のある髪に鷲色の目、全身包帯だらけで服装は真っ黒、纏うオーラまで真っ黒で。
今まで怖い大人とたくさんあったけど、この人の纏う黒いオーラは全くの別物で、本当の恐怖を覚えた。
だが、なんとか踏みとどまり目の前の男を睨んだ。
「貴方は誰?」
「言ったでしょ?ポートマフィアだ。君は資料には乗っていなかったが、異能力者かい?」
「.........」
「二人には手を出すな」
そう言って龍が私たちを庇うように前に出た。
男は三人に睨まれながらも平然と、作り物のような笑顔を貼り付け、言ってきた。
「う~ん、君が素直についてきてくれるなら手は出さないよ」
「本当に手を出さないんだな?」
「うん」
龍は一瞬迷ったのか少し悩む素振りを見せ、返事をした。
「.......分かった」
「龍!ダメ!」
「凛.......大丈夫だ。銀を頼む。銀、凛を頼む」
「(コクッ)」
私は慌てて歩いていこうとした龍を追おうとしたが、銀ちゃんに捕まってしまった。
龍が離れていく。銀ちゃんに体を抑え込まれ、私は足掻くことしか出来なかった。
―いやだ、行かないで!龍まで私を置いて行くの?いやだよ!―
「置いてかないで!!!」
そこで私は意識を手放したのだった。
◆-------------------◆
何も覚えていなかった。
起きたら知らない場所で、見たことも無い立派なベットと呼ばれる物の上に寝ていた。
―どうしてこんなところに居るんだろう?―
記憶を辿ってみて、ポートマフィアの人が龍を勧誘しに来て、龍が私から離れて行こうとしたところまで思い出した。
あぁ。また暴走したんだ。
ようやく理解できた。
私の異能力の暴走。
私はまだ異能力の制御が出来ていなかった。
私の異能力は狼の群れを従えることが出来る能力だ。
きっと暴走して狼の群れ出してしまったのだろう。
そう考えていると、扉が開く音がした。
服の衣擦れの音と、コツコツという靴の音が少しずつ私のいるベットに近付いてきているのが分かった。
そして、
「凛」
「りゅ、う?」
龍だった。その声と呼び方で分かった。
「大丈夫か?」
「うん。ここは、どこ?」
「ここはポートマフィアの中だ」
「ポートマフィア......」
「あぁ。お前は異能が暴走してほぼ一日寝ていた。今は夜だ。その間に僕 等は正式にポートマフィアに入ることになった。すまない。僕に力がないばかりに。拒否すれば殺されていたのだ」
「いいよ。龍と離れるくらいならこんなのどうってことない。ねぇ、もう私から離れようとしないで。置いてかないで」
「あぁ。もう置いて行ったりしない」
そう言って龍は私を抱きしめてくれた。
置いて行かれるのはもう懲り懲りだ。
そうしていると、また誰かが入ってきた。
ゆったりした足取りで来たのは、龍を勧誘しに来た人だった。
「起きたんだね。良かった。ポートマフィアへようこそ。私は太宰治。よろしくね。凛ちゃん」
「凛って呼ばないで。私の名前は結城凛音。よろしくお願いします。太宰さん」
「あぁ、ごめんね。凛音ちゃん。よろしく」
凛と呼ぶのを許しているのは龍を銀ちゃんだけだ。
それを理解したのか太宰さんはすぐに呼び方を直してくれた。
今思ったが案外優しい人なのかもしれない。纏うオーラは真っ黒だけど。
そしてふと思ったことを口にした。
「銀ちゃんは?」
「今は寝ている。大丈夫だよ。さて、凛音ちゃん。早速だけど首領に会って欲しいんだ。ついて来たまえ」
「龍は?」
「芥川君はもう挨拶は済ませたから来なくていいのだよ。さぁ、行こう」
太宰さんがそう言って歩き出した。
私は慌ててそれについていった。
それからエレベータに乗り、最上階に向かった。首領執務室はそこにあるそうだ。
首領と言うのだからかなりいいところではあるのだろう。
警備も厳重だ。
礼儀作法はそれなりになってはいると思うが、注意しなければと気を引き締めた。
廊下を歩いて突き当りの一際大きな扉を太宰さんはノックした。
中からは何も聞こえなかったため、いないんじゃないかと不安になったが、太宰さんはいきなりその扉を開けた。
「え.......」
「首領。連れて来たよ。ほら入って」
「は、はい」
少し戸惑ったが促されるまま中に入った。
するとそこには信じがたい光景が広がっていた。
「エリスちゃぁぁぁぁぁん!このドレス可愛いでしょう?着てみてよぉぉぉぉぉ!」
「いやよ!リンタロウキモイ!」
正直やばいと思った。これが本当にヨコハマの夜を支配するポートマフィアの首領なのかと疑ってしまった。
不可抗力だ。私は心の中で言い訳をした。
「森さ~ん。いい加減にしてよ~」
「あぁ、太宰君。その子が例の?」
太宰さんの声でようやく気づいたのか、森さんと呼ばれた人は、さっきまで鼻の下を伸ばして幼女を追いかけていたのが嘘みたいな笑みを作った。
「そう。凛音ちゃん、このロリコンがうちの首領。自己紹介して」
「ゆ、結城凛音です。これからよろしくお願いします」
「うん、よろしく。私は森鴎外。紹介にあったようにここの首領をしている。さて、まず年と異能力について話せるかい?」
急に空気が甘ったるいものから鋭いものに変わり、緊張しながらも私は首領の言葉に答えた。
「はい。年は十五、異能力は狼ノ咆哮。狼の群れを従えることが出来ます。今はまだ制御が出来ていません」
「ありがとう。異能力の制御については太宰君に教わりなさい」
「はい」
そうして話していると扉がノックされた。
反射的に扉の方を振り向いた。
そして首領が返事をしたのを合図に入ってきたのは、和装でとても綺麗な女性だった。
「呼んだかえ?鴎外殿」
「あぁ、来てくれてありがとう紅葉君。凛音ちゃん、尾崎紅葉君だ。紅葉君、新しく入った結城凛音ちゃんだ。この子の世話係をお願いしたいんだが、いいかね?」
「おぉ、可愛らしい子じゃのお。この子の世話係、引き受けよう。改めて、私 は五大幹部が一人。尾崎紅葉じゃ。よろしくの凜音や」
「よろしくお願します。尾崎さん」
「姐さんでよい。私のことはみなそう呼んでおる」
「分かりました。姐さん」
五大幹部ということに驚きながらも、しっかりと挨拶をした。
口調が昔の人が使うような言葉で、不思議な人だと思った。
「今日はもう帰ってもいいよ。住む場所については芥川君達と同じ部屋になるよ。太宰君に案内してもらいなさい」
「ありがとうございます」
首領にそう言われ、私と太宰さんは、姐さんを残し部屋を出て行った。
首領の第一印象はよく分からない人。
笑みを浮かべているが、何を考えているのか、本当の笑みなのか分からない。
そしてロリコン。しかも重症。
太宰さんが言うには十二歳以下が守備範囲だそうだ。
首領の守備範囲から外れてて良かったと安堵しつつ、合流した龍と銀ちゃんと共に私達は、これから住む場所へと案内された。
------
尾崎side
鴎外殿に呼ばれて来てみれば、新しく入った結城凜音という可愛い女子の世話係を任された。
ただ......結城という名前には聞き覚えがあった。
「鴎外殿。結城というのは......」
「うん。ウチと敵対して壊滅した組織の子だ」
かなりの大手で、殲滅に苦戦した組織。
そこの頭領の名は結城俊和 だった。
かなり強力な異能力者だったため良く覚えている。
「良かったのかえ?」
「あぁ。あの子は自分の父親の事を知らない。あの頃はまだ2歳位だったはずだ。その頃の記憶なんて無いだろう。それに、母親に捨てられた子だ」
「そうじゃな......」
この世界では親に捨てられる子なんて五万といる。
今更可哀想とは思わないが、本人にとって傷は大きいだろう。
それに、彼女が捨てられた理由は恐らく容姿だろう。
赤髪に青い目、日本人離れした子供にしては美しすぎる容姿。
それを母親は毛嫌いしたのだろう。
親とはそういうものだ。とくに裏社会では子供を売って金にする者がほとんどだ。
気に入らなければ直ぐに捨てる。
大切な命だろうとなんだろうと、親にとっては自分が気に入らなければどうでもいいのだ。
そして、捨てられた子が愛情なんてものは知らない。
だから......
「私がウチのやり方で沢山愛を注いでやろう。あの子は闇の世界がよう似合う」
「クククッ。頼むよ、紅葉君」
あの子はもう二度と光を見ることは無いだろう。
一度堕ちれば戻ることは出来ぬ。
それが、ヨコハマの闇を仕切る巨大組織、ポートマフィアだ。
"闇に咲く花は、闇にしか憩えぬ"
「あの子がどう成長するか楽しみじゃ」
------
凜音side
「ここが君達がこれから住む部屋だ。家具とかは全部自由に使って貰って構わないから」
「「「ありがとうございます」」」
太宰さんに案内されたのは、高級マンションの一室だった。
中に入ってみると、とても広く、部屋も幾つか分けられていた。
一通り見て、三人そろって礼を述べ、太宰さんは満足したのかそのまま出て行った。
ちなみに太宰さんの部屋は隣だそうだ。
私は、とりあえずキッチンがある方に行き、冷蔵庫の中を見る。
するとご丁寧に食材まで用意してあったため、簡単に料理を作った。
元々貧民街でも料理担当だったのと銀ちゃんが手伝ってくれたのもあってすぐに作り終わった。
その後は皆でリビングに集まって、他愛のない話をしながら食事をし、風呂嫌いな龍を無理やり風呂に入れたりなど少し騒ぎながらも、今日の疲れを癒すべく眠るのだった。
ちなみにふかふかのベットで寝心地は抜群だった。
翌日
今日はまず洋服などを揃えようと買い物に向かった。
姐さんと行くようにと首領に言われたそうで、ポートマフィアがよく利用しているというショッピングモールに一緒に行った。
正直貧民街で育ってきた私達にはどんなものがいいのかよく分からなかったが、姐さんが選んでくれるということで、任せっきりになった。
途中昼食をとるのにレストランに入り、初めて食べる食事に舌鼓を打ち、その後は生活必需品を買い、意外と充実した時間を過ごした。
そして午後遅くになり、沢山服を買って満足気な顔をした姐さんと少しげっそりした私達は買ったものを車に積み、帰った。
姐さんにマンション前まで送ってもらい、私は少し話があると呼び止められ、龍たちには先に帰ってもらった。
「あんなに沢山の服をありがとうございました」
「よいよい。私はおぬしらの服を選べて満足しておる」
「本当に好きなんですね」
「うむ。買い物は良い息抜きにもなるしの。それで、呼び止めた理由じゃがな、これを凛音にやろうと思っての」
「これは......」
姐さんに渡されたのは蝶の刺繍が施された綺麗な青の羽織だった。
一目見ただけで高級だと分かる代物だ。
「これは私が着ていた物じゃ。だが最近はあまり着ておらんかったからおぬしに譲ろう。先程買った服に合わせて着ればよいじゃろ」
「本当にいいんですか?こんな綺麗な羽織」
「よいよい。おぬしによく似合うと思うぞ」
「ありがとうございます!大事にさせてもらいます!」
「ふふ。喜んでくれたようでなによりじゃ。さっそく明日から仕事頑張るんじゃぞ」
「はい」
最後に礼を言って、姐さんが車に乗り去っていくのを見送り、見えなくなってから私も帰った。
帰ると、銀ちゃんと龍が買ってきた服を分けているところだった。
「おかえりなさい」
「ただいま銀ちゃん。龍」
「それはなんだ?」
龍が私が手に持っている羽織を指して聞いた。
私が大事そうに持っていたから気になったのだろう。
「姐さんがくださったの」
「そうか。良かったな」
「うん。龍も太宰さんからコート貰ったんでしょ?」
「あぁ」
龍は太宰さんから貰ったコートを気に入っているようだった。
龍も初めての贈り物だったため嬉しかったのだろう。
普段から暗い顔がわずかながら綻んでいた。
NEXT→
━━━━━━━━━━━━━━━
<設定>
【結城 凜音(ゆうき りんね】
容姿・赤髪長髪、青色の瞳。細身。銀より少し背が低い。
服(イメージ)・制服の上に尾崎から貰った羽織を羽織ってる感じ。
キャラ概要
小さい頃、母親に貧民街に捨てられ絶望。
それを見ていた芥川が保護。
芥川に拾われて以来凜音は芥川から離れられなくなる。
芥川が離れていこうとした時の凜音の反応は、小さい頃のトラウマが原因?
他既存キャラの設定は原作と同じ。
一部違う所がありますが、それはもう少し後に紹介します。
━━━━━━━━━━━━━━━
<後書きみたいなやつ>
初めましてm(*_ _)m
読んでくださいりありがとうございます。
設定から下は全部付け足したやつですw
現在の日付は2021年11月21日。
今回のはちゃんと完結させたい思ってます。
とは言いつつ既に何ヶ月も経っちゃいましたけど。
大まかな結末は既に決まってるので頑張ります💪
最後まで読んでくださりありがとうございました。
良ければ感想など聞かせてくださるととても嬉しいです。
次回もお楽しみに!
貧民街でも噂されるほどの人物だ。
冷酷で人殺しも躊躇しない自殺好き。
その人と出会ったのは貧民街だった。
私は龍と銀ちゃんと貧民街でとても良いとは言えない暮らしをしていた。
そこに突然その人が来たのだ。
「君が芥川龍之介君だね?」
「.......」
「だんまりかい?まあいいけど」
「何をしに来た」
「勧誘だよ。ポートマフィアは君を歓迎する」
その人は癖のある髪に鷲色の目、全身包帯だらけで服装は真っ黒、纏うオーラまで真っ黒で。
今まで怖い大人とたくさんあったけど、この人の纏う黒いオーラは全くの別物で、本当の恐怖を覚えた。
だが、なんとか踏みとどまり目の前の男を睨んだ。
「貴方は誰?」
「言ったでしょ?ポートマフィアだ。君は資料には乗っていなかったが、異能力者かい?」
「.........」
「二人には手を出すな」
そう言って龍が私たちを庇うように前に出た。
男は三人に睨まれながらも平然と、作り物のような笑顔を貼り付け、言ってきた。
「う~ん、君が素直についてきてくれるなら手は出さないよ」
「本当に手を出さないんだな?」
「うん」
龍は一瞬迷ったのか少し悩む素振りを見せ、返事をした。
「.......分かった」
「龍!ダメ!」
「凛.......大丈夫だ。銀を頼む。銀、凛を頼む」
「(コクッ)」
私は慌てて歩いていこうとした龍を追おうとしたが、銀ちゃんに捕まってしまった。
龍が離れていく。銀ちゃんに体を抑え込まれ、私は足掻くことしか出来なかった。
―いやだ、行かないで!龍まで私を置いて行くの?いやだよ!―
「置いてかないで!!!」
そこで私は意識を手放したのだった。
◆-------------------◆
何も覚えていなかった。
起きたら知らない場所で、見たことも無い立派なベットと呼ばれる物の上に寝ていた。
―どうしてこんなところに居るんだろう?―
記憶を辿ってみて、ポートマフィアの人が龍を勧誘しに来て、龍が私から離れて行こうとしたところまで思い出した。
あぁ。また暴走したんだ。
ようやく理解できた。
私の異能力の暴走。
私はまだ異能力の制御が出来ていなかった。
私の異能力は狼の群れを従えることが出来る能力だ。
きっと暴走して狼の群れ出してしまったのだろう。
そう考えていると、扉が開く音がした。
服の衣擦れの音と、コツコツという靴の音が少しずつ私のいるベットに近付いてきているのが分かった。
そして、
「凛」
「りゅ、う?」
龍だった。その声と呼び方で分かった。
「大丈夫か?」
「うん。ここは、どこ?」
「ここはポートマフィアの中だ」
「ポートマフィア......」
「あぁ。お前は異能が暴走してほぼ一日寝ていた。今は夜だ。その間に
「いいよ。龍と離れるくらいならこんなのどうってことない。ねぇ、もう私から離れようとしないで。置いてかないで」
「あぁ。もう置いて行ったりしない」
そう言って龍は私を抱きしめてくれた。
置いて行かれるのはもう懲り懲りだ。
そうしていると、また誰かが入ってきた。
ゆったりした足取りで来たのは、龍を勧誘しに来た人だった。
「起きたんだね。良かった。ポートマフィアへようこそ。私は太宰治。よろしくね。凛ちゃん」
「凛って呼ばないで。私の名前は結城凛音。よろしくお願いします。太宰さん」
「あぁ、ごめんね。凛音ちゃん。よろしく」
凛と呼ぶのを許しているのは龍を銀ちゃんだけだ。
それを理解したのか太宰さんはすぐに呼び方を直してくれた。
今思ったが案外優しい人なのかもしれない。纏うオーラは真っ黒だけど。
そしてふと思ったことを口にした。
「銀ちゃんは?」
「今は寝ている。大丈夫だよ。さて、凛音ちゃん。早速だけど首領に会って欲しいんだ。ついて来たまえ」
「龍は?」
「芥川君はもう挨拶は済ませたから来なくていいのだよ。さぁ、行こう」
太宰さんがそう言って歩き出した。
私は慌ててそれについていった。
それからエレベータに乗り、最上階に向かった。首領執務室はそこにあるそうだ。
首領と言うのだからかなりいいところではあるのだろう。
警備も厳重だ。
礼儀作法はそれなりになってはいると思うが、注意しなければと気を引き締めた。
廊下を歩いて突き当りの一際大きな扉を太宰さんはノックした。
中からは何も聞こえなかったため、いないんじゃないかと不安になったが、太宰さんはいきなりその扉を開けた。
「え.......」
「首領。連れて来たよ。ほら入って」
「は、はい」
少し戸惑ったが促されるまま中に入った。
するとそこには信じがたい光景が広がっていた。
「エリスちゃぁぁぁぁぁん!このドレス可愛いでしょう?着てみてよぉぉぉぉぉ!」
「いやよ!リンタロウキモイ!」
正直やばいと思った。これが本当にヨコハマの夜を支配するポートマフィアの首領なのかと疑ってしまった。
不可抗力だ。私は心の中で言い訳をした。
「森さ~ん。いい加減にしてよ~」
「あぁ、太宰君。その子が例の?」
太宰さんの声でようやく気づいたのか、森さんと呼ばれた人は、さっきまで鼻の下を伸ばして幼女を追いかけていたのが嘘みたいな笑みを作った。
「そう。凛音ちゃん、このロリコンがうちの首領。自己紹介して」
「ゆ、結城凛音です。これからよろしくお願いします」
「うん、よろしく。私は森鴎外。紹介にあったようにここの首領をしている。さて、まず年と異能力について話せるかい?」
急に空気が甘ったるいものから鋭いものに変わり、緊張しながらも私は首領の言葉に答えた。
「はい。年は十五、異能力は狼ノ咆哮。狼の群れを従えることが出来ます。今はまだ制御が出来ていません」
「ありがとう。異能力の制御については太宰君に教わりなさい」
「はい」
そうして話していると扉がノックされた。
反射的に扉の方を振り向いた。
そして首領が返事をしたのを合図に入ってきたのは、和装でとても綺麗な女性だった。
「呼んだかえ?鴎外殿」
「あぁ、来てくれてありがとう紅葉君。凛音ちゃん、尾崎紅葉君だ。紅葉君、新しく入った結城凛音ちゃんだ。この子の世話係をお願いしたいんだが、いいかね?」
「おぉ、可愛らしい子じゃのお。この子の世話係、引き受けよう。改めて、
「よろしくお願します。尾崎さん」
「姐さんでよい。私のことはみなそう呼んでおる」
「分かりました。姐さん」
五大幹部ということに驚きながらも、しっかりと挨拶をした。
口調が昔の人が使うような言葉で、不思議な人だと思った。
「今日はもう帰ってもいいよ。住む場所については芥川君達と同じ部屋になるよ。太宰君に案内してもらいなさい」
「ありがとうございます」
首領にそう言われ、私と太宰さんは、姐さんを残し部屋を出て行った。
首領の第一印象はよく分からない人。
笑みを浮かべているが、何を考えているのか、本当の笑みなのか分からない。
そしてロリコン。しかも重症。
太宰さんが言うには十二歳以下が守備範囲だそうだ。
首領の守備範囲から外れてて良かったと安堵しつつ、合流した龍と銀ちゃんと共に私達は、これから住む場所へと案内された。
------
尾崎side
鴎外殿に呼ばれて来てみれば、新しく入った結城凜音という可愛い女子の世話係を任された。
ただ......結城という名前には聞き覚えがあった。
「鴎外殿。結城というのは......」
「うん。ウチと敵対して壊滅した組織の子だ」
かなりの大手で、殲滅に苦戦した組織。
そこの頭領の名は結城
かなり強力な異能力者だったため良く覚えている。
「良かったのかえ?」
「あぁ。あの子は自分の父親の事を知らない。あの頃はまだ2歳位だったはずだ。その頃の記憶なんて無いだろう。それに、母親に捨てられた子だ」
「そうじゃな......」
この世界では親に捨てられる子なんて五万といる。
今更可哀想とは思わないが、本人にとって傷は大きいだろう。
それに、彼女が捨てられた理由は恐らく容姿だろう。
赤髪に青い目、日本人離れした子供にしては美しすぎる容姿。
それを母親は毛嫌いしたのだろう。
親とはそういうものだ。とくに裏社会では子供を売って金にする者がほとんどだ。
気に入らなければ直ぐに捨てる。
大切な命だろうとなんだろうと、親にとっては自分が気に入らなければどうでもいいのだ。
そして、捨てられた子が愛情なんてものは知らない。
だから......
「私がウチのやり方で沢山愛を注いでやろう。あの子は闇の世界がよう似合う」
「クククッ。頼むよ、紅葉君」
あの子はもう二度と光を見ることは無いだろう。
一度堕ちれば戻ることは出来ぬ。
それが、ヨコハマの闇を仕切る巨大組織、ポートマフィアだ。
"闇に咲く花は、闇にしか憩えぬ"
「あの子がどう成長するか楽しみじゃ」
------
凜音side
「ここが君達がこれから住む部屋だ。家具とかは全部自由に使って貰って構わないから」
「「「ありがとうございます」」」
太宰さんに案内されたのは、高級マンションの一室だった。
中に入ってみると、とても広く、部屋も幾つか分けられていた。
一通り見て、三人そろって礼を述べ、太宰さんは満足したのかそのまま出て行った。
ちなみに太宰さんの部屋は隣だそうだ。
私は、とりあえずキッチンがある方に行き、冷蔵庫の中を見る。
するとご丁寧に食材まで用意してあったため、簡単に料理を作った。
元々貧民街でも料理担当だったのと銀ちゃんが手伝ってくれたのもあってすぐに作り終わった。
その後は皆でリビングに集まって、他愛のない話をしながら食事をし、風呂嫌いな龍を無理やり風呂に入れたりなど少し騒ぎながらも、今日の疲れを癒すべく眠るのだった。
ちなみにふかふかのベットで寝心地は抜群だった。
翌日
今日はまず洋服などを揃えようと買い物に向かった。
姐さんと行くようにと首領に言われたそうで、ポートマフィアがよく利用しているというショッピングモールに一緒に行った。
正直貧民街で育ってきた私達にはどんなものがいいのかよく分からなかったが、姐さんが選んでくれるということで、任せっきりになった。
途中昼食をとるのにレストランに入り、初めて食べる食事に舌鼓を打ち、その後は生活必需品を買い、意外と充実した時間を過ごした。
そして午後遅くになり、沢山服を買って満足気な顔をした姐さんと少しげっそりした私達は買ったものを車に積み、帰った。
姐さんにマンション前まで送ってもらい、私は少し話があると呼び止められ、龍たちには先に帰ってもらった。
「あんなに沢山の服をありがとうございました」
「よいよい。私はおぬしらの服を選べて満足しておる」
「本当に好きなんですね」
「うむ。買い物は良い息抜きにもなるしの。それで、呼び止めた理由じゃがな、これを凛音にやろうと思っての」
「これは......」
姐さんに渡されたのは蝶の刺繍が施された綺麗な青の羽織だった。
一目見ただけで高級だと分かる代物だ。
「これは私が着ていた物じゃ。だが最近はあまり着ておらんかったからおぬしに譲ろう。先程買った服に合わせて着ればよいじゃろ」
「本当にいいんですか?こんな綺麗な羽織」
「よいよい。おぬしによく似合うと思うぞ」
「ありがとうございます!大事にさせてもらいます!」
「ふふ。喜んでくれたようでなによりじゃ。さっそく明日から仕事頑張るんじゃぞ」
「はい」
最後に礼を言って、姐さんが車に乗り去っていくのを見送り、見えなくなってから私も帰った。
帰ると、銀ちゃんと龍が買ってきた服を分けているところだった。
「おかえりなさい」
「ただいま銀ちゃん。龍」
「それはなんだ?」
龍が私が手に持っている羽織を指して聞いた。
私が大事そうに持っていたから気になったのだろう。
「姐さんがくださったの」
「そうか。良かったな」
「うん。龍も太宰さんからコート貰ったんでしょ?」
「あぁ」
龍は太宰さんから貰ったコートを気に入っているようだった。
龍も初めての贈り物だったため嬉しかったのだろう。
普段から暗い顔がわずかながら綻んでいた。
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<設定>
【結城 凜音(ゆうき りんね】
容姿・赤髪長髪、青色の瞳。細身。銀より少し背が低い。
服(イメージ)・制服の上に尾崎から貰った羽織を羽織ってる感じ。
キャラ概要
小さい頃、母親に貧民街に捨てられ絶望。
それを見ていた芥川が保護。
芥川に拾われて以来凜音は芥川から離れられなくなる。
芥川が離れていこうとした時の凜音の反応は、小さい頃のトラウマが原因?
他既存キャラの設定は原作と同じ。
一部違う所がありますが、それはもう少し後に紹介します。
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<後書きみたいなやつ>
初めましてm(*_ _)m
読んでくださいりありがとうございます。
設定から下は全部付け足したやつですw
現在の日付は2021年11月21日。
今回のはちゃんと完結させたい思ってます。
とは言いつつ既に何ヶ月も経っちゃいましたけど。
大まかな結末は既に決まってるので頑張ります💪
最後まで読んでくださりありがとうございました。
良ければ感想など聞かせてくださるととても嬉しいです。
次回もお楽しみに!
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