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【クロロ・ヒソカ】二人と旅する夢(長編/1章完結)

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【旅団side:続き】

「……へぇ。──あの演奏家、特定できたよ。ミュージックハンターみたいだね」

地下競売の帰りに、通りすがりのコレクターからSIMフリーのタブレットを盗んだシャルナークが、ハンターサイトを調べながら言った。
その画面を、横から覗き込んでいたシズクがつぶやく。

「その人、死んでないといいけど」

一拍の間を置いて、クロロがふと何かを思い立った様子で、シャルナークとコルトピに指示をする。

「シャル。あの女の名前と、生年月日、血液型を書いてくれ。それとコルトピ。ハンターサイトに掲載されている写真はコピーできるか?」

彼の意図がわからない二人は、疑問に思いながらも「OK」「わかった」と、二つ返事で引き受けた。

「……できたよ」

先に作業を終えたのはコルトピだ。《神の左手悪魔の右手ギャラリーフェイク》のコピーは1秒もかからない。

「えっと……。名前はユリ。生年月日は××××年3月19日。血液型はO。──これ、何に使うの?」

続いて、シャルナークが書き取りを終える。
二人から写真とメモ用紙を受け取ったクロロは、《盗賊の極意スキルハンター》を開くと、《天使の自動筆記ラブリーゴーストライター》の頁で指を挟んだ。
団員の視線がクロロの手元に集中する。小さな羽が生えたモンスターのような念獣が、彼の持つボールペンを動かしているのだ。
暫くして、念獣が消えると同時にトランス状態から解除されたクロロは、この能力について団員に解説した。

「詩の形を借りた、100%当たる予知能力だ。ある女から盗んだ。──自動書記といってな。オレには内容はわからない」

旧持ち主のネオンは、自身が占った内容を見ることはなかったという。
彼女は、そのほうが当たる気がすると言っていたが──。
実のところ、それが制約の役割を果たしているのだろうと、クロロは推測していた。
予言が書かれた紙を、そのままシャルナークに手渡して問いかける。

「この詩に、あの女が死ぬような予言はあるか?」

『行き場の無い客が貴方の店を訪れて
 安寧を求めた掟を提示する
 客の真意を見誤ってはいけない
 2択は対の1択にすぎないのだから』

「……うーん」

内容を見たシャルナークが、不可解な面持ちで言いよどむ。
いかようにも解釈できる文章とはいえ、死に関する記述は見当たらなかった。

「たぶん、大丈夫。死ぬようなことは書かれてないよ。詩の表現が抽象的すぎて、全体像を掴むのは難しいけどね」
「そうか。想起させるものが無いなら、それで問題ない」

クロロは胸の内で僅かに安堵する。そして、先程シャルナークが書き取ったメモと、コルトピがコピーした写真を、何気なくコートの内ポケットに仕舞い込んだ。
この時、なぜ紙を捨てなかったのか? 誰かが問いかけても、理にかなう答えは出なかっただろう。
クロロ自身、個人の動機について気に止めない節は自覚している。
それは、旅団という組織内で、団長としての筋を通す体面とは真逆の性質。
どちらが彼の本質なのか? 或いは両方か。当人すらもわからない。
そんな心の機微など目を向けず、今はただ、他の団員の予言を書き残すことに意識を集中させた。

「──ノブナガ、オレの質問に答えろ」

まずはノブナガ、そしてシズク──。彼は、団員を次々と占っていく……。

『菊が葉もろとも枯れ落ちて
 血塗られた緋の目の地に臥す傍らで
 それでも蜘蛛は止まらない
 残る手足が半分になろうとも』

『黒い商品ばかりの収納場で
 貴方は永い眠りを強いられる
 何よりも孤独を恐れなさい
 2人きりほど怖いものはないのだから』

『赤目の客が貴方の店を訪れて
 貴方に物々交換を持ちかける
 客は掟の剣を貴方に差し出して
 月達の秘密を攫って行くだろう』

『11本足の蜘蛛が懐郷病にかかり
 更に5本の足を失うだろう
 仮宿から出てはいけない
 貴方もその足の1本なのだから』

『暗くてわずかに明るい日
 貴方は狭い個室で2択を迫られる
 誇りか裏切りしか答えはないだろう
 死神が貴方の傍に佇む限り』

『電話を掛けてはいけない
 一番大事なときにつながらないから
 電話に出るのもすすめない
 3回に1度は死神につながるから』

それぞれの抽象的な予言を、どう解釈して捉えるのが正解なのか。
団員5人の生死が懸かっているとなれば、選択を間違えることは許されない。
今、自分が成すべき最善。それは予言を回避させること。
あの女に再び接触するのは、いずれ機が熟してからで十分だ。
そう考えたクロロは、個としての意思を脇に置いて、ヨークシンの街に残ることを決意した。



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