【クロロ・ヒソカ】二人と旅する夢(長編/1章完結)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
クロロとの会話を終えたユリは、一度部屋に戻ろうと、ルームカードキーをドアに差した。
しかし、オートロックが解除されない。
何回カードを差し込んでも、カシュッという虚しい音が、静かな廊下に響くだけだった。
──まさか、故障しちゃったの?
内心、面倒なことになったと思いながら呟いた。
念のため、ドアを数回捻ってみる。
すると、内側からロックを解除した音が聞こえ、誰かがドアを開けた。
「待っていたよ♥️」
姿を現したのはヒソカだった。
ユリは反射的に部屋番号を確認する。
──902号室。
自分がチェックインした号室で間違いない。
「……」
言いたいことは山ほどあったが、廊下で責め立てては、迷惑な騒音となってしまう。
ユリは堪忍袋の9割を使って耐え忍び、渋々と部屋の中に入ってドアを閉めた。
「私が言いたいこと、わかってるでしょ?」
気迫のこもった態度でヒソカを睨むユリ。
その表情が、「わからないとは言わせない」と語っている。
「そんな目で見つめるなよ♠️ 軽い挨拶じゃないか♦️ それとも、ボクを興奮させたいのかい?」
「そういう茶番は、やめてちょうだい」
一蹴され、ヒソカはやれやれと肩をすくめた。
「キミの言いたいことは、わかってるよ♥️」
「……」
ユリは無言の威圧を向ける。
堪忍袋の緒が限界に近づいていた。
だが、そんな雰囲気を気にする様子もなく、ヒソカは続きを話す。
「今のボクは気分がいい♠️ 特別に、タダで種明かしをしてあげよう♦️」
「……?」
「そっちのルームカードキーは偽物♣️ まずは
──!!
ユリは、思わず手元のルームカードキーを確認する。
表面のツルっとした手触りと厚さは、本物と大差が無い。
トランプだと言われるまで、気づくことができなかった。
「そう、だからロックが解除されなかったのね。」
「電子情報までは、組み込めないからね♣️」
しかし、ユリのルームカードキーは偽物だ、というだけでも十分伝わる話。
敢えて自身の能力まで明かした理由がわからない。
「どうして貴方の能力まで教えてくれたの?」
その質問に対する答えは意外なものだった。
「ボクだけユリの能力を聞くなんて、フェアじゃないだろう?」
正確には、ヒソカに話を聞かせたわけではない。
勝手にクロロとの会話を盗み聞きしただけである。
指摘したい気持ちを堪えて、ユリは答えた。
「意外ね、そんなこと気にしなさそうなのに」
「ボクにはボクの拘りがあるのさ♠️ それに、話してもデメリットは無いからね♣️」
──つまり、使い方次第では変幻自在に化けるということね。
ヒソカの性格を考えると厄介な能力だ。
ユリは、皮肉と称賛を込めて言った。
「なんとも、貴方らしい能力だわ」
「そうだろ? …嬉しいよ♥️」
「……」
──種明かしも終わったし、そろそろ本物のルームカードキーを渡してほしいのだけど……。
ユリの考えを知ってか知らずか、ヒソカはおもむろに右手を広げる。
その手を裏返してパッと元に戻すと、人差し指と中指の間にルームカードキーが挟まれていた。
まるで手品のようだ。
「本物はボクが持ってるこっちのほう♦️ 盗られたことに気づかなかっただろう?」
ユリは、俯きながら考える。
いつ盗られたのだろうか。
「おおよそ検討はつくにしても……。悔しいけど、明確にはわからないわ。」
「それが、今のユリの実力さ♠️ いい玩具になりそうだけど、キミはまだ青い果実♣️」
「……」
「熟れて美味しく実るまで、待ってるよ♥️ ボクを失望させない内はね♠️」
ユリの額に汗が浮かぶ。
「……恐ろしい人ね。肝に命じておくわ。」
ヒソカに言われたユリは痛感する。
わかっていたとはいえ、自分は弱いのだと。
彼に見限られて殺されないように、鍛えなければと決意した。
「さて、もう用は済んだかしら? 早いとこ出ていってほしいのだけど」
「OK♦️ 最後に1つ、聞いていいかな?」
「……?」
「ユリの能力で、クロロの徐念ができないのはどうしてなんだい♣️」
今度はユリが、自身の能力の種明かしをするように説明する。
「今さらの質問ね。念が使えず仲間と接触できないというだけで、負傷してるわけじゃないから徐念ができないのよ」
「逆に言えば、かけられた念によって負傷していれば、徐念もできるということかな♠️」
「そうよ。徐念についてはケースバイケースなの」
「なるほど♥️」
ヒソカは、ふに落ちた様子を見せると、右手をひらひらと振って背を向けた。
「それじゃ、ボクはGIにいってくるよ♣️ 徐念師を見つけたら連絡するって、クロロに伝えておいてくれないか♠️」
「わかったわ。いってらっしゃい」
これから命が掛かったゲームへ赴くとは思えない、妙な気軽さで部屋を出ていくヒソカを見送った。
最後だけ見たら、まるで近くのショッピングモールへ買い出しでも行くかのように思えるだろう。
恐らく彼にとっては、GIで徐念師を見つけるなど、それくらい容易いことなのだ。
ユリはそう確信した。