【クロロ・ヒソカ】二人と旅する夢(長編/1章完結)
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ヒソカは、旅団のメンバーが歓迎するに足る理由があると提言した。
しかし、その真意がわからないユリは訝しげな視線を向ける。
「まだ回復系統に特化した団員がいないと言ったら、少しは伝わるかな♠️」
「……ほんとなの?」
「あぁ、血の気が多い連中だからな」
とはいっても、マチなら念糸で修復程度であれば可能だ。
しかし、まだ正式な団員となっていないユリに、彼女の能力を話すことはしなかった。
「つまり、キミの枠は空いてるということさ♥️」
「……」
無言で考え込むユリをみてクロロが尋ねる。
「どうやら、まだ何か気にしているようだな」
「えぇ、いろいろと……」
そもそも、気にすることだらけだと突っ込みたくなる。
生きる上でかなりハイリスクな選択になるのだから。
不安げにユリがつぶやく。
「弱い私が、やっていけるのかしらね……」
「何を言うかと思えば、そんなことか」
クロロは全く気にする様子もなく答えた。
それに続いて、ヒソカも薄ら暗い笑みを浮かべて話す。
「弱いといっても、ボクの
「どこからそう判断したのかしら。わからないわね」
「今から試してみるかい♦️」
「悪いけど、遠慮しておくわ」
ユリは即答する。
ヒソカは面白くないといった仕草で、開きかけたトランプをしまった。
「つれないなぁ♠️」
「……」
ヒソカと
残念そうにするヒソカにかける言葉が思い付かない。
それでも、ユリは少し考えて話しはじめた。
「えっと……。釈明すると、一応ハンターだもの少しは鍛えてるわ。二人の足元にも及ばないけどね」
「キミのことだから、『絶になった状態でも誰かの足手纏いにならないように』なんて考えているんだろう♦️」
ヒソカに考えを読まれたことでユリに悪寒が走る。
妙な気持ち悪さを感じながらも、それを誤魔化しつつ続きを話した。
「動機まで含めて正解よ。相手に少しの隙があれば、その場から逃げるくらいはできると思う」
「であれば問題無い。回復系統の能力者と考えれば十分だろう。むしろ上等だ」
クロロの声には確信めいた力強さがあった。
しかし、慎重なユリにはあと一歩響かなかったのか、一抹の不安を言葉にする。
「あの、もし捕れば私から蜘蛛の内部情報が漏れるかもしれないわ。それって仲間としてリスクにならないかしら?」
「リスクとしては勿論あるが、それはユリに限らず皆同じだろ。オレも鎖野郎に捕まったからな。そこを考えてもキリがない」
「……確かに、そうなんだけど」
「何より、団長であるオレがいいと言っている。必要以上に慎重になるところは具現化系の悪い癖だな。──全員とは言わないが」
物言いが多少厳しくなっているクロロを見て、意外にもヒソカがフォローする。
「重要なのは、キミがどうしたいか♣️ そうだろ♦️」
「あー……わかった!! もう、ダメな理由は探さないから。少し考えさせてよね」
ユリは不貞腐れるように、ふいっと横を向く。
その態度がなんともいえず微笑ましいのか、クロロが珍しく穏やかな笑みを浮かべた。
「そうか、責め立てるようで悪かった。気の済むまで考えればいい」
「……」
そう言われると、ユリも返す言葉がない。
押しと引きの絶妙なバランスに、思わずペースを持っていかれる。
幻影旅団を束ねる器は流石だと認めざるを得ない。
クロロには不思議なカリスマ性があると感じていたユリだが、それでもここまで影響されるとは思っていなかった。
おもむろにスマホを取り出すと、クライアントへ電話をかける。
「お世話になっております、ユリです。私事で大変申し訳ないのですが、今度の講演は……」
──私は、今後の講演を全てキャンセルすることにした。
「──ふぅ、やっと終わった。これで全部ね」
ユリは、両腕を上げてぐ~っと伸びをする。
一息つくと話しはじめた。
「今の電話、全部聞いてたでしょう?お望み通りキャンセルしたわ」
「あぁ、感謝しよう。その上で改めて聞くことがある」
クロロは真剣な眼差しでユリと視線を合わせた。
「ユリ、
それに応えるように、ユリも目前の相手を見据える。
「無論、答えはYesよ。言わずともわかっていたでしょう?」
その返答を聞いてクロロは軽く分析する。
さっきの不貞腐れた態度もそうだが、慎重なわりには感情が表にでやすいタイプか。
思わずふっと目を瞑る。
「一応、意思を確認しようと思ってね。オレの徐念が完了次第、正式に団員として迎え入れよう」
口にすると、ユリのメンバー入りがより現実味を帯びた実感に変わる。
そして、気分が幾らか高揚していることにクロロ自身が気づいた。
──嬉しいとは、このような心情を言うのだろうな。
感情の概念としては知っていたものの、自身があまり感じることのないそれを噛み締める。
少し間を置いてユリが呟いた。
「その日が来たら、私も裏社会の人間になるのね」
「覚悟を決めておくことだな」
言葉を交わしながら、ユリもまたクロロについて考えていた。
団員入りを承諾したのが自分でも不思議だったのだ。
団長としてのカリスマ性が為せる技なのか。或いは……。
──私にとって彼は特別な存在なのかもしれない。少なくとも、クロロの一言でこれまでの自分を変えてしまえるくらいには。
そこでユリはふと思った。
これから仲間となる予定のまだ見ぬ
既存の団員にとっても、クロロは特別な存在なのだろうか。
個々の事情は違えど、恐らくそうなのだろうとユリは感じた。
どこかしらに惹かれる部分があるのは確かなのだ。
それ故、彼らはクロロを慕って付いていくのだろう。