【クロロ・ヒソカ】二人と旅する夢(長編/1章完結)
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一通り念について説明を終えたところでクロロが呟いた。
「やはり、致命傷を負った者を相当数癒すにはリスクがあるということか……」
「あまり無理すると、暫く絶になってしまうのよ。近くに敵がいたら致命的ね」
ユリが話す一部に妙な違和感を捉えたクロロは考える。
「本当にそれだけか?」
「──何がいいたいのかしら」
演奏で癒すにも幾つか種類がある。
心を安らげるもの、惹き付けるもの、幻想へ誘うもの……。
問題は、ユリの能力が”完治させる”ほどの類い稀な癒しの技術を持っていることだ。
限りなく完璧に近い状態にするということは、それ相応の誓約と制約があることを意味する。
「これは推測だが、絶になる程度では辻褄が合わないだろう。それ以上の代償が必要になるはずだ」
ふぅ、と溜め息をついてユリが答える。
「隠したのが恥ずかしくなるほど簡単にわかっちゃうのね。当たりよ」
「あぁ、少し考えればわかることだが。一応褒め言葉として受け取っておこう」
「そうしてくださいな。ていうか、そのリスクも旅団レベルの危険人物が近くにいなければ滅多に起こらないわよ? ──なんて、目の前に団長さんがいるのに言うのは変な感じね」
クロロがふっと伏し目がちになって僅かに笑う。
「今のは聞き流しておくか。説明を続けてくれ」
「ヨークシンレベルの事件だと、被害者が受けるダメージは肉体的な傷だけじゃないのよ。精神的トラウマもかなり大きいものになるわ。私の能力は”完治するまで癒す”故に、一定のレベルを超えたら寿命を代償にするしかないの」
寿命であれば妥当な線、嘘ではないとクロロも判断する。
そしてもう1つ府に落ちたことがあった。
「──なるほど。そうか、今になって知るとはな」
「……?」
クロロは改めてユリを見据えて答える。
「後付けに思えるだろうが、当初ユリに100億Jの依頼をする価値があると考えた理由が、恐らくそれだ」
「随分と遠回しな言い方ね。もっとわかりやすく言ってくれない?」
無自覚なのか、きょとんとした顔をするユリを見て、どこか毒気を抜かれたようにクロロがこたえる。
「そうか、では言葉を変えよう。──自らの命を犠牲にしてまで癒しへと徹するユリに、オレは心を奪われたということだ」
数秒間が空いただろうか。
首を傾げてユリが言った。
「……それって、要約すると私が好きということ?」
「いや、全く」
「……お生憎様、私もよ」
ばつの悪そうな表情をするユリ。
クロロは意に介さず話を進める。
「だが、オレにはあなたが必要だ」
「具体的になぜ……?」
「──鈍いな。
「……冗談で言ってるわけじゃないみたいね」
「こればかりは冗談で言わないな。とはいえ、オレの徐念が無事に終わればの話だ。今はユリの考えを整理するといい」
トントン拍子で進んだ会話が思わぬ方向に転がったものだとユリは頭を抱えたくなった。
しかし、いたって真剣だと目前の瞳が語っているものだから、話を逸らすこともできなかった。
「……わかったわ。でも、他の団員達は納得しないんじゃなくて? 盗みでも戦闘向きでもない私を受け入れるとは思えないのよ」
そう言ったところで、これまで姿を潜めていたヒソカの声が聞こえた。
「やぁ、お邪魔するよ♦️ そう思ってるのは案外キミだけかもしれないからね♣️」
「──どういうこと?」
まだ幻影旅団について深く知らないユリはわかっていなかったのだ。
彼らの仲間を想う気持ちがどれほど強いのかを。
あれだけ殺戮を繰り返す集団において、団員たった1人の死ですら重いほどに、誰も失いたくないと感じる側面がある。
彼らが意識的に求めるものは万能な回復係であり、無意識で真に求めているのは実のところ癒しなのだ。