授業が終わり、教会へ通う準備をする六花
「荷物は部屋に持っていくから行きな、六花」
❝けど❞
「ね？」
❝ありがとう❞
教室を出ると
「リモージュ、院長がお呼びです。」
六花は頷く
院長室へ向かう
「リモージュってなんかムカつくのよね」
一人が言う
「何よ‼##NAME2##は努力家よ」
「あの子話さないじゃない‼」
「話せないのよ‼
父親を失ったショックで、だから毎日墓参りに行ってるの」
彼女も知ってる
神父は養父である事を、両親を待つ為に毎日教会へ通う事を
しかしそれを言うと彼女が付け上がるから、墓参りと言うしかない。
友人は睨む
「アンジェリーク・六花、あれ六花よ、あの子の父親は発明家で、それを見て育ったから研究もしてるわ
王立に呼ばれるくらいの才能よ」
そう言って立ち去る。
アンジェリーク・六花の名前を知らない者は居ない。
王立に来てほしいと声を掛けられる研究者
しかし名前は出すが、表には一切出てこない存在
それがリモージュなら当たり前だ。
友人は知ってる
その研究も両親を捜す為の手段と言う事を

そして友人はシスターに呼ばれた。
友人の名前はシャルロッテ
彼女もまた、運命に巻き込まれる一人

六花は院長室へ入る。
女王試験を受ける女王候補に選ばれたのだ
❝私が、病気で、声も、両親が❞
「六花、今回で最後にしなさい。
一日外泊も許します。」
涙を流して一礼する
あと、どれだけ生きられるか解らない自分が女王候補に選ばれるなんて
女王試験に合格すれば女王になってしまう
女王が失えば宇宙が危機に陥る
それに教会に来れなくなれば、両親に会えなくなってしまう

六花は教会に行き、カティスとライの墓を見る。
もう墓参りに来れなくなる。
教会へ行き、手紙を書いて神父に渡す
「六花さん」
❝私はもうここに来れなくなるから、だから両親が来たら❞
神父は抱き締める。
自分の部屋はそのままだった。
ここで生活し、星を眺める
それが何より幸せだった。
けど二度と来ない
女王にならずとも帰れないだろう。
神父と自分の居場所
ここの生活が幸せだった、養父とおじさんとの生活が終わりを迎えるのだ
六花は養父に縋るように泣き出す。
最後の一夜
翌日シスターに抱き締められて、主治医に説明し、診察を受けて、薬を貰う。
医者は診断書を書いてくれた。
ありがとう
六花はたくさんの人に感謝し、寮へ戻り、荷物を纏める。
チェロや望遠鏡をしまい、いらないのは処分する。
最低限の荷物
教会で暮らして来たから、物はあんまり持たない癖が出来て居た。
三人の写真を見て触れる。

女王試験が行われることになり、女王候補が娘とは、女王も驚いた。
母親と名乗れない自分
女王として彼女を見守るしか出来ない。
まだあの子の事をクラヴィスにさえ伝えて居ない。
親子なのに、他人として向き合わないといけないの？
母親と名乗りたい、抱き締めたい、名前を呼びたい、愛したい
六花‼
アンジェリークは唇を咬む

宇宙は一人の女王によって統べられている
聖なる女王の光り輝く翼のもと
その白い指先で
慈愛に満ちた眼差しで
星々の運行を見つめ導いていた
六花は空を眺める。
女王候補として選ばれてから、悪天候だ。
きっと女王交代もこのせいだろう
宇宙を救い守る女王
六花はシャルロッテを見る。
シャルロッテは六花を見る。
「女王試験が行われ、リモージュは女王候補に選ばれました。
貴女はリモージュの友人として、女王候補の手伝いとしてメイドとなっていただきたい。」
女王候補の生活のサポート
自分は彼女を知ってる
母も祖母もメイドだった
父や祖父も使用人、執事を努めた
「やらせて頂きます。」
一人にさせない。
六花
メイドの事を黙ってるのは罪悪感だけど、シスターとの約束だからごめんね
シャルロッテは飛空都市に向かい、寮を見て、挨拶し掃除し
彼女の荷物を見て苦笑する
相変わらず荷物は少ない
守るし支えるよ

世界が軋み壊れる。
悲鳴が聞こえる。
ゆるやかに
しかし確実に
女王の力が衰え
世界は破滅に向かっていた。
クラヴィスは水晶球を見ていた。
世界の破滅と金髪の娘の泣いてる姿
やはり泣いてる
彼女は成長しないし、泣き続ける。
彼女はもう成長してるだろう
けど水晶球はずっと幼く泣いてる。
お前はいつまで泣いてる？
どうすれば彼女は泣き止む、私の声は聞こえぬのか？
私は視てるしか出来ないと言うのか？
金髪は彼女を思い出させる
心から愛し放れた彼女に、しかし彼女とは違う娘
リュミエールがクラヴィスに近付く
「クラヴィス様、何をご覧になっておいでですか？」
リュミエールはいつ頃か、クラヴィスが水晶球で、何かを見ているのを知ってる。
クラヴィスはリュミエールを見る。
「リュミエールか」
確認し水晶球を見る。
「世界の終末を見ていた。」
クラヴィスはあの娘を何故か口にしたくなかった。
水晶球が気紛れに映し出す映像は、過去か未来か？
それにあの娘は？
「リュミエール、音楽を聴かせてくれ
滅びゆく宇宙の為に」
「かしこまりました」
リュミエールは瞳を閉じる

ジュリアスは資料を見ていた。
宇宙の異変
滅び行く星々
この宇宙に未来は無いのだろうか？
解るのは時間が無い事
「ジュリアス様」
ジュリアスは資料から視線を上げる
「オスカーか」
「ただいま戻りました。」
オスカーが言う
「ご苦労だった
早速だが、詳しい報告を聞かせてくれるか？」
「はっ
その報告書にも記してある通り、各地で急速に星々の崩壊が始まってます。」
オスカーは映像を出す。
滅び行く星達
荒れ果てる星
「銀河の至る所で次元の綻びが見られ、表面的には細やかな歪みですが事態は深刻です。」
オスカーが言う
ジュリアスも映像を見る。
「これほどとは」
ジュリアスは頭を抱える。
「我等の宇宙は限界なのだ。
終末の時を引き伸ばす事が出来ても止める事は出来ない。
たとえ女王陛下のお力を持ってしてもな」
陛下はただお一人でこの宇宙を支えて居られる
我等守護聖の九つのサクリアを導きながら
だが、その力も、もう
「遠からず女王交替が告げられるだろう
我等守護聖として、心しておかねばならん」
オスカーは戸惑いを隠して返事をする
「はい」

ジュリアスはクラヴィスの様子が最近妙に落ち着いておらず少し心配する

女王交替
新たな女王
守護聖とは女王を支える力を持った者の称号であり、彼等は生まれながらに守護聖となるべく、定められた九人の男性である。
守護聖はそれぞれの属性を持つ力「サクリア」の高まりに寄って決定され宇宙を司る 女王のもと、聖地と呼ばれる場所で暮らしていた。
聖地は女王の治める銀河の中央に位置する主星上、他の世界とは時間の流れを異にした空間に存在してる。
守護聖のサクリアに目覚めた者は例外なく聖地に召喚されるが
それは本人の意思とは関係なく定められたことである。
だが、皆は心のどこかで新たな女王を待っている。
守護聖達は飛空都市に向かう
新たな女王を迎えるための試験を見定める為に

迎えが来た。
「荷物はこれだけですか？」
頷く六花
馬車に乗り込み座る
御者は六花を見て驚く
瞳がクラヴィスに似てるからだ
他人の空似か血族か
無口で話さず、送り出す親も居ない。
不思議な娘
六花は静かに外を眺めていた。
ポシェットはある
中には薬、カード、筆記用具があり手放す事はない。
自分は女王になれないからもう一人の女王候補が女王になるだろう。
だが、本当の両親を捜すために飛空都市に向かう。
それが最後の野望
首の痣は襟や髪で誤魔化せる。
足は長い靴下で誤魔化す
体の傷は隠せた。
大丈夫

飛空都市に着くとシャルロッテが居て驚く
「こちらです六花様」
シャルロッテが案内したのは謁見の間の前
もう一人の女王候補の姿もある。

謁見の間の扉が開き歩む
「ロザリア・デ・カタルヘナです。」
六花はポシェットに手をかけると
「彼女は私の主人、六花・アンジェリーク・リモージュ、訳ありまして主人は話せませんので、メイドの私がお供させてもらいます。」
シャルロッテの言葉に六花自身驚く
聞いちゃいない
「院長のサプライズです主人」
頭を抱える六花
「私がいないと自傷と自殺未遂するでしょ主人は」
いやしない、見に覚えもない
その言葉にざわめく
挨拶が終わり出る
「話せないし自殺未遂ってあの子」
オリヴィエが見る
ジュリアスはクラヴィスを見る
女王は涙を落とす
娘が話せない
自殺未遂に自傷
それは私のせいなの？
私とお父さんに似てた。

外に出るとシャルロッテは六花を見る
「今日から六花の生活、育成のサポートをするから、自傷は止めてね？」
いや自傷の覚えはないのだが頷くしかない。
守るように抱き締められる、慣れない他人からの包容

寮へ行き、部屋へ案内されるので
「防音でチェロも奏でられるわ」
シャルロッテに言われチェロケースを触れる。

クラヴィスは金髪の女王候補の事を考える。
何だ彼女は私や彼女に似てる
話せない娘、夢の子供