第一章 ~世界の異変・旅立ち~
この世界――
魔族の子孫が治める"メリアス大陸"、北の白き雪国"アークル大陸"、熱帯砂漠の"シェ―ランド大陸"、
そして、この物語の始まり――この世界を治める"エルソン大陸"――。
エルソン大陸の遥か南に、"エルソン学園"という小さな孤児院があった。
そこでは、親のいない子供達が集まり、日々勉強している。
愉快で平凡なその学園で、大きな異変が起きようとしていた……。
それは――。
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ユ「えっ!?フィオール城にお使いを頼まれた!?;」
ある日の夕方、授業が終わった頃の事――。
一人の少女の声が、学生寮の自分達の部屋に響き渡った。
シ「う、うん……;;」
ユ「すごいねっ!シャインお兄ちゃん!頑張ってねっ!」
シ「ああ、頑張るよ」
シャインは、笑顔で自分を応援してくれる妹――ユリーアに優しく微笑んだ。
すると、ガチャッと扉の開く音が聞こえ、シャインとユリーアは扉の方へ振り向いた。
そこにいたのは、二人の兄――ルーチェだった。
ル「フン……どうせ、あの我儘姫の御守りでも頼まれたんだろう?あの
ユ「ルーチェお兄ちゃん!聞いてたの?」
ため息交じりに言葉を吐くルーチェに、二人は目を丸くして驚く。聞かれているとは思わなかったのだろう。
ルーチェはいつものような冷たい目で二人を見て、クールに腕を組む。
ル「勘違いするな。通りかかったら偶々聞こえただけだ。しかし、こんな調子では、城に行くのは少し難しいだろうな」
ユ「どうして?みんなフィラ王女の事悪く言いすぎよ。とても優しくていい子なのに……」
ル「大親友とやらのお前には理解できないだろうな。先日俺が会いに行った時も、そこまで心を開いてはくれなかった。シャインが生きて帰ってくることを祈るしかないな」
シ「あ、あはは……;;」
シャインはルーチェの言葉に苦笑いする。
ルーチェの言葉は、少し大げさにシャインをバカにしているようにも聞こえるが、その言葉に嘘はない。
最近城の近くで魔物がうじゃうじゃと出始めたらしく、ルーチェはその護衛に行っていた。しかし、王女であるフィラに心を開かれず、そのまま帰ってきたのだ。
フィラは幼い頃、病で王妃である母親を亡くし、肉親は国王である父親しか残っていなかった。それにもかかわらず、先日国王が突然の病で倒れてしまったのだ。
今フィラが心を開ける相手は、幼い頃城を抜け出した時に偶々仲良くなったユリーアだけだ。
だが、城までかなりの距離があり、半日で辿り着けるかどうかくらい……いつ魔物が出てくるかわからないそんな場所に、ルーチェも大切な妹を送り込むことはできなかったのだろう。
そこで、剣の腕はある程度あり、魔術の才能もあるシャインに頼ってきたというところだ。
ユ「……シャインお兄ちゃん、死なないでね?」
シ「し、死なないよ!大げさだなぁ……;;」
ル「いっそ死んできた方が楽だったりしてな」
シ「兄さんっ!?そんな皮肉な事言わないでくれっ!」
今日も、エルソン学園は賑やかな笑顔で包まれていた。
しかし、いつもの日常がああも簡単に壊されてしまうとは、誰にも予測できなかった――。