第一章 ~王女人生の転機・旅立ち~
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兵「連れて参りました。この青年です!」
兵士が連れてきたのは、レントより少し年上くらいの青い帽子を被った銀髪の青年。
彼の紫色の瞳は、凍り付いたように冷たいものだった。まるで、何か闇を抱えているような……。
後ろの方で兵士達がざわついているのが聞こえる。レントも今回ばかりはとても期待している様子だ。
ガヤガヤとする中でブラストはその青年に近づき、話しかける。
ブ「そなたが例の看板を見てやって来た者だな?まずは名を聞こうか」
テ「……テリーだ」
"テリー"
それが彼の名前らしい。
テリーと名乗る青年の名前、そして顔を見て、レントは何かを知っているような気がした。
レント(テリー――この名、この顔……どこかで聞いたことがあるような?それに、誰かに似ている気がする……)
レントはその名に少し違和感を覚える。どうしても初対面ではないような、そんな気がしてならなかった。
まあ今はそんな場合ではないし、気のせいだろう――とこれ以上深く考えないことにした。
テ「アンタがこの城で一番強い兵団長さんだろ?んで、そこのアンタは?この城には女兵士もいるのか?」
ブ「な、王女陛下になんと無礼な!」
テ「姫さんだったのか、そりゃあ失礼」
『むっ……!』
レントは、テリーの言葉に思わずカチンときた。彼女は"姫"と呼ばれることが嫌いだからだ。
幼い頃は何とも思わなかった言葉だが、成長するにあたり子ども扱いされているようで嫌になったのだ。
だがレントは、ブラストの前に手を伸ばし静止させ、テリーをにこやかに睨んでみせた。
『テリーと言ったな、貴様。次この俺を姫と呼んだら命は無いと思え。"炎の姫"を甘く見ないで戴きたいな』
テ「はっ……物騒な王女様だ……」
テリーは鼻で笑いながらも、ギョッと少し冷や汗を掻いていた。
後ろの兵士達と隣にいるブラストは、見慣れた光景に苦笑いすると、ブラストが咳払いをし話の続きを始めた。
ブ「まず、テリー殿にはこのオレと戦ってもらう。その後、このレント・アークボルト王女殿下とも戦って頂こう。勝てば北の洞窟へ向かって良い。それでどうだ?」
ブラストの説明が終わり一同が息をゴクリと飲むと、テリーはニヤッと笑った。
テ「――面白い。やってやろうじゃないか」
その場に、おお~と歓声が上がる。
しかしレントは、そのテリーの笑みに
レント(何……?その笑顔……)
――と、驚くと同時に、少し胸がドキッと音を立てたのを感じた。
それが一体何なのか分からないまま、ブラスト対テリーの勝負は始まった――。
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*******
稽古場に剣がぶつかり合う音が響く。勝負もそろそろ終盤というところだった。
ブラストの腕は流石というものだったが、テリーがブラストを押しているようにも見える。後ろでは、兵士達の色々な歓声が聞こえた。
レント(確かにテリーは強い。もしかすると、俺ですら勝てないのでは?
――いや、この俺が弱気になるなんて珍しいな)
そう皮肉に思ったところで、王と王妃が二人の戦いを見に来た。
王「おお、やっとるやっとる!」
妃「残念。少し遅かったようね。あら、レントも見に来ていたの?」
『父様、母様』
二人はレントの両親であり、アークボルト国王と王妃である。
彼女同様、戦いが大好きな二人はテリーの噂を聞いてやって来たのだろう。
二人共久々に見る戦いファイトに興奮してるが、少し遅く来たことを残念そうにしている様子。
王「あのガルシア達を倒した挑戦者じゃからな。
きっと腕の立つ旅人だと思ったのじゃよ」
『確かにそうですね……』
レントもただ純粋に、嫉妬でもしてしまいそうなくらいテリーの実力に感心していた。
暫く勝負を見ていると、次の瞬間のテリーの一撃でブラストが倒れた。
妃「まぁ、勝負がついたようよ!」
『――!ブラスト兵団長!!』
レントは心配そうに、倒れたブラストの傍に駆け寄る。
『ブラスト!大丈夫か!?』
ブ「御心配には及びませんよ、王女――ッ!」
ブラストは苦しそうに怪我を負った肩を手で押さえながら、ゆっくりと立ち上がった。
『今すぐ教会で治療を』
兵「「「はっ!」」」
すぐさま数人の兵士達も駆け寄り、教会へ運んでいった。つまり、これはテリーの勝ち――ということになるのだろう。
レントはブラストを見送り、テリーの方へ振り向いた。そして腰に差していたはやぶさの剣をスッと抜き取り、剣をテリーの方へ向けた。
――戦闘態勢だ。
『次は俺の番……!テリー!この俺と勝負だ!』
テ「面白い。さあ、どこからでもかかってこい!」
テリーも同じように身構え、再びニヤッと笑った。バチバチと二人の間に火花が散る。
二人は同時に剣を振り下ろし、ついにレント対テリーの戦いが始まった――。