第一章 ~王女人生の転機・旅立ち~
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ついに始まった、テリー対レントの勝負――。
テ「はぁあっ!!」
『たぁあっ!!』
二人の気合の張った声、互いの剣と剣がぶつかり合う音が響き合う。
『――……フッ、中々やるようだな』
テ「そっちこそ……」
勝負はほぼ互角だが、どちらかというとやはりテリーの方が押している。
それは無理もない事だ。レントは一応15歳の女の子――力勝負だけでは男のテリーに勝てるはずがない。
二人は、はぁはぁ……と息を切らしながら睨み合う。
テ「どうした、その程度か?もう手も足も出ないんじゃないか?」
『フン、そっちこそ。さっきから一度も休んでいないだろう。疲れが出てきているようだな』
テ「それはどうかな……悪いが、オレはどうしても強くならなければならないんだ。この勝負、オレが勝つ!!」
『ハッ……その台詞、そのままそっくり返してやる。まさか、この俺が本気を出しているとでも思ったのか?』
テ「……何?」
テリーは眉を顰める。冗談を言っているのかと耳を疑ったのだ。
だが、レントの目は本気で、嘘をついているようには見えない。テリーは平気そうにしているが、内心少し焦りを見せている。
言い争いを繰り返す中でレントはフッと笑うと、スッと手持ちのはやぶさの剣を投げ捨てた。
テ「!?」
「「「!!」」」
兵「ヒィ……ッ!?;;;」
ザクッとレントの真後ろの壁に剣が刺さり、その近くにいた兵士のは吃驚している。
レントのその行動に驚くテリーだが、城の兵士達は意味をなんとなく察した。戦場で彼女が剣を放り投げた後する行動を知っているからだ。
目の前で何が起こっているのか全くわからないテリーは、皮肉に鼻で笑ってみせる。
テ「おいおい、剣を捨てて何をしようってんだ?まさか、素手でかかってくるとでも?」
『そんなバカなことする奴があるか。俺にはこの……杖がある』
テリーの問いにレントはそう呟くと、右手の薬指に填めていたサファイアの指輪を抜き取り、空中に高く放り投げた。テリーはその指輪の方をチラリと見る。
すると、ピカーン!と指輪から赤白い光が放たれた。
それに周りが目くらましている間に、その指輪は、青い炎を現すサファイヤのついた長い杖へと姿を変えた。
テ「なっ!?」
『驚いたか?これは炎風の杖――かつて、"炎の魔女"が使ったと言われている伝説の杖だ。見せてやるよ、テリー……お前に、"炎の姫"の力をな……』
レントが杖に力を籠めると、杖の先端に大きな赤い炎が生まれる。そして、みるみる大きくなっていった。しかし、これでも面白いと剣を構えるテリー。
すると、そこへ王が間に入ってきた。
王「す、ストーップ!!;;;」
「『!?;』」
王は、急に二人の勝負を止めたのだ。それに驚く二人。
なにがなんだか解らず、不機嫌になってしまったテリーとレントは、王を強く睨む。
テ「チッ、邪魔しないでくれ」
『父様、酷いです!いい勝負だったじゃないですかっ!』
王「えっ……あ、いやぁ……」
二人の剣幕に驚き戸惑う王だが、ハッと我に返りレントに怒鳴りつける。
王「――ってそうじゃないわい!何を言っとるんじゃ!もう少しで城が壊れるところじゃったろうっ!!;;」
『え?あっ……;;』
テ「……;;」
二人が王の言葉に周りを見渡すと、確かに部屋はほぼ破滅していた。
バキバキに割れた壁や床を見たテリーとレントは、内心焦りながら皮肉に苦笑いする。
『――あ、あはは……ごめんなさい……;;』
王「……ゴホン。テリー殿、そなたの勝ちで良いぞ;;」
レントが珍しくシュン……と王に頭を下げると、王はそれを誤魔化すように咳払いした。
しかし、勝負にこだわっていたわけではないテリーは、それでも不機嫌そうに二人から目線を反らした。
テ「フン、そんな勝利はいらないね。だが、これで北の洞窟へ行けば、雷鳴の剣とやらを貰えるんだな?」
王「左様。さあ、これを持っていくのじゃ」
『……って、棺桶?;』
目を丸くして驚くレントだが、王がテリーに渡したのは、紛れもなく棺桶だった。レントはそこまでするとは知らなかったのだ。確かに、この作戦を決めたのはレントなのだが。
それでも、テリーは察したように王の方へ目線を向ける。
テ「ほぉ……つまり、この棺桶に魔物の死体を入れてこいってことか?」
王「勘が良いようじゃな。全くもってその通りじゃ」
『……北の洞窟、か……』
――本当は、俺も行きたい。この広い世界を見てみたい。
レントはかつて兄と叶えたかったたったひとつの夢を思い出し、そう思っていると、王はそんなレントの心情を察したような表情へと変えた。王は二人がしたその約束を知っているからだ。正確には、ランスの死前に本人達から聞いていただけのだが。
それでも、親が子の夢を応援したいと思うのは当然の事。王はとある提案を二人に持ち掛けた。
王「――……そうじゃ、テリー殿!我が娘レントを共に連れて行ってはくれぬか?」
「『…は?;』」
テリーとレントの声が重なる。当然だ。年頃の娘を若い男に差し出しているのと同じことなのだから。
しかし、それを間近で聞いていた王妃は納得したように微笑んだ。
妃「それはいい考えですわ!貴女もいい歳だしね。行ってきなさい、レント」
『い、いや、いいですよ。テリーに悪いです……;;』
王「お前に拒否権などないぞ。この部屋を壊した敢えてもの罰じゃ」
妃「せっかくだし、これが終わった後もテリーさんの旅に付き合えばいいでしょ?ね、いい考えじゃない!」
『うっ……そんな……;;』
両親に勝手に決められ、涙目で凹むレント。拒否権まで無くされてしまっては、断る事なんて想定不可能だ。
しかし、両親が言っていることは半分嘘。娘の夢を叶えさせてやりたい――そう思う優しい両親の願いなのだ。
レントも行きたかったのは本当だ。幻の大地を見る手掛かりが掴めるかもしれないし、兄との約束は果たせなくとも、この世界をこの目で見ることはできる――そう思った。
――テリーと一緒に旅をする……それは、兄さんとの夢を叶える代わりになるの?
一瞬戸惑いはあったものの、レントはテリーの方へ向き直った。
『あの、テリー……俺も一緒に旅しても……いいかな?』
テ「……俺は別に構わんが」
『あ、ありがとう!宜しくな、テリー!』
テ「――っ!べ、別に///」
テリーは、喜ぶレントの微笑みに思わず頬を赤く染めた。勿論、鈍感なレントは気づいてはいないが。
そんな二人を、王と王妃も周りの兵士達も、微笑ましそうに見つめて和んでいた。それと同時に、レントが幸せそうに笑ってくれているこの現実にとても安心していた。彼女がそれだけ、この国の皆に愛されているという事なのだろう。
王「青春じゃのう……」
妃「本当、若い頃を思い出しますわね。テリーさんにならレントを任せられます。なんだか誰かさんに似ていますしね」
王と王妃は微笑み合う。"誰かさん"――それは、恐らくランスの事だろう。
クールに見えて少し子供っぽく天然。そして、戦うことが好きで、好きな事をすると夢中になり、周りが見えなくなる。そして、自分の周りに人を寄せつかせたくなさそうな冷徹な雰囲気が、彼とランスが似ていると言われる理由だろう。それがあり、王と王妃も、この国の者達が皆、余程テリーが気に入ったらしい。
王「テリー殿、不束者の娘じゃが良くしてやってくれ」
『…ってことだ。これから宜しくな、テリー』
テ「――……ああ、宜しく頼むぜ。レント」
こうして、最強の剣士を目指す青年テリーと、アークボルトの炎の姫レントの冒険が始まったのだった――。