運命は愛を呼ぶ 【楓様リクエスト】
ユ「――っ!ここは、どこだ……?」
ユーリとレントが目を開くと、見慣れない不思議な景色があった。
レントは、これもさっきと違う"異世界"だと気づき、溜息を吐いた。
レ「また"異世界"か……これで7回目なんだが……;;」
ユ「お前……さっきも思ったけど、慣れてるみたいだな;;」
レ「まあ、この手で救ったのは異世界しかないからな……;;」
ユ「……ある意味凄いな、それ」
ラ「ワンッ」
ユーリが苦い表情をし、ラピードが同情したように吠えると、タヌタヌの声が二人の脳内に響き渡ってきた。
タ「聞こえるかの~」
レ「あっ!テメェ、ショタジジイ!よくも騙してくれたな!さっさと元の世界に戻せっ!!💢」
姿が見えないタヌタヌに向かって、怒りを見せるレント。
レントが少しキャラが崩壊しているように感じるが、恐らく気のせいだ。
ユ「お前、さっきから人格崩壊してないか?;」
レ「いや、元々こんなんだから(気のせいだろ)」
タ「レントよ、心の中と台詞逆になっとるぞ。それと、ショタジジイはやめてくれ。まあいい。そんなことより、元の世界になら戻れるぞ~!」
ユ・レ「「戻れんのかよ!?;;」」
二人の声が重なる。なんだかんだいって、この二人は息がピッタリだった。
そんな二人の様子を伺い、少しニヤニヤと微笑ましそうに思いながらも、タヌタヌは話を続ける。
タ「戻りたい時にオイラに心の中で話しかけてくれれば、いつでもマジックツリーハウスに呼ぶことができるぞ」
ユ「じゃあ今すぐ戻してくれよ」
タ「じゅ、準備までに一ヶ月かかるのでな……」
レ「使えねぇジジイだな……💢」
タ「あの、せめてオジサンでお願いします……」
レ「どっちでも同じだろ。丸焼きにして食うぞ((睨」
タ「あの、目が怖い……圧が恐いんですけど……;;;」
タヌタヌは、誰もいない空を睨む不機嫌そうなレントの殺気を感じ、ビクビクと怯えていた。
ユーリは、そんなレントを宥めるように落ち着かせた。
ユ「まあまあ、落ち着けって。一ヶ月何とか頑張るしかねぇだろ。で、オレらにこの世界のどこを救ってほしいって?」
タ「うむ、実はな……この世界は、人間とポケットモンスター――略して、ポケモンと呼ばれる魔物達が共存する世界なのじゃが、最近流行り病でポケモンが減ってきて大変なのじゃ」
レ「成程ね、でもそれを助ける術なんてあるのか?」
タ「それを救えるのは、異世界の治療の力なのじゃ」
ユ「レントは治療術の使い手なのか?」
レ「いや、俺は炎使いだが。あ、ホイミは使えるし一応そうか……」
ユ「……訳解んねぇ。ホイミってなんだ?」
レ「異世界だと呪文の名前も異なるのか。こんなことは初めてだ……」
レントの言う通り、何度も異世界に行っている彼女だが、常識が違う世界に来たのは初めてだった。
レントは炎使いであるにも係わらず、ホイミ系の回復呪文を使うことができる。だから、この世界を救うにはピッタリな存在だったのだろう。
しかし、ユーリは元騎士。そんな術を持っていないユーリは、少し嬉しそうな表情でタヌタヌに呼びかけた。
ユ「だが、こいつはいらぬ誤算だったな。オレは治療術は使えねぇんだ。他をあたってくれ」
タ「いや、ユーリには他の事を手伝ってもらいたいのじゃ。実は、いろいろな世界から魔物が出始めてな。首都が今危険なんじゃよ」
ユ「成程、オレはそっちの役ってわけね」
降参とでも言うような表情で手を挙げるユーリ。これ以上タヌタヌに何か言ったとしても、もう無駄だという事であろう。
タ「勿論、一ヶ月経ったら元の世界に戻ってくれても構わん。それまでの間、頼めんか?」
レ「どうせ、本当は一ヶ月経っても返す気はないんだろ?まあ、こんなところで死人を出しても困るし、少しは協力してやるかな……」
ユ「そういうことだ。まあ、一ヶ月くらいなら、なんとかなるかもしれねぇな」
タ「おお、やってくれるか!では後は任せたぞ!
――ああ、そうそう……忘れておった。それまで二人が住む家は、ここから北に行った森に用意させてもらった。東の方に行くと町があるから、困ったらそこに行くといい」
レ「お、おい!ちょっと待て!何でよりによって森に――」
タ「――では頼んだぞ!さらば!」
レ「話を聞け――っ!!💢」
そう言い残すと、タヌタヌはさっさと二人の脳内から離れていった。
ユーリとレントは、少し嫌そうな表情で何かを察した。
ユ「……おい、嫌な予感がするんだが;;」
レ「俺もだ。どうやら、これで終わりではないみたいだな;;」
顔も合わせられないまま、時はどんどんと流れていく。
その後、二人に大きな難問が待ち構えていることは言うまでもない――。