運命は愛を呼ぶ 【楓様リクエスト】
さあ、こちらの世界へお越しなさい……
そして、貴方達の一つの光で、異世界を救うのです……
貴方達に、光あらんことを……
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「――っ!!」
こちらは、レント・アークボルト。
妙に長い夢から、やっと解放されたところだ。
彼女とその仲間達が大魔王デスタムーアを倒してから、今日で半年になる。
レントは世界を救った後、すぐさまアークボルトの女王となり、最愛の恋人であるテリーという青年と幸せに暮らしていた。
しかしテリーには、"最強の剣士になる"という昔からの夢があった。
それを応援する為、城を出ていくテリーをレントは止めはしなかった。大魔王を倒して魔物がいなくなったので、テリーなら一人大丈夫だと安心していたからだ。
しかしその結果、テリーは旅の途中、突然出現した魔物に殺されてしまった。
かつて、彼女の兄を殺された時のように――彼女はまた、大切な人を守れずに悲しみに満ちた時を過ごしていた。
レ「――――"異世界"か……」
最愛のテリーと出会ったのも、木に包まれた"異世界"だった。
夢で出てきたその単語を、レントはポツリと呟いた。どうしてもその言葉が気になって離れなかったのだ。
レ「――頭イタ……風にでも当たってくるか……」
重い頭を無理やり起こして、レントは自室を後にした。
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レ「……テリー、兄様、おはよう」
話しかけるようにそう呟くレント。
レントが来た場所は、ランスの墓場――つまり、ランスの亡くなった戦地だった。
城から南へ進むと、すぐに見えてくる深い森――ランスの遺体は、そこで発見された。そして、偶然か意味があるかは不明だが、テリーの遺体もそこで見つかったのだ。
レントは、テリーが亡くなってしまってから、"俺"が蘇ってきてしまった。
七年前――優しくて明るかった彼女が、最愛の亡き兄に似た性格になったのと同様にだ。
テリーとランスが元々似ていたからなのか、彼女の冷たい青い瞳は、まるで二人を割ったようなものになっていた。
レ「……ハハッ。ランスのいない世界は慣れたつもりだったけど、テリーのいない世界は全く慣れないや……」
レントは、二人の墓の前で、そう皮肉に笑ってみせた。
彼女の瞳にうっすらと涙が浮かんだその時。
?「キューッ」
レ「……?」
近くで、何かの鳴き声のようなものが聞こえた。
レントはよく耳を澄ませ、周りを調べていると、近くの木と木の枝の間に、黄緑色の妖精のような生き物が挟まって苦しそうにしているのを見つけた。
?「キュー……」
レ「なんだ?お前……もしかして、苦しいのか?
――魔物にしてはやけに可愛いし……放っておくのも可哀そうか。ほら、今助けてやるからな」
レントは、その妖精のようなものに近づき、枝とその小さな体をゆっくりと離した。
すると
ピカーン!!
と、眩い光がレントの目の前に現れた。
レ「なっ、なんだっ!?Σ」
レントは驚きながらも、その光の中へ吸い込まれていった。
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ユ「おい、ラピード!どこ行くんだ!」
ラ「ガウッガウッ!」
こちらはユーリ・ローウェル。彼も旅を終えてのんびりとした日々が戻っていた。
ある日の朝、散歩中に突然駆けだしたラピードを、ユーリは駆け足で追っていた。
ラ「ガウッ!」
ユ「どうした?そんな茂みの中、何も出ないぞ……――ん?なんだ?これ……」
ユーリ――彼も同じように、黄緑色の妖精(?)を見つけた。妖精(?)は、茂みの傍で傷だらけの状態で倒れていた。
ラピードはこれの気配を察知し、教えてくれていたのだ。
ユ「ラピード、これを教えてくれてたのか?」
ラ「ワンッ!」
ユ「そうか、ありがとな。さてと……こういうのはガラじゃねーが、こんなところに見捨てるのもなんだしな。確か、予備のライフボトルがあったはず……
――おっ!あったあった……」
ユーリは予備のライフボトルをカバンに入れていることに気が付き、それを取り出した。
そして、その妖精(?)にライフボトルを使うと、傷は綺麗に治っていった。
ユ「こんなもんだな。さて、こいつが目覚めるまで待とうぜ、ラピード……――ん?」
ユーリもレント同様、妖精(?)から溢れ出る光に反応する。
それに驚いていると、ユーリとラピードも同じく、光の中に飲み込まれてしまった。