運命は愛を呼ぶ 短編集
オニオンと悟飯は、同じ部屋で一緒にいた。
オニオンは母親の形見の指輪を見つめていて、悟飯は静かに本を読んでいた。
悟飯は、ソファーに座っているオニオンにふと目がいった。
飯(――気になるなぁ。
いや……でももしかしたら頼んだら……いけるかな……?
うーん……でもなぁ…………)
首を何度もブンブンと横に振るが、駄目だ。悟飯は、頭の中がその欲求で埋め尽くされてしまった。
飯(ああ、もう……我慢できない!
やっぱり頼んでみよう。もし断られたら諦めればいい。
よし……!)
飯「ね、ねぇ、オニオンちゃん!ちょっといいかな?」
オ「……何?」
飯「その……なんというか……」
オ「???」
悟飯は少し惑いながらも、勇気を出そうと心得た。
飯「み、耳や尻尾とかさ……触らせてくれないかな?」
オ「……え?」
オニオンは仮面越しでも分かるくらい驚いている。
悟飯は、彼女の反応をウズウズと待っていた。
――あのケモ耳や尻尾はどんな感触なんだろうか。
そんな欲が頭を横切っていた。
飯「ダ、ダメかな……?」
オ「えっと……そのくらいならいいけど……」
飯「え、本当に!?」
オ「え、うん……」
――や、やった!
と、悟飯は心の中で小さくガッツポーズを作った。まさか許可してくれるとは思わなかったのだろう。
悟飯はゆっくりと深呼吸すると、真剣な表情でオニオンに向き直った。
飯「じゃ、じゃあ触るよ……?」
オ「……どうぞ」
悟飯はオニオンに近づき、両手でゆっくりとケモ耳を掴んだ。
もふもふ……
…………
飯「うわぁ……!
(思ったより柔らかいんだ。それにもふもふしてて触り心地がいい……!)」
オ「んっ……//
その……んっ……//
あまり、強く触られると……はぅ……///」
飯「ご、ごめん!;;」
顔を赤くして恥ずかしがるオニオンに、悟飯はたじろぐ。
つい夢中になってしまい、触りすぎてしまったのか。
飯(よ、よし、次は尻尾だ……)
オニオンの後ろに移動して座り、尻尾を優しく掴んでみた。
オ「ひゃっ!///」
飯「あ、ごめん!痛かった?」
オ「う、ううん……ちょっとビックリしただけ……//;;」
飯「そ、そう?」
オ「構わず続けて……」
思わずビックリしたが、とりあえず大丈夫みたいだし、このまま触らせてもらうことにした。
もふもふ……
…………
それはかなり触り心地が良かった。
尻尾はもっと毛深く、更にもふもふとした感触だ。
飯(ああ、本当にいい手触りだなぁ……)
いつまでもこうしていられる。
ずっと触っていたい……
――そう思っていたが、危うく我を忘れるところだで我に返った。
飯「ご、ごめんね……つい夢中になっちゃって……」
オ「ううん、大丈夫……」
これ以上は危ないので、悟飯は尻尾から手を離した。
オニオンを見ると少し俯いてるし、顔も赤くなってる気がする。流石にやりすぎたようだ。
飯(でも、気持ちよかったなぁ……)
あの感覚は飽きなくて、つい癖になってしまっていた。
――また今度も触らせてもらおう。
そう心に決めると、悟飯は一つの疑問を頭に浮かべた。
飯「――そういえば、オニオンちゃんの耳と尻尾って…………」
オ「……」
飯「あ、言いたくなかったらいいんだけどさ!なんでついてるのかな~って……アハハ;;」
悟飯が苦笑いして誤魔化すと、オニオンがフッと小さく笑って窓辺に移動し、窓から星空を見上げた。
オ「いつもお父さんとお母さんが言ってた。これは、"神様がくれた宝物"だって……」
飯「オニオンちゃん……」
オ「お父さんもお母さんもとても優しくていい人だったのに、"地獄に行っても可笑しくない"って言ってた。でも、二人ともきっと天国にいるよね……?一緒にそこで僕を見て笑ってくれてるよね……?」
暗い表情になってしまったオニオンを、悟飯は心配そうに見つめていた。だが見ていられなくなったのか、オニオンの元に駆け寄り、彼女の手をギュッと握った。
飯「きっと大丈夫。オニオンちゃんのお父さんとお母さん、きっと天国にいるよ。オニオンちゃんを見守ってくれてるよ」
悟飯の優しい言葉に、オニオンは嬉しそうに微笑んだ。
オ「……うん、そうだよね。ありがとう悟飯君」
互いに、二人の距離がほんの少しだけ縮まった気がした。
そんな微笑ましい姿を、二つの魂と光る星達が微笑んでいた――。
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