【イヌココ+ココ赤】恋を待たぬ少年、春を駆ける
*アテンション*
・最終軸のココ赤&イヌココ
・モブ赤要素アリ
・付き合ってないココ赤が破局してイヌココがハピエンする
・武道以外のキャラに過去軸(赤音さんが死亡している世界線)の記憶がある
・深く考えずに書いたので深く考えずに読んでください
◇
燃え盛る家の中から赤音を背負って出てきた彼の姿を見た時、青宗の脳裏に様々な記憶が流れ込んで来た。その記憶の中では、九井に助け出されたのは青宗で、赤音は全身に酷い火傷を負い死んでしまっていた。彼の目の奥に潜んだ仄暗い愛情を受け入れた少年時代。言いたいことを言えずに過ごした青春と、どう足掻いても叶わないと押し殺した恋心。
「イヌピーくん! じゃあオレ行きますから!」
弾けるような明るい声に記憶のテープがぷつんと途切れる。ぐわん、と脳内が揺れる感覚がした。小学生の小さな脳みそにこの記憶はキャパシティオーバーだ。それでもどうにか情報処理をしようと青宗の頭はぐるぐると記憶を掻き回していく。
「あ、ちょ……ま、おまっ、ゲホッ」
火の届かない安全な場所に青宗を避難させた少年はそのままパタパタと駆けて行ってしまった。同い年くらいなのに全然見たことない少年だ。けれど、ぐらぐらと揺れる海馬の奥で彼の名前が浮かび上がる。
「……っ……は、な……がき?」
◇
火事の一件が落ち着くまでしばらく。ようやく学校にも行けるようになった頃、突然流れ込んできた未体験の記憶についても整理がついた。それは青宗が経験した人生ではないが、確かに青宗が生きた人生だった。過去の人生とでも言えばいいのだろうか。俄かには信じ難いが、確かにあの記憶を生きたとこの心が言っている。何がどうしてこうなっているのかまでは分からないが、この件にはおそらくあの少年が関係しているだろう。花垣武道。色々聞き出したいことがあるのに、あの夜以降会えていない。
彼は九井の代わりに青宗を助け、死ぬはずだった赤音を九井に救わせた。つまり、彼は前の人生での九井の悔いを知っている、と考えていいだろう。そうでなければ武道が赤音を助けたって良かったはずだ。わざわざ九井に赤音を助けに行くよう言ったのにはそれなりの理由があるはず。
この世界に自分たちを導いたのが武道なのだとしたら、ある種彼はこの世界の神と言えよう。
ストレートに考えれば、武道は九井と赤音が結ばれることを望んでいる。それは青宗とて同じ気持ちだ。
過去の人生で青宗は九井と共に生きた。それを強要したわけでも、強要されたわけでもない。ただ互いが隣にいたいと思ったからそうした。例えそれが己を傷つけるとわかっていても離れようとは思わなかった。それは単に彼のことが好きだったからだ。恋とか愛とかそういう月並みな言葉で片づけるには些か複雑な想いではあったが、己の命など捨ててしまっても良いと思えるほど彼が好きだった。だからこそ、今世では自分ではなく赤音と共に生きてほしいと思う。
好きな人の幸せを一番に願える自分でありたい。過去の人生では、そうは生きられなかったから。
何より。武道の導いたこの世界が正解で、正しいものだとしたらそうするのが世の理というものだろう。
「イヌピー、一緒帰ろ」
「うん」
ランドセルを背負った九井は心なしか浮ついて見える。それもそうか。この時間に下校すれば赤音の下校時間と被る。下校が被ったらそのまま一緒に図書館で宿題をするのがこの二人のルーティンだ。
今日の授業内容や給食の話をしながら家路をゆっくり歩いていると、案の定、数メートル先に赤音の背中を見つけた。九井の顔がパッと明るくなる。
「赤音さん!」
「あ、はじめくん。青宗も」
パタパタと嬉しそうに駆けて行く九井のあとをのんびりついていく。そんな嬉しそうな顔して何を話しているんだか。先ほど青宗と話していた時とは打って変わってちょっぴりおませな表情だ。少しでも彼女に釣り合うよう大人っぽく振舞っているつもりなのだろうが、嬉しい気持ちが滲み出ていて大人のかっこよさには程遠い。
青宗が二人に追いつく頃にはもう図書館へ続く分かれ道まであとちょっとになっていた。
「じゃあ私図書館寄って帰るから」
「うん。また明日ね、赤音さん」
「えっ」
一緒に行かないのか? と目を丸くして九井を見ると、彼はニコニコと笑いながら青宗の手を引く。
「今日一緒に家でゲームする約束だろ。はやく行こ」
そういえばそんな約束をしていたような気がする。すっかり忘れていた。いや、それよりも。もしかして彼らのデートを邪魔してしまった?
九井が赤音のことを好きなのは変わらないとしても、赤音が九井のことを好きなのかどうかまでは知らない。もし青宗が二人の時間を奪ってしまうことで彼の恋が実らなければ……。そんなことあってはならない。
「っ、やだ!」
「えっ?」
ぶんっと手を振ると握られていた手が離れた。びっくりした顔で固まったままこちらを見つめる九井。青宗は居心地が悪くなってふんっと顔を背ける。
「やっぱゲームすんのナシ。オレ学校戻ってサッカーする」
「えぇっ?」
「じゃーな! 5時には帰れよ!」
住宅街の真ん中に九井を残し、青宗は来た道を全力で駆け戻る。これで彼は図書館に行くだろう。ゲームをする気分だったら申し訳ないが、こちらとしては少しでも多くの時間を彼女と過ごしてもらわなければ困る。
これは、過去では成し得なかった正しい未来をつくるための第一歩だ。
息を切らしながら誓う。九井の恋を必ずや実らせてみせる、と。
青宗はそのまま学校に戻って宣言通りクラスメイトたちとサッカーをして時間を潰し、17時のチャイムが鳴るとまた小走りで住宅街を進む。
家に帰ると赤音の姿があった。いつもはチャイムが鳴るまで九井と一緒に宿題してるのに、今日は少し早い解散だったのかと靴を脱ぎ捨ててソファでくつろいでいる赤音の元へ急ぐ。
「なぁ、ココもう帰った?」
「ん? 青宗がはじめくんの家から帰って来たんじゃないの?」
「オレ今学校から帰って来たんだけど」
「えっ、今日青宗と一緒に遊ぶって言ってたけど……」
「あー……それナシになった」
「もー。はじめくんすっごく楽しみにしてたよ? 明日ちゃんと謝りなね」
「ん、わかった」
どうやら彼は図書館に行かずまっすぐ帰ったらしい。まさかそこまでゲームを楽しみにしていたとは。いや、青宗が九井を図書館まで送り届ければよかったのかもしれない。
二人が両想いになるには兎にも角にも二人きりの時間が必要だろう。恋愛とかよくわからないけど、多分。
あとは、赤音が九井のことをどれほど好いているのかが現時点での問題ではなかろうか。
「……なぁ、赤音ってココのこと好き?」
「ん? うん、好きだよ」
どう切り出せばよいものかと直球で聞いてみたものの、この感じはおそらく欲しかった答えじゃない。犬が好きとか猫が好きとかと同じ部類だ。恋愛事に疎い青宗とてさすがにわかる。しかし、恋愛的な意味で好きかどうかを深堀りしたところで逆効果な気もしなくはない。少なくとも赤音自身は九井をそういう目で見ていない。まぁ、それもそうだろう。なんせ相手は小学生だ。さすがに今の九井は恋愛対象としては子供すぎるか。
勝負を仕掛けるならせめて中学生になってからがいいだろう、と青宗の脳内会議で決議する。とは言え、今から地道に根回ししておくのも悪くはない。少しでも赤音が九井のことをひとりの男として意識するよう、この時から彼のかっこよさについて擦り込んでおくか、と、赤音の隣にそろりそろりと近づいた。
「……オレもココ好きー。かっこいいよなー、頭いいし、クラスの女子にもモテるんだぜ」
「そうなんだ。はじめくんイケメンだもんね」
「将来有望だよなー。今のうちに唾つけとけよ」
「ちょっと、そんな言葉どこで覚えてくるの」
小学生らしからぬ物言いに肩を揺らす赤音はどこか大人っぽい。不思議な気分だ。過去の記憶では彼女が大人になることはなかった。だが、赤音は今こうして生きていて少しずつ大人に近づいていっている。彼女が歩む未来があることがどれだけ尊いことなのかをひしひしと感じて胸が痛む。嬉しいのに痛いって変な感じだ。
「……ココはさ、赤音のこと大好きだから、多分ずっと守ってくれるよ」
「うん?」
「赤音が今生きてるのもココのおかげだろ」
青宗の言葉に彼女は数回瞬きをした後、ゆっくりと俯いた。膝の上で爪を撫でて、こくん、とひとつ頷く。
「……うん。そうだね。はじめくんにはほんとに感謝してる」
「かっこよかったよな、ココ」
「うん。スーパーヒーローみたいだった」
そういってはにかむ赤音に、これは脈ありだな、と心の中で小さくガッツポーズをした。
◇
青宗と九井は小学校までは一緒だったものの、中学は別々の学校に通うことになった。彼が通うのは所謂進学校というヤツで、頭のいい子供しか入学できない。青宗とて、九井と一緒の学校に行くためならば頑張って勉強をしたかもしれないが、受験というものは合格がゴールではない。入学した先で何を学ぶかが重要だ。青宗は机に向かってペンを走らせるよりも外で体を動かしている方が好きだ。テストだのなんだのと毎日勉強漬けはゴメンである。何より、九井と赤音の時間を増やすには自分は別の学校の方が都合がいいだろうと考えていたのもある。小学生の頃から続くささやかな放課後デートを楽しむがいい、と思っていたのだが。
「イヌピー。一緒に宿題しよー」
「オマエ学校違うだろ……」
「でも宿題あるのはイヌピーも一緒だろ?」
「……はぁ」
8月。夏真っ盛り。
学校が夏休みに入ってから約2週間。九井は週に3日ほどこうして宿題をしに乾宅にやって来る。一緒に宿題と言ったって進学校と不良校の偏差値の差は歴然だ。もはや青宗とは別次元の課題をしている九井にとって、自分と一緒に宿題をするのは何のメリットもない。
「赤音と一緒に宿題しろよ。そっちのがベンキョーになるだろ」
「赤音さん受験生だからそんなこと頼めないって」
そう。赤音は今年高校3年生。大学受験に向けて必死に勉強をしている最中である。火事の件もあってあまり貯蓄がない我が家のため、進学に少しでも金をかけまいと努力する姉の邪魔をできないのは青宗も同じだ。
「ココが大学生くらい頭良かったら家庭教師できたのにな」
「どんな神童だよ」
「シンドー?」
「いいから宿題するぞ」
「オレ漫画読む~」
「そうやって一昨日も教科書開かなかったろ」
半ば引きずられるようにしてリビングに連れていかれる。渋々教科書とノートを出して机の上に積んでみたが全然やる気が起こらない。そもそも宿題ってなんだ。休みなんだから勉強とかしたくない。
「イヌピーって方程式もう習った?」
「あー……? さぁ……?」
「習ったかどうかくらい覚えてねぇのかよ」
「うーん……」
数学の教師がそんなことを言っていたようないなかったような。そもそも数字を見ると魔法にかかったみたいに眠たくなってしまう。こちとら意識を保つだけで精一杯なのだ。授業内容など頭に入らないに決まっている。
ちらりと九井を盗み見ると、彼は真面目にカリカリとノートにペンを走らせていた。やりたくないが宿題をやるしかないか。ていうか宿題って何があったっけ。まずはそこからだなぁ、と机の上に突っ伏すと玄関の開く音がした。軽い足音と共に赤音がリビングに入ってくる。
「あ、はじめくん来てたんだ」
「お邪魔してます」
「おかえり、赤音」
「ただいまぁ。今日も暑いね」
赤音は首元の汗をハンカチで拭いながら重たそうな手提げ鞄をリビングの隅っこに置いた。
「はじめくんに宿題見てもらってるの?」
「別にぃ」
「私もお昼ご飯食べたら一緒に勉強しようかな」
適当に髪の毛を後ろでひとつ結びにした赤音は手を洗った後キッチンに直行すると冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出した。
「図書館で勉強してたんじゃなかったのかよ」
「うん。でも図書館じゃごはん食べられないから一回帰ってきたの」
「あー」
「勉強ってみんなでやったら捗りそうじゃない? 青宗がひとりで勉強してるとこ見たことないし」
喉を潤した彼女は再び冷蔵庫を開ける。少し大きめの皿を取り出すと、一口サイズに綺麗に巻かれた夏の風物詩がこれでもかとみちみちに並んでいた。
「あ、お昼そうめんだ。青宗はもう食べた?」
「まだ」
「はじめくんは?」
「オレは食べて来た」
「どうせ食えるだろ。一緒に食べようぜ」
「んー……じゃあちょっとだけ」
「いっぱい食べなよ。どうせお母さんもそのつもりでこんなに湯がいたんだと思うよ」
卓上から宿題を取っ払って昼食の準備をする。机を拭いて、コップに麦茶を注いで、大皿に乗ったそうめんと三人分のつゆ鉢と箸を並べた。
いただきますの号令と共に次々と大皿からそうめんが消えていく。冷蔵庫の中で固まった麺がつゆの中で解け、茶色く染まったそれを一気にすすると出汁のいい香りがふんわりと鼻孔に広がる。簡素な昼食だけどこういうのが一番おいしい。
「やっぱ夏はそうめんだよなー」
「イヌピー、昼飯食ったら宿題しろよ」
九井の小言に青宗はそうめんを頬張ったまま彼をじっとりと睨む。せっかくの昼食が台無しだ。当の本人はお行儀よくそうめんを啜っている。食べて来たという割によく食う男に負けじと箸を運ぶ。
「いいなー青宗は。はじめくんみたいな頼れる先生がいてくれて」
「あー? ウゼェだけだよ」
「コラ」
ぺち、と後頭部をはたかれて手に持っていたつゆがちゃぷんと波打った。進学校に通う九井と大学受験を控えた赤音。この二人にとって勉強は毎日の日課で生活の一部なのだろうが、青宗はそうじゃない。できれば勉強などせず楽しいことだけして学生生活を謳歌したいのだ。
なのに九井ときたら、頼れるお兄ちゃんでも装っているつもりなのかこうやって青宗の世話を焼いて。赤音の前だからと借りて来た猫のように静かにそうめんなど食って。同い年かもしれないが年齢的には青宗の方が上である。将来赤音と結婚したら彼は青宗の弟だ。未来の弟のおすまし顔に一発食らわせてやろうと青宗はニヤリと口角を上げる。
「大体さー、ココも下心があってウチに来てんだろ」
「え?」
「涼しい顔して心ん中では、大好きな赤音に会えるかも~って鼻の下伸ばしてんだぜ」
「ンッ、ぶっ、な、そんなわけ……!」
食べかけのそうめんに咳き込む九井を見て青宗は得意気に笑う。この慌てよう、どうせ図星だろう。彼がどれだけ赤音のことを好きだったかなんて青宗が一番よく知っている。なんなら九井本人よりもわかっているつもりだ。青宗には過去の記憶があって、九井にはないのだから。もう、いやというほど知っている。痛くて苦しくて泣きたくて、叫び出したいくらいに覚えているのに。
「適当なこと言うな!」
「おいおい照れてんのかぁ~? このむっつりスケベ」
「イヌピー!」
ガタンッと九井が勢いよく立ち上がると同時に机が揺れてつゆ鉢がひっくり返る。涼しげな水音と共に茶色い液体が床へと飛び散った。
「あっ! 大変……!」
足元にこぼれた液体はばちゃりと跳ねて九井のズボンを濡らし、裾からふくらはぎにかけて茶色くまだらなシミがじんわりと広がっていく。赤音は咄嗟にティッシュを数枚抜き取ると濡れた箇所をぽんぽん叩いた。
「ご、ごめん赤音さん……!」
「今のは青宗が悪いから気にしないで」
「ちぇー。またオレが悪者かよ。赤音、ココにあまいよな」
青宗もぶすっとした顔でリビングを出ると着替えを取りに自室へと移動する。いたたまれなくなった九井はせめて自分の服は自分でどうにかしようと赤音に声をかけようとした時、彼女の手がズボンの裾を持ち上げた。その拍子にちらりと九井のくるぶしが見える。途端、赤音はぴたりと動きを止め、その一点をじっと凝視して恐る恐る顔を上げる。
「はじめくん……これ……」
「あー……とうとうバレちゃったか」
九井は仕方ないと言わんばかりにひとつ苦笑するとズボンの裾をを二回折り畳んだ。露わになったそこにはうっすらと火傷の痕がある。範囲も狭くそこまで目立つものでもないが、皮膚の色が違うことは一目瞭然だ。おそらく、これ以上治癒することはないだろう。
「いつまでも隠しとくの無理だろ、さすがに」
リビングに戻ってきた青宗は着替え用のズボンを九井に乱雑に押し付ける。
火事以降、彼が長ズボンしか穿かない理由。親や友達には見せられても赤音にだけはどうしても見せられなかったのは、この傷はあの火事で負ったものだからだ。
「……それ、もしかして、私の、せい……?」
「違う違う! オレが足元見てなかったから」
「でも……」
「気にしないでよ。男の勲章。ね」
そう言って笑う九井を見つめる赤音の表情は、己だけがこの事実を知らなかったことへの自責の念で酷く暗かった。
「オレが助けたいって思ったから助けたんだ。だから、そんな顔しないで、赤音さん」
それはどこまでも純粋な九井の本心だ。けれど、だからこそ、余計に罪悪感に苛まれる。
「ココ、着替えて来いよ。なんなら風呂使ってもいいぜ。ついでに足とかズボンも洗いたかったら洗え」
「サンキューイヌピー……って、短パン以外ねーの?」
「文句言うな」
着替えの短パンを広げて不服そうに口をへの字に曲げる九井を脱衣所へ押しやると扉を閉めた。赤音はティッシュを握り締めたまま汚れた床をじっと見下ろしている。
「……青宗は、知ってたの?」
「……うん」
「そっか……知らなかったの、私だけなんだね」
赤音は茶色に染まったティッシュをゴミ箱へ捨てると濡れ布巾で床を拭いていく。重い沈黙に耐えかねて青宗はぽつりと赤音に問う。
「……なんで、とか聞かねぇんだな」
「だって、わかるもん……。私、大人になるまではじめくんのこと待つって、約束したから」
彼女とて九井の想いに気づいている。彼が何も言わない理由も、その優しさも、全部が愛しくて苦しくなるほどに。
「赤音は、ココのこと好きなのか?」
「……うん。好きだよ」
また少し大人っぽくなった彼女の笑顔に、青宗はちくりと自分の胸が痛むのを無視した。
・最終軸のココ赤&イヌココ
・モブ赤要素アリ
・付き合ってないココ赤が破局してイヌココがハピエンする
・武道以外のキャラに過去軸(赤音さんが死亡している世界線)の記憶がある
・深く考えずに書いたので深く考えずに読んでください
◇
燃え盛る家の中から赤音を背負って出てきた彼の姿を見た時、青宗の脳裏に様々な記憶が流れ込んで来た。その記憶の中では、九井に助け出されたのは青宗で、赤音は全身に酷い火傷を負い死んでしまっていた。彼の目の奥に潜んだ仄暗い愛情を受け入れた少年時代。言いたいことを言えずに過ごした青春と、どう足掻いても叶わないと押し殺した恋心。
「イヌピーくん! じゃあオレ行きますから!」
弾けるような明るい声に記憶のテープがぷつんと途切れる。ぐわん、と脳内が揺れる感覚がした。小学生の小さな脳みそにこの記憶はキャパシティオーバーだ。それでもどうにか情報処理をしようと青宗の頭はぐるぐると記憶を掻き回していく。
「あ、ちょ……ま、おまっ、ゲホッ」
火の届かない安全な場所に青宗を避難させた少年はそのままパタパタと駆けて行ってしまった。同い年くらいなのに全然見たことない少年だ。けれど、ぐらぐらと揺れる海馬の奥で彼の名前が浮かび上がる。
「……っ……は、な……がき?」
◇
火事の一件が落ち着くまでしばらく。ようやく学校にも行けるようになった頃、突然流れ込んできた未体験の記憶についても整理がついた。それは青宗が経験した人生ではないが、確かに青宗が生きた人生だった。過去の人生とでも言えばいいのだろうか。俄かには信じ難いが、確かにあの記憶を生きたとこの心が言っている。何がどうしてこうなっているのかまでは分からないが、この件にはおそらくあの少年が関係しているだろう。花垣武道。色々聞き出したいことがあるのに、あの夜以降会えていない。
彼は九井の代わりに青宗を助け、死ぬはずだった赤音を九井に救わせた。つまり、彼は前の人生での九井の悔いを知っている、と考えていいだろう。そうでなければ武道が赤音を助けたって良かったはずだ。わざわざ九井に赤音を助けに行くよう言ったのにはそれなりの理由があるはず。
この世界に自分たちを導いたのが武道なのだとしたら、ある種彼はこの世界の神と言えよう。
ストレートに考えれば、武道は九井と赤音が結ばれることを望んでいる。それは青宗とて同じ気持ちだ。
過去の人生で青宗は九井と共に生きた。それを強要したわけでも、強要されたわけでもない。ただ互いが隣にいたいと思ったからそうした。例えそれが己を傷つけるとわかっていても離れようとは思わなかった。それは単に彼のことが好きだったからだ。恋とか愛とかそういう月並みな言葉で片づけるには些か複雑な想いではあったが、己の命など捨ててしまっても良いと思えるほど彼が好きだった。だからこそ、今世では自分ではなく赤音と共に生きてほしいと思う。
好きな人の幸せを一番に願える自分でありたい。過去の人生では、そうは生きられなかったから。
何より。武道の導いたこの世界が正解で、正しいものだとしたらそうするのが世の理というものだろう。
「イヌピー、一緒帰ろ」
「うん」
ランドセルを背負った九井は心なしか浮ついて見える。それもそうか。この時間に下校すれば赤音の下校時間と被る。下校が被ったらそのまま一緒に図書館で宿題をするのがこの二人のルーティンだ。
今日の授業内容や給食の話をしながら家路をゆっくり歩いていると、案の定、数メートル先に赤音の背中を見つけた。九井の顔がパッと明るくなる。
「赤音さん!」
「あ、はじめくん。青宗も」
パタパタと嬉しそうに駆けて行く九井のあとをのんびりついていく。そんな嬉しそうな顔して何を話しているんだか。先ほど青宗と話していた時とは打って変わってちょっぴりおませな表情だ。少しでも彼女に釣り合うよう大人っぽく振舞っているつもりなのだろうが、嬉しい気持ちが滲み出ていて大人のかっこよさには程遠い。
青宗が二人に追いつく頃にはもう図書館へ続く分かれ道まであとちょっとになっていた。
「じゃあ私図書館寄って帰るから」
「うん。また明日ね、赤音さん」
「えっ」
一緒に行かないのか? と目を丸くして九井を見ると、彼はニコニコと笑いながら青宗の手を引く。
「今日一緒に家でゲームする約束だろ。はやく行こ」
そういえばそんな約束をしていたような気がする。すっかり忘れていた。いや、それよりも。もしかして彼らのデートを邪魔してしまった?
九井が赤音のことを好きなのは変わらないとしても、赤音が九井のことを好きなのかどうかまでは知らない。もし青宗が二人の時間を奪ってしまうことで彼の恋が実らなければ……。そんなことあってはならない。
「っ、やだ!」
「えっ?」
ぶんっと手を振ると握られていた手が離れた。びっくりした顔で固まったままこちらを見つめる九井。青宗は居心地が悪くなってふんっと顔を背ける。
「やっぱゲームすんのナシ。オレ学校戻ってサッカーする」
「えぇっ?」
「じゃーな! 5時には帰れよ!」
住宅街の真ん中に九井を残し、青宗は来た道を全力で駆け戻る。これで彼は図書館に行くだろう。ゲームをする気分だったら申し訳ないが、こちらとしては少しでも多くの時間を彼女と過ごしてもらわなければ困る。
これは、過去では成し得なかった正しい未来をつくるための第一歩だ。
息を切らしながら誓う。九井の恋を必ずや実らせてみせる、と。
青宗はそのまま学校に戻って宣言通りクラスメイトたちとサッカーをして時間を潰し、17時のチャイムが鳴るとまた小走りで住宅街を進む。
家に帰ると赤音の姿があった。いつもはチャイムが鳴るまで九井と一緒に宿題してるのに、今日は少し早い解散だったのかと靴を脱ぎ捨ててソファでくつろいでいる赤音の元へ急ぐ。
「なぁ、ココもう帰った?」
「ん? 青宗がはじめくんの家から帰って来たんじゃないの?」
「オレ今学校から帰って来たんだけど」
「えっ、今日青宗と一緒に遊ぶって言ってたけど……」
「あー……それナシになった」
「もー。はじめくんすっごく楽しみにしてたよ? 明日ちゃんと謝りなね」
「ん、わかった」
どうやら彼は図書館に行かずまっすぐ帰ったらしい。まさかそこまでゲームを楽しみにしていたとは。いや、青宗が九井を図書館まで送り届ければよかったのかもしれない。
二人が両想いになるには兎にも角にも二人きりの時間が必要だろう。恋愛とかよくわからないけど、多分。
あとは、赤音が九井のことをどれほど好いているのかが現時点での問題ではなかろうか。
「……なぁ、赤音ってココのこと好き?」
「ん? うん、好きだよ」
どう切り出せばよいものかと直球で聞いてみたものの、この感じはおそらく欲しかった答えじゃない。犬が好きとか猫が好きとかと同じ部類だ。恋愛事に疎い青宗とてさすがにわかる。しかし、恋愛的な意味で好きかどうかを深堀りしたところで逆効果な気もしなくはない。少なくとも赤音自身は九井をそういう目で見ていない。まぁ、それもそうだろう。なんせ相手は小学生だ。さすがに今の九井は恋愛対象としては子供すぎるか。
勝負を仕掛けるならせめて中学生になってからがいいだろう、と青宗の脳内会議で決議する。とは言え、今から地道に根回ししておくのも悪くはない。少しでも赤音が九井のことをひとりの男として意識するよう、この時から彼のかっこよさについて擦り込んでおくか、と、赤音の隣にそろりそろりと近づいた。
「……オレもココ好きー。かっこいいよなー、頭いいし、クラスの女子にもモテるんだぜ」
「そうなんだ。はじめくんイケメンだもんね」
「将来有望だよなー。今のうちに唾つけとけよ」
「ちょっと、そんな言葉どこで覚えてくるの」
小学生らしからぬ物言いに肩を揺らす赤音はどこか大人っぽい。不思議な気分だ。過去の記憶では彼女が大人になることはなかった。だが、赤音は今こうして生きていて少しずつ大人に近づいていっている。彼女が歩む未来があることがどれだけ尊いことなのかをひしひしと感じて胸が痛む。嬉しいのに痛いって変な感じだ。
「……ココはさ、赤音のこと大好きだから、多分ずっと守ってくれるよ」
「うん?」
「赤音が今生きてるのもココのおかげだろ」
青宗の言葉に彼女は数回瞬きをした後、ゆっくりと俯いた。膝の上で爪を撫でて、こくん、とひとつ頷く。
「……うん。そうだね。はじめくんにはほんとに感謝してる」
「かっこよかったよな、ココ」
「うん。スーパーヒーローみたいだった」
そういってはにかむ赤音に、これは脈ありだな、と心の中で小さくガッツポーズをした。
◇
青宗と九井は小学校までは一緒だったものの、中学は別々の学校に通うことになった。彼が通うのは所謂進学校というヤツで、頭のいい子供しか入学できない。青宗とて、九井と一緒の学校に行くためならば頑張って勉強をしたかもしれないが、受験というものは合格がゴールではない。入学した先で何を学ぶかが重要だ。青宗は机に向かってペンを走らせるよりも外で体を動かしている方が好きだ。テストだのなんだのと毎日勉強漬けはゴメンである。何より、九井と赤音の時間を増やすには自分は別の学校の方が都合がいいだろうと考えていたのもある。小学生の頃から続くささやかな放課後デートを楽しむがいい、と思っていたのだが。
「イヌピー。一緒に宿題しよー」
「オマエ学校違うだろ……」
「でも宿題あるのはイヌピーも一緒だろ?」
「……はぁ」
8月。夏真っ盛り。
学校が夏休みに入ってから約2週間。九井は週に3日ほどこうして宿題をしに乾宅にやって来る。一緒に宿題と言ったって進学校と不良校の偏差値の差は歴然だ。もはや青宗とは別次元の課題をしている九井にとって、自分と一緒に宿題をするのは何のメリットもない。
「赤音と一緒に宿題しろよ。そっちのがベンキョーになるだろ」
「赤音さん受験生だからそんなこと頼めないって」
そう。赤音は今年高校3年生。大学受験に向けて必死に勉強をしている最中である。火事の件もあってあまり貯蓄がない我が家のため、進学に少しでも金をかけまいと努力する姉の邪魔をできないのは青宗も同じだ。
「ココが大学生くらい頭良かったら家庭教師できたのにな」
「どんな神童だよ」
「シンドー?」
「いいから宿題するぞ」
「オレ漫画読む~」
「そうやって一昨日も教科書開かなかったろ」
半ば引きずられるようにしてリビングに連れていかれる。渋々教科書とノートを出して机の上に積んでみたが全然やる気が起こらない。そもそも宿題ってなんだ。休みなんだから勉強とかしたくない。
「イヌピーって方程式もう習った?」
「あー……? さぁ……?」
「習ったかどうかくらい覚えてねぇのかよ」
「うーん……」
数学の教師がそんなことを言っていたようないなかったような。そもそも数字を見ると魔法にかかったみたいに眠たくなってしまう。こちとら意識を保つだけで精一杯なのだ。授業内容など頭に入らないに決まっている。
ちらりと九井を盗み見ると、彼は真面目にカリカリとノートにペンを走らせていた。やりたくないが宿題をやるしかないか。ていうか宿題って何があったっけ。まずはそこからだなぁ、と机の上に突っ伏すと玄関の開く音がした。軽い足音と共に赤音がリビングに入ってくる。
「あ、はじめくん来てたんだ」
「お邪魔してます」
「おかえり、赤音」
「ただいまぁ。今日も暑いね」
赤音は首元の汗をハンカチで拭いながら重たそうな手提げ鞄をリビングの隅っこに置いた。
「はじめくんに宿題見てもらってるの?」
「別にぃ」
「私もお昼ご飯食べたら一緒に勉強しようかな」
適当に髪の毛を後ろでひとつ結びにした赤音は手を洗った後キッチンに直行すると冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出した。
「図書館で勉強してたんじゃなかったのかよ」
「うん。でも図書館じゃごはん食べられないから一回帰ってきたの」
「あー」
「勉強ってみんなでやったら捗りそうじゃない? 青宗がひとりで勉強してるとこ見たことないし」
喉を潤した彼女は再び冷蔵庫を開ける。少し大きめの皿を取り出すと、一口サイズに綺麗に巻かれた夏の風物詩がこれでもかとみちみちに並んでいた。
「あ、お昼そうめんだ。青宗はもう食べた?」
「まだ」
「はじめくんは?」
「オレは食べて来た」
「どうせ食えるだろ。一緒に食べようぜ」
「んー……じゃあちょっとだけ」
「いっぱい食べなよ。どうせお母さんもそのつもりでこんなに湯がいたんだと思うよ」
卓上から宿題を取っ払って昼食の準備をする。机を拭いて、コップに麦茶を注いで、大皿に乗ったそうめんと三人分のつゆ鉢と箸を並べた。
いただきますの号令と共に次々と大皿からそうめんが消えていく。冷蔵庫の中で固まった麺がつゆの中で解け、茶色く染まったそれを一気にすすると出汁のいい香りがふんわりと鼻孔に広がる。簡素な昼食だけどこういうのが一番おいしい。
「やっぱ夏はそうめんだよなー」
「イヌピー、昼飯食ったら宿題しろよ」
九井の小言に青宗はそうめんを頬張ったまま彼をじっとりと睨む。せっかくの昼食が台無しだ。当の本人はお行儀よくそうめんを啜っている。食べて来たという割によく食う男に負けじと箸を運ぶ。
「いいなー青宗は。はじめくんみたいな頼れる先生がいてくれて」
「あー? ウゼェだけだよ」
「コラ」
ぺち、と後頭部をはたかれて手に持っていたつゆがちゃぷんと波打った。進学校に通う九井と大学受験を控えた赤音。この二人にとって勉強は毎日の日課で生活の一部なのだろうが、青宗はそうじゃない。できれば勉強などせず楽しいことだけして学生生活を謳歌したいのだ。
なのに九井ときたら、頼れるお兄ちゃんでも装っているつもりなのかこうやって青宗の世話を焼いて。赤音の前だからと借りて来た猫のように静かにそうめんなど食って。同い年かもしれないが年齢的には青宗の方が上である。将来赤音と結婚したら彼は青宗の弟だ。未来の弟のおすまし顔に一発食らわせてやろうと青宗はニヤリと口角を上げる。
「大体さー、ココも下心があってウチに来てんだろ」
「え?」
「涼しい顔して心ん中では、大好きな赤音に会えるかも~って鼻の下伸ばしてんだぜ」
「ンッ、ぶっ、な、そんなわけ……!」
食べかけのそうめんに咳き込む九井を見て青宗は得意気に笑う。この慌てよう、どうせ図星だろう。彼がどれだけ赤音のことを好きだったかなんて青宗が一番よく知っている。なんなら九井本人よりもわかっているつもりだ。青宗には過去の記憶があって、九井にはないのだから。もう、いやというほど知っている。痛くて苦しくて泣きたくて、叫び出したいくらいに覚えているのに。
「適当なこと言うな!」
「おいおい照れてんのかぁ~? このむっつりスケベ」
「イヌピー!」
ガタンッと九井が勢いよく立ち上がると同時に机が揺れてつゆ鉢がひっくり返る。涼しげな水音と共に茶色い液体が床へと飛び散った。
「あっ! 大変……!」
足元にこぼれた液体はばちゃりと跳ねて九井のズボンを濡らし、裾からふくらはぎにかけて茶色くまだらなシミがじんわりと広がっていく。赤音は咄嗟にティッシュを数枚抜き取ると濡れた箇所をぽんぽん叩いた。
「ご、ごめん赤音さん……!」
「今のは青宗が悪いから気にしないで」
「ちぇー。またオレが悪者かよ。赤音、ココにあまいよな」
青宗もぶすっとした顔でリビングを出ると着替えを取りに自室へと移動する。いたたまれなくなった九井はせめて自分の服は自分でどうにかしようと赤音に声をかけようとした時、彼女の手がズボンの裾を持ち上げた。その拍子にちらりと九井のくるぶしが見える。途端、赤音はぴたりと動きを止め、その一点をじっと凝視して恐る恐る顔を上げる。
「はじめくん……これ……」
「あー……とうとうバレちゃったか」
九井は仕方ないと言わんばかりにひとつ苦笑するとズボンの裾をを二回折り畳んだ。露わになったそこにはうっすらと火傷の痕がある。範囲も狭くそこまで目立つものでもないが、皮膚の色が違うことは一目瞭然だ。おそらく、これ以上治癒することはないだろう。
「いつまでも隠しとくの無理だろ、さすがに」
リビングに戻ってきた青宗は着替え用のズボンを九井に乱雑に押し付ける。
火事以降、彼が長ズボンしか穿かない理由。親や友達には見せられても赤音にだけはどうしても見せられなかったのは、この傷はあの火事で負ったものだからだ。
「……それ、もしかして、私の、せい……?」
「違う違う! オレが足元見てなかったから」
「でも……」
「気にしないでよ。男の勲章。ね」
そう言って笑う九井を見つめる赤音の表情は、己だけがこの事実を知らなかったことへの自責の念で酷く暗かった。
「オレが助けたいって思ったから助けたんだ。だから、そんな顔しないで、赤音さん」
それはどこまでも純粋な九井の本心だ。けれど、だからこそ、余計に罪悪感に苛まれる。
「ココ、着替えて来いよ。なんなら風呂使ってもいいぜ。ついでに足とかズボンも洗いたかったら洗え」
「サンキューイヌピー……って、短パン以外ねーの?」
「文句言うな」
着替えの短パンを広げて不服そうに口をへの字に曲げる九井を脱衣所へ押しやると扉を閉めた。赤音はティッシュを握り締めたまま汚れた床をじっと見下ろしている。
「……青宗は、知ってたの?」
「……うん」
「そっか……知らなかったの、私だけなんだね」
赤音は茶色に染まったティッシュをゴミ箱へ捨てると濡れ布巾で床を拭いていく。重い沈黙に耐えかねて青宗はぽつりと赤音に問う。
「……なんで、とか聞かねぇんだな」
「だって、わかるもん……。私、大人になるまではじめくんのこと待つって、約束したから」
彼女とて九井の想いに気づいている。彼が何も言わない理由も、その優しさも、全部が愛しくて苦しくなるほどに。
「赤音は、ココのこと好きなのか?」
「……うん。好きだよ」
また少し大人っぽくなった彼女の笑顔に、青宗はちくりと自分の胸が痛むのを無視した。
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